情宣貫徹、闘争勝利


などという懐かしいフレーズをエントリーのタイトルにしてしまうワタクシ(笑)。てか、今時、カンテツなんつっても完全徹夜のカンテツと思うやつらがウヨウヨしてる嫌な渡世である。何の話をしているかというと花のサンデーに、しかも花見の宴には遅いが、それでも春を感じる今日この頃に何が悲しゅうてアナログ・レコードを、それもモノラルのズージャのレコードを室内で聴かねばならんのか。夏はサーフィン、冬はゲレンデのアウトサイダーの僕にインドアは似合わない。ん、アウトサイダーってそういう時には使わないか。コリン・ウィルソンなんか今時誰も読まないって。

実は名ばかり実行委員を務めている宮崎国際ジャズデイのプレ・イベントで宮崎真空管アンプ愛好会が主催するレコードコンサートに乱入して来たのだ。このレコードコンサートはY尾君と何度も参戦している。普段はパソコンや車のオーディオで聴いている音楽を真空管アンプで聴くと、もちろんスピーカーから直接の音なのでイアホンでちまちま聴く音楽とは別人28号。楽しい週末の2時間という体験が何度もあった。

しかしながら、本日は客としてレコード聴くだけでは無い。ビラ配布とチケット販売という任務がある。という訳で開始時間の13時より早く会場入り。しかし、客が来ない。ジリジリしながら待っている段々人が入って来たがY尾君は来ない。もしかしたら、この前、一緒にライブを見たI上さんが来るかもと期待したが、世の中そんなに甘かぁねぇ。幾つになっても甘かぁねぇというのはエンケンの名言、名盤である。

で、結論から書くとビラ配布は無事終わり、コンサート最後にチケットも一枚売れた。ま、結果オーライである。本日、聴いて良かったのは、ジミー・ジョーンズトリオ。マイルスもトレーンもパーカーも、そうそうロリンズもイマイチだった。意外な拾い物だったのはベイシーのグループで聴いたサド・ジョーンズ。あ、そうか、ずっとモノラルで聴いて最後にステレオ録音で聴いたから音が良く聴こえてたってのもあるかな。

さ、これからは公共掲示板のポスターを剥ぎに行かねばの娘だ。



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告井軍曹、或いは告井教授の3.14ライブ・レポート その3

 「じゃこれね」と言って弾き始めたのは”In my life”。ビートルズが初期の荒々しいロックン・ロール・バンドから一歩進化したアルバム『ラバー・ソウル』に収録されているジョンの名曲。この曲の間奏部分はちょっとバロック的でお洒落。高校時代の合唱コンクールを思いだす。何故か。ここのちょっとチェンバロっぽいメロディーが課題曲の間奏部分に挿入され、クラスのほとんど全員がいいメロディだと感心した。ということは当時はまだこの曲を知らない人が圧倒的だったのか(笑)。メロディもいいがジョンの歌詞もいい。まだ20代の若者だというのによくも人生を悟ったような歌詞を作れたもんだ。まあ「ヘルプ」の歌詞も「恋を抱きしめよう」の歌詞もそうだが。

告井ライブ

 「それでは初期のビートルズの曲を何曲かやって最後にしたいと思います」。ついに来てしまった。そうなのだ。楽しいライブの時間も終わりが来る。いつまでもショーの時間を楽しんでいたいが、物事には始めがあれば終わりもある、それが人生ってものなのさ、などとニヒルを気取っている余裕はなく、最後の最後までライブを楽しむぞと体は前のめりになる。初期のナンバーと言うとあれはもちろん、これもやるしそれもやるし、いやいやぜってーあの曲は外さないはずとほとんど代名詞だらけになりながら待っていると、「じゃデビュー曲」と言いながら「ラブ・ミー・ドゥ」を弾き始めた。ビートルズには珍しいちょっと黒っぽいサウンド。

 「この曲は1位になれませんでした。アメリカでは後で1位になったけど、イギリスでは最後まで1位になれなかった。この後の曲はほとんど1位です。先ずは初めての1位から」といって始まったのはもちろん「プリーズ・プリーズ・ミー」。前回のライブではこの曲を微分積分してくれた。説得力ある話だったな。立て続けに今度は「フロム・ミー・トゥ・ユー」である。♪ダララー・ララ・ラン・ラン・ラー、ダララー・ララ・ラン・ラン・ラ~ってコーラスが斬新だった。この歌で前置詞の”from”と”to”の使い方を教わった気がする。僕の英語力、そのようななものがあるとしたらビートルズとS&Gとドン・マックリーンのおかげだな。そして次はもちろん「シー・ラブズ・ユー」である。以前のエントリーにも書いたが「アイ・ラブ・ユー」か「アイ・ワズ・ラブド・バイ・ユー」だったポップスを3人称の”She loves you”にすることで、歌に奥行きが出来た。私と貴方だけの世界に彼女や彼がいることを認識させ、2人の世界から全世界を獲得したのがビートルズだった。などと書くとちょっと昔のアジビラっぽくなるか(笑)。そして「抱きしめたい」。”I wanna hold your hand”を「抱きしめたい」と訳すのが的確かどうかは高嶋さんにまかせておけばいいか、今はこの軽快なロックンロール・ナンバーを楽しみたい。



 告井軍曹が突然歌い始めた。” Well, she was just seventeen You know what I mean And the way she looked was way beyond compare. How could I dance with another Oh, when I saw her standing there” ここまで歌って突然止めてしまう。「えー、勢い余って歌ったわけではありません。ここまで演奏(や)りましたが、ここまではベースと歌だけです。ポール・マッカートニーはこの曲をベースを弾きながら歌う。これはなかなか難しいことです。当時、ベースを弾きながらのリード・ボーカルってポール・マッカートニーくらいしかいなかったんじゃないかと思います。珍しいですね、普通はギターを持って歌うものです」。どうやら告井軍曹の、いや告井教授の最終講義が始まったようだ。しっかり聴いておこう。会場のみんながステージに注目した。

 「ドラマーでボーカルってのはいましたが、ベーシストでボーカルというのは当時ほとんどいなかった。こんなめんどくさいことやりながら(と言いながら「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」のベース・ラインを弾く)歌うってのは。ビートルズが好きになった若者たち、僕らはすぐビートルズのコピー・バンドを始めるわけです。で、これがベースを弾きながら歌わなければならない。これが大変なんです。そんならギター弾いてる人、ギターはこういうフレーズなので(といってちょっと弾く)、簡単だからギター弾いてる人が歌えばいいじゃないか。と、なりそうなものですが、それはダメなんです。ビートルズのコピーバンドって言うのはギタリストとかドラマーとかベーシストっていう、そういう役割はないんです。担当楽器はないんです、ビートルズのコピーバンドには。あるのは担当人物。」、ここで会場に笑いが起こる。担当人物、なんだそれという空気。

 「例えばビートルズのコピーバンドやってる人に聞いてみてください。『何やってるの』っていうと相手は『うん、ジョン』」。一同大爆笑。「ギターじゃないんだ。ジョンなんだ」という声が上がる。「そういうことなんです。そうでなければビートルズのコピーバンドではないんです。ビートルズと同じことをやって、人前で演奏するとなんとなくビートルズになった気分になる。これがビートルズのコピーバンドの本質です。ただビートルズの曲を演奏(やって)るだけじゃ、ビートルズのコピーバンドとは言えないんです。それほどまでにあのお兄さんたちになってみたいと。ビートルズのコピーバンドってのはビートルズごっこなんです。なんかどっかでビートルズになった気になる。それが楽しいんです。さあ、それでは最後の曲。ロックンロールの名曲です。これを4人揃ってやってみたいと思います」。1-2-3-4の掛け声とともに「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」が始まった。ポールのベースに、生涯一リズム・ギターのジョン、そして途中で「カモン・ジョージ」の掛け声とともにジョージのリードも同時に弾きまくる。圧巻のサウンドに会場は大興奮。そして演奏が終わり「” I saw her standing there”。お疲れ様でした~」といって告井軍曹はステージを降りた。



 ステージを降りてすぐにアンコールの拍手にこたえて再登場。「さて、ちょっと面白いことやってみようか。”And I love her”って曲あるけど、あれは途中で半音上がるんですよ。ギター1本でやるときに半音上がるととっても大変なんですよ。ギターで半音上がると大変で、コードがこういう風に(とやってみせて)、さ、そこをどういうふうにやるかよく見ていてください」というアナウンスに続いて、ちょっと切ない「アンド・アイ・ラブ・ハー」を弾き始める。そして半音上がるところは、なんだこれは、ああなるほど、コロンブスの卵だ!!!で、ここは種明かししない。いったい告井軍曹はどうやって半音上げたのか、あなたの街の近くのライブハウスで是非自分の目で確認してほしい。「ではもう1曲」と言ってギターのフィード・バック音がした。そう、「アイ・フィール・ファイン」である。エレキギターでないと表現出来ないと思いこんでいた音をアコギでいとも簡単にやってしまう。これは一種の魔法だ。

 「ありがとうございました。お疲れ様でした」といって告井軍曹はステージを降りた。最初7人の客で始まったライブは、そのあと3人ほど増えて、それでも10人。たった10人の客に対して一切手を抜かず、たっぷり2時間、ビートルズナンバーを聴かせてくれた。そして我ながら呆れてしまったのだが、全曲、僕はライブの間、口ずさんでいた。歌詞を全く忘れて居た曲もあったが正確なギターの音色であっという間に思いだすことが出来た。ああ、オレ、やっぱりビートルズ好きなんだと実感。そうそう、ライブの帰りにソファでくつろいでいた告井さんに話しかけた。その時に実は今日はセンチがはっぴいえんどの曲をカバーしたレコードを持ってきてサインを貰うつもりだったと話したら、告井さんが「あれはいいだろ」と力強く答えてくれた。さらに横にいたスタッフも「あれは最高ですよね。僕も持っています」と言ったので固く握手。告井さんには次回もライブ楽しみにしていますといって分かれた。

 エレベータを降りて、今見たライブの話をしながら帰り道についた。そうそう、I上さんとはFacebookでお友達になり、今後は何かあればメッセンジャーで連絡しますといって分かれた。それ以来、何ら音沙汰もないしメッセージを送っても反応がない。ブロックされているような気がするが、気にせず我が道を行くのが僕のエライところである、シクシク。

告井軍曹、或いは告井教授の3.14ライブ・レポート その2


 「じゃ10分か15分くらい休憩します。あ、それから後ろのほうにCD持ってきてます。今日、演奏(や)った曲も入っているし、どんな曲を演奏しているか見るだけでも楽しいですよ」という挨拶をして告井軍曹は奥のボックスに行った。休憩時間、インターミッションである。僕はこの時間帯を利用してI上さんに告井延隆がいかに素晴らしいミュージシャンで日本のロックに偉大な足跡を残した人か延々と話しを、なんてパターンで行くと、当然若いおねいさんには嫌がられて今後2度と一緒にライブに行く機会が無くなることを重々承知していたので、まずはファースト・セットの感想を話そうとした。そのこちらの意図を、まあはっきり言うと下心行動委員会の緊急問題提起を軽くダッキングして、彼女は告井さんのところにCDを買いに行った。普段、この手のライブではCDを買わないし、以前は「オレの自慢はビートルズのアルバムは1枚も持っていないことだ」などと豪語していたY尾君まで、いそいそとI上さんと一緒にCDを買いに行ってサインを貰っている。僕は自分の持っているアナログ・レコードかセンチのCDにサインして貰うつもりだったが、アナログは実家に置いたままだし、センチのファーストのCDは押し入れの中の段ボールのどこを探しても出てこない。仕方ないので春一番の4枚組の中でセンチの演奏が入っているCDを持参していた。告井さんにおそるおそる、「昔のCD持ってきたんですけど、サインしてもらえますか」と聞いたら「もちろん、いいよ」と気さくに答えてくれた。

春一番にサイン

 3人で再度テーブルに戻り、それぞれのサインを貰ったCDを確認したらI上さんとY尾君はどちらも同じ告井軍曹のサード、初期ビートルズの曲をメインにしているアルバムを買っている。僕がY尾君なら当然I上さんとは別のアルバムを買って、それを貸しあいすることでより親密になるという大原則パターンで行くのに、アホやなこいつはなどと内心考えていたら、急にY尾君が、「おい、このCD貸してくれ。代わりにこのCD貸すから」と言ってきた。実はY尾君は昔から中山ラビとか山崎ハコとか、あの手の暗い女性シンガーが好きだったのだが、僕の持ってきた春一番のライブにはセンチはもちろん、中山ラビやはちみつぱい、ごまのはえ、さらにザ・ディランに今は亡きエンケンの演奏が収録されていたのだ。もちろん異議なしなので、その場でCDを交換。さてお代わりのジン・トニックも用意して、I上さんにアプローチするかと思っていたら、セカンド・セットがスタートした。告井軍曹、もう少しゆっくりでええんやけど、ほんまに、などと内心ぶつぶつ。

 チューニングを少しやってから演奏し始めたのはオリジナルではシタールの音色が印象的な「ノーウェジアン・ウッド」。演奏が終わり、告井教授の話が始まった。「"Norwegian Wood“、この曲を先ほどの高嶋さんは「ノルウェーの森」と訳しましたが、これは今では誤訳ということになっています。森だったら"Norwegian Woods”だろうと(つまり複数形というわけだ、ま、こんな説明は無用か)。でもこの曲は"Norwegian Wood”。Woodだから木でしょう。こういう(ステージの下を指さして)床なのかテーブルなのか分かりませんが、実はそんなことはどうでもいいみたいです。つまりどういうことかというと、この曲の詞の内容は、あるときナンパした女の子の家に行って明け方まで意気投合していろんな話をして、いざこれからというところで『私、明日早いの、もう寝るわ』と言って寝ちゃった、と」ここまで説明したときに誰かが「それはないわ、そこまでいってそれはない」という大きな声で叫んだ。誰だ、一体と思ってよくみたらオレだった。「うん、それはないわ。だけど置いていかれちゃった、その彼はしょうがないのでバスタブで寝たと。で、朝起きたらやっぱり彼女はいなかった、と。」、ここまで聞いたとき今度は”She’s gone”と切実につぶやいた奴がいた。実感こもってるな、誰やと思ったら、またオレだった。大丈夫かオレ。「ええ、シーズ・ゴーンなんです。それで火つけてやったと。ホントなんですよ、こういう詞なんですよ。だからむちゃくちゃな歌なんですが、この詞の中で” Isn't it good, Norwegian wood”ってフレーズが出てきます。この” Isn't it good,”ってのは『いいじゃん』って意味ですね。ご機嫌じゃないですか、いいじゃんって意味です。ノルウェーの木はいいじゃん、ご機嫌じゃんってこれ意味わからないでしょう(I上さんも「分からない」と首を振っていた、カワイイ、ま、それは置いといて)。これ、もともと” Norwegian wood”では無かったという話なんです。もともとはですね”Isn't it good”=ご機嫌じゃん、”knowing she would”だったらしいんですね。この”knowing she would”の意味は”knowing”、つまり『分かる』ということ、分かる、分かるよ、”she would”であることが分かるよという意味。『シー・ウッド』であることが分かるのがご機嫌じゃないか、って意味です。では『シー・ウッド』ってのは何か」。ここまで聴いた僕は「なるほど」と力強く頷いた。伊達に英文科に6年いたわけじゃ無い、シェークスピアやミルトンは分からないが、もちろんディケンズもオスカー・ワイルドもちんぷんかんぷんだが、この手のエーゴは分かる。分かるんだよ、オレはと思わず絶叫したかったが、そんなことをしたらオレの人格が否定される。誰だ、既に否定されているなどというやつは。



 「英語圏の人たちは”she would”って言うだけでニコっと笑います。で、どういうことかというと、『あの娘、どうなんだよ』って聞いたときに”Yes,she would!!”って言うと『あの娘もその気』って意味になる。だから『あの娘もその気である』ってことが分かる、それが”knowing she would”の意味らしいんです。ところが若干エッチな意味があるので『これはいかがなものか。ジョン、ラジオでかからないかもしれない』、一応向うも放送倫理規定みたいなものがあるので、『ここだけは歌詞を変えてよと、あまりにも直接的過ぎるので』とジョンが言われ、『あ、そう。それだったら♪ノーイング・シー・ウッド、ノーイング・シー・ウッド、ノーウェジアン・ウッド、あれ?これでいいやこれで行こうノーウェジアン・ウッドで』という感じだったらしいです。意味なんかない、単なる語呂合わせだったみたいです。それでノーウェジアン・ウッドになったと。で、もともとこの曲は” This Bird Has Flown”ていう曲だったんです。ジス・バード・ハズ・フローンという歌詞も出てきます。昔はちゃんと曲名の後にカッコして”This Bird Has Flown”と書いてあったんです、今はどうか知りませんけど。だけど歌詞がノーウェジアン・ウッドに変わったことによって意味不明です。でもこの意味不明なところがいいじゃないか、と。詞というものはちょっと意味不明なところが良かったりするじゃないですか。世界がふっと広がったり、何だろうこれはって。何だかよく分からないけどいいな、ノルウェーの木は。わけわからない歌詞だけど前から何でこんか歌詞なんだろうと思っていたところが、実はそういうことだったと知りました。語呂合わせで何とか”knowing she would”を分からせようとした、そういうことみたいです」。うーむ、深い。告井英文学教授の話は実に深い。こんな授業ばかりだったらオレは間違いなくオール優で卒業したはずだが、現実は言語学の岡田妙教授の単位が全く取れず、しかも英作文の、いやいやそんな話ではなかった。



 次の曲はジョージの大傑作である「サムシング」。しかし途中のポールのリード・ベースとも言うべき躍動感をアコギで表現するのは流石告井軍曹である。しかし、教授だったり軍曹だったり忙しいな。情感たっぷりに弾き終えてついに待望の時がやってきた。「ジョージ・ハリソンの名曲ですね。さて、それではこれから何かやってほしい曲があれば、リクエスト・タイムにしたいと思います。何でもやりますよ。出来ない曲も何とか頑張ってやりますから」と懐の広い人だ。会場内は何をリクエストしようかと少しざわついていたその時に一人が声をあげた。「あのー、家族とうちわもめして水曜の朝早く女の子が家出する歌をお願いします。えーと”She’s Leaving Home”」。何だ、回りくどい言い方するやつだな。ん、ちょっと待てよ、「うちわもめ」ってセンチの最初のアルバムの1曲目でシングルになった曲じゃないか。センスのいい奴だな、誰だ。なんだ、オレか(笑)。サージェント・ペパーに入っているこの曲は最初あまりいいと思わなかった。ハープで始まりストリングスもちょっと大げさな感じのバラード。しかし大学の時に輸入盤屋で『第二次世界大戦』というものすごいタイトルのビートルズ・ナンバーのカバーアルバムを購入し、そこでブライアン・フェリーが歌っているのを聴いて、その良さを再認識した思い出がある。アルバム・タイトルは出鱈目だが、当時大人気だったピーター・フランプトンとビージーズが正義の味方のペパー楽団で悪役がエアロ・スミスで「カム・トゥゲザー」なんか歌っていた。この歌は途中の部分で主旋律と取り残される年老いた両親の嘆きのメロディーが重なるのだが告井軍曹は当然完璧に再現してくれる。動画はあの変態的なボーカルが楽しめるブライアン・フェリーを貼っておく。



 「シーズ・リービング・ホーム、しかしなんというステキな曲なんでしょうね。素晴らしい、他、何かありますか?」という投げかけに対して4人組サラリーマンの1人が「アイブ・ガッタ・フィーリング」と叫ぶ。「おー、アイブ・ガッタ・フィーリング。出来るかな、あんまり覚えてないんだ」といいながらも、あのブルース・フィーリングあふれる曲を弾き始めた。この曲でのポールのボーカルが黒っぽくていいんだよね。告井軍曹、快適にぶっ飛ばしていくのだが、曲の後半で「ここから先を覚えてないんだ。すいませんね」なんてエクスキューズしたが、いえいえ、リクエストした彼も満足そうでした。次のリクエストは「ロング・アンド・ワインディング・ロード」。女性の声だったので多分I上さんのリクエストだったか。アルバム『レット・イット・ビー』つながりである。この曲を初めて聴いたときは「ロング・アンド・ワイディング・ロード」と聞き間違えて「長くて広い道」と思っていたが、なんのワインディングだから「長くてくねくね曲がっている道」だと知ったのは高校生の時にカメちゃんのオールナイト・ニッポンで教えてもらった。カメちゃんにはゼップのアルバム『聖なる館』も発売直後に全て聴かせてもらった。その時のタイトルの説明が「せいなる、ってこれはセックスのことではなく『ひじり』のほうのせいです」と教わった。流石にその後ニッポン放送の社長になるだけある。あ、ロンガンワインディングの話だった。歌われている道とはモナリザの背景に描かれている道と関係があるんじゃないかみたいなことを何かの本で読んだ記憶があるが自信がない。

 「えー、次は」の声に答えてリクエストに上がったのは「ゲット・バック」。おいおい『レット・イット・ビー』しばりが続くのかよ。もちろんこのロックンロールの名曲を告井軍曹はジョンのリズム・ギターの癖まで完全に再現してくれる。最後の裏声のところまでそっくりやってくれて「もう少し行きますか」の声に反応してリクエストはまたしても『レット・イット・ビー』からの曲で「アイ・ミー・マイン」。映画の中で突然、ジョンとヨーコがワルツを踊り出すシーンが印象的だった。そうそう、中3の時の担任の先生の家に大学合格の報告を兼ねて同級生と一緒にウィスキーを持って遊びに行ったことがあった。その時にたまたま『レット・イット・ビー』のアルバムを持っていて、そこの家のステレオで流した、この曲を聴いた先生は英語の教師だったが思わず「なんでアイ・マイ・ミー・マインじゃないんだ」とつぶやいていたのが可笑しかった。「アイ・ミー・マイン、忘れちゃったな」とこちらは告井軍曹のつぶやき。すかさず僕が最初のフレーズを歌ったら思いだしてもらったのか演奏を始め、あのアイ・ミミー・マインの前のところで「こんな感じだったよね」と終わった。「もういい?」と聞く告井軍曹に「アンド・ユア・バード・キャン・シング」と無茶なリクエストしたのはオレだ。「アンド・ユア・バード・キャン・シング?また凄いのが出てきたな」と苦笑交じりに弾き始めたのは、中期の名盤『リボルバー』の収録曲。そういえば『君の鳥は歌える』というタイトルの小説もあった。

 楽しいリクエスト・タイムも終わるかと思ったら突然Y尾君が「ビートルズで言ったらレイラ」と訳の分からないことを言いだした。「え、ビートルズで言ったらレイラ?それは何、あ、分かったあれですか」「あれです」「これですね」と言って弾き始めたのはご存じ「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」。そうか、あの曲はクラプトンが弾いてるし泣きのメロディーもジョージの作曲ではあるが「レイラ」に共通するものがある。Y尾君もなかなか粋なリクエストするやないか、あ、さてはI上さんに受けようと思ってこのリクエスト・タイムの間ずっと考えていたな、などと邪推してしまう(笑)。「ここでジョージ・ハリスンの曲をもう1曲やってみたいと思います」という紹介で始まったのはイントロが印象的な「タックス・マン」。これ聴くとパブロフの犬的にチープトリックのファースト・アルバムを思いだす。そのアルバムにも”Taxman,Mr. Thief”という曲が入っている、もっともデビューしたころのチープ・トリックは全然売れなくて彼らの名前がようやく知られるのはまるでビートルズそのものといえるヒット曲「甘い罠」をシングルで出したあと、もっと正確にいうと来日してからだ。あ、話が逸れた。



 「このタックスマンは税務署の人のことを歌った歌でですね。税務署のやつがオレにこう言う。5%はお前にやるぞ、あとの95%は俺がもってくと。税金を95%取られていたということを歌にしたんです。あながち嘘じゃないと思います。イギリスは税金高くて有名です。で、この曲が『リボルバー』というアルバムの1曲目に入ってます。大金持ちの歌ですね、この曲。税金を95%取られるなんてめちゃくちゃな金持ちです。この次に入っている「エリナー・リグビー」って歌は今度は最下層の人の歌を歌ってます。エリナー・リグビーって人の歌ですが、それはどういう人かというと教会のウェディングに現れてはですね、最後にライスシャワーって、米をおめでとうって撒くんですが、その米を拾って生活する人なんです。それが2曲目。もう大金持ちの歌から一気に最下層の人の歌まで、そういう人に光を当てるってのがさすがビートルズだと思います。じゃ、その「エリナー・リグビー」をやります」。

 「このエリナー・リグビーって曲がですね、4年前、イギリスにライブしに行ったときに必ずリクエストが来る曲です。この曲が好きだということよりもイギリス人は良くビートルズを知っていてですね、この曲にはビートルズが一切演奏に参加していないということを知っているんです。この曲は全部弦楽四重奏だけで成り立っている曲です。そのクラシカルな曲を、君はギター一本でさっきからいろいろやってるけど、これは出来ないだろうと。それでリクエストが来るわけです」。この時にY尾君が「この曲スタンリー・クラークがやっている」といったところ「いや、スタンリー・クラークは入って無い。全部、弦ですよ」と軍曹。Y尾君はしぶとく「いや、スタンリー・クラークが最近演奏していたんで」と食い下がる。軍曹も「スタンリー・クラークがやってるかもしれないけど、僕は知らないな。僕が好きなのはヴァニラ・ファッジがやってるやつ。原曲の影も形もない、あれもなかなかいいですね。」

 「それでこんなイギリス人の客もいました。何かリクエストをと言ったら, "Eleanor Rigby"って叫んでるオッサンがいました。聞きとりにくかったので、え?と聞きなおしたら、"Eleanor Rigby"とまた叫ぶ。こちらが"Eleanor Rigby?"と聞き返すと”Ok,Ok,Tomorrow”。明日でいいって、要するに出来ないでしょって言ってる。それで”No,Tomorrow,Tonite”と言って演奏しました。沢山拍手をくれましたね。まあ、しかしこれはギター一本でやる曲じゃないですね。大体ビートルズの曲をギター一本でやろうなんて人間はあんまりいない。まあ僕にとっては何でも挑戦です」



 ライブは最高潮に達していたが、もうそろそろ終わりの時間が近づいているのを感じていた。サージェント・ペパーの歌詞ではないが” I don't really want to stop the show”という気持ちでいっぱいだった。こういう時を至福の時間というんだろう。告井軍曹の演奏に解説に目の前にはきれいなおねいさん。ま、Y尾君が邪魔と言えば邪魔だが、今回は彼のおかげで楽しい時間が作れている。さて、このエントリーもあと少しなのだが、週末で月末の夜、こればかりにかかりきりになるわけにもいかないので今日はここまで。続きはアンコール編としてカミング・スーンであることを力強く約束して終わりたい。ああ、疲れた。あいむそーたいぁーど、やっちゅうねん。

告井軍曹、或いは告井教授の3.14ライブ・レポート その1

 いきなりな話で恐縮だが、Y尾君も6年に1回はいい仕事をする。高校の同級生だった彼とカルメン・マキの最強トリオのライブで偶然の再会をきっかけに、お互い気になるライブがあれば誘いあって参戦すること、かれこれ10年以上になる。たいてい男2人で見るライブなので終わった後も若干やさぐれた感じで分かれるのだが、6年に1回くらいの割合で彼がきれいなおねいさんを連れてきて盛り上がることがある。前回は調べてみたら2013年6月20日だった。なんと僕のblogを読んでくれていたN藤さんと同僚のS竹さんという2人を連れてきて一緒にライブに行った。もちろん、交流はそれっきりでその後はY尾君が何度かライブに誘ったが拒否られてばかりだったらしい。僕の下心が見え見えだったから彼女たちが怖がったと、呑み会の最中に鬼平犯科帳の話ばかりして場の雰囲気を一気にもり下げた彼からそんなことを言われても僕は信用しなかったが。ま、それはさておき、今回は2018年3月14日。あの一人ビートルズ、サージェント告井ズ・オンリーワン・クラブ・バンドのライブの話である。

 告井延隆の一人ビートルズのライブを初めて見たのは3年前の6月10日。偶然、新聞の記事でライブ情報を見つけた。電話でチケットを申し込もうとしたがお店の営業時間外で仕方なく留守電に録音を残した。電話した次の日がライブ当日なのでチケットは無理だなと諦めていたら、なんと翌日折り返しの電話があり予約に成功。ライブの会場が平和台公園の中のお店だったので車で行き、アルコールを我慢しアイスコーヒー片手に2時間たっぷり演奏を聴かせてもらった。ライブの終わりにはCDにサインしてもらいながら、センチメンタル・シティ・ロマンスはもう卒業したなどといった会話をさせてもらった思い出がある。アコースティック・ギター1本でビートルズ・ナンバーを完全コピーする驚異のテクニックとギターだけでポールのリード・ベースもリンゴのドラムもジョンのリズム・ギターも、もちろんジョージのリードも表現するライブは圧倒的だった。その告井軍曹のライブが3月14日に地元のライブハウス「ガーラム」で行われることを今回はFBの告知で知ったのだ。

 実は2月にY尾君と一緒にわざわざ日向まで電車でライブを見に行った小林万里子を空港で見送りしたときに宮崎にはどんなライブハウスがあるかと聞かれた。その時いくつかのライブハウスの名前をあげて説明し、『宮崎のライブハウス情報送ります。いろいろいいハコがあるけど、ガーラムは元ウシャコダの藤井君やブルース・ハープの妹尾さんもやったところなんで良いんじゃないですか』と話した。後日メールで各ライブハウスの情報を送ったところ、たまたま日向のライブにガーラムの関係者も来ていて、そこから7月27日に小林万里子初ライブ・イン・ザキミヤはガーラムに決定した。フライングの情報だが情宣も兼ねて書いておく。

 で、この告井軍曹のライブ情報をY尾君にメールしたのが3月6日。それっきりうんともすんとも言ってこないのはいつものことで慣れっこだが、流石に前日まで返事がなかったので13日に明日のライブどうすると朝一番に送ったが、やはり返信がない。もうしょうがないから一人で行くかと思っていたら、その日の夕方に電話があり行けるという。そして恒例のライブ前のガソリン注入は地元で有名なセンベロ酒場の高砂に行きたいと言う。もっといい店があるんじゃないかといったが、どうしてもそこがいいと固執する。仕方ないので了解し、彼は17時45分くらいにそこで場所を確保。僕はどんなに急いでも18時回るが、その時間に合流し軽く飲み食いして19時半開場のライブに向かうことにした。

 さて当日である。18時を10分ほど回った時間に高砂についた。ここは1階がカウンターとテーブル席になっていて、彼と合流する時はトイレに近いテーブルかカウンターを確保しているのだが、見当たらない。しかも、流石はセンベロ高砂。18時ちょっと回っただけでカウンターはほぼ満席。店のおばちゃんというにはまだ若い女性に「お一人ですか」と聞かれ「いや、連れが先に来ているはずだけど」というと、「一番奥の席にいる人じゃないですか」といわれ店内をぐるり歩いて丁度大きな柱の影にいるY尾君を発見した。カウンターの上には中ジョッキに地鶏のもも焼きにたらの芽の天婦羅があり、そいつをウマそうに食べている。壁に『だれやみセット1200円』と書いてある。だれやみというのは南九州の方言でだれ(疲れ)がやめ(やむ)ことから、いわゆる晩酌の意味である。僕も、右に習えで同じものを注文。「今日はビートルズの曲をやるミュージシャンて聴いたから職場のやつを誘った」などという。ここ最近のライブでは彼の仕事仲間の長崎出身の男性が何度か参戦しているので、その彼のことかと尋ねると違うという。まあ、誰でもいいか、せっかくのライブなので一人でも多い方が賑やかでいいとその時は思った。

 しかし、先ほども書いたが18時少し過ぎただけで店内はほとんど満員。客は僕達くらいの年齢のおやじの団体、たまにカップルもいたが、こちらもいわゆる中年以降という年齢層。圧倒的にオッサンの占有率が高い。Y尾君と2人でこの間の世間話をしていたのだが、彼がやたら時計を気にしている。今日、一緒にライブに行く人はこの店は初めてなので、場所が分からないときは彼に電話がかかってくるらしい。「なんやしらんが、面倒くさいのでこちらからメールするか電話しないと、この席は絶対分からんぞ」と忠告するが、相手の電話番号もメルアドも知らないという。まあ、呑気な男だな、相変わらずなどと思っていたら、「すいません、遅くなりました」という可憐な声が突然聞こえた。掃き溜めに鶴、というと高砂の店員に怒られるが、少なくともセンベロ高砂にふさわしく無いショートカットのきれいなおねいさんが登場した。「え、女の人やったんか、それはよ言わんかいや、オレも心の準備がある」とあたふたしたが、彼女はI上さんといってY尾君の職場の仲間だという。Y尾君が満面の笑みを浮かべながら僕に小さな声で、「オレもやっぱり職場での立場があるから、最初に誘うライブが小林万里子だと人格を疑われるし」などと小林さん鷲尾さんに喧嘩を売るような発言が出る。が、しかし、オレもそれはもっともだと。いやその。

 I上さんはセンベロ高砂は、場所こそ知っていたが入ったのは初めてだという。約束の時間を気にしながら店の扉を開けるとオッサンたちが一斉に振り向いたらしい。そりゃそうだ、飢えた野獣の前に美味しそうな肉が飛び込んできたんだから、全員虎視眈々と狙うに決まっている。流石にちょっと引いて回れ右しようとしたら僕を案内してくれた高砂の店員が「お連れさんは奥のほうにいます」と誘導してくれて無事に合流で来たわけだ。まあよかったよかっためでたしめでたし。で、本日のライブについて話をしようかとも思ったが、きれいなおねいさんを前にたかがロックの、ビートルズの、元センチのなんてこというのも野暮だからY尾君に花を持たせながらも何とか好印象を与えようとアプローチするのだが、いかんせんこちらの作戦をよく知っているY尾君にことごとくブロックされる。仕方ないので彼とは高校時代から親子二代に渡る付き合いだとか、学生時代に京都の下宿に一文無しで転がり込んできた話などをして間を持たせる。そうこうしているうちに開場時間が近づいたので高砂を出てガーラムに向かった。歩いて5分くらいで開場時間丁度の19時30分についた。ビルのエレベータに乗って降りると、そこはガーラムで入り口でチャージを払いトランプのカードを貰う。このカードで好きなドリンクと交換できるわけだ。3人が座れるテーブルを確保して入り口を振り返ると、ソファのところにマスクした告井さんがいた。「3年前の6月にライブを見ました」と話かけようかと思ったが、ライブ前にギターを持って集中している様子だったのでやめておいた。

 開場時間ジャストに入ったので客は僕達3人だけ。一番前のテーブルではなく2番目のテーブルを選び、それぞれ飲み物を手にして座った。前回のライブの時は30名限定ライブだったが今回はまだ誰も来ない。20時開演の少し前にスーツ姿のサラリーマンが4人来て、僕達の横のテーブルに座った。え、ちょ、ちょっと待ってよロクンロール(by Panta)。天下の告井延隆のソロ・ライブだぞ、あの偉大なるセンチメンタル・シティ・ロマンスの元バンマスだぞ、どうなっているんだこれは。ザキミヤにはポップ感覚あふれる人間はいないのか、それともライブの情報が周知徹底されてないのか。いやいやFBに告知も出ていたよな。もちろん週の真ん中の水曜日で天気もはっきりしない日だったが、それでも失礼だろ、え、どうなってんだ社長!!と激怒した位が、きれいなおねいさんの前で暴言を吐いたり、暴れたりすると嫌われるという経験を何度もしてきたのでじっと耐える。しかし辛抱たまらんな。こりゃ。

 司会のディッキーさんが「みんな前の席でじっくり見て」と客の少ないことを笑いに変えて告井さんが紹介された。「はい、こんばんは~」とギターを弾きながら告井さん。「お客さんがあまり多くない分、声で大きさでカバーしていきます」とジョークをいいながらライブのオープニング・ナンバーである「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を「サージェント告井ズ・オンリー・ワン・クラブ・バンド」に歌詞を変えて歌い始めた。もちろん前回の轍を踏まないようにエンディング間際に全力で拍手し、Y尾君、I上君にも拍手を強制。隣の4人組も慌てて拍手する。そしてサージェントのエンディングから一気に「エイト・デイズ・ア・ウィーク」に入る。思わず一緒に歌ってしまい途中のクラップハンドを忘れて2番から参加。これも何人かは協力してくれたが、いかんせん客が少なすぎてライブハウスを響かせるまでは行かない。それでも演奏が終わるや否や、ネクタイのお兄ちゃんが大声で「Yeah!!」と絶叫する。

 「“エイト・デイズ・ア・ウィーク”、イギリス人の発音で言うと“アイ・ダイズ・ア・ウィーク”、こんな感じですね。イギリス人は大体“エイ”を“アイ”と発音するね。“メイク”は“マイク”、“テイク”は“タイク”」と告井さん。隣のスーツの一人が「オージーですね」と声かける。「そう、オージー。それでね“オーケー、オーケー”って言うじゃないですか。あれも“オーカイ”って言います。“オーカイ”、ほとんどそうですね。で、リバプールに行くとまたちょっと違う。4年前リバプールのキャバーン・クラブに行って演奏(や)ったんですよ」。前のライブでも話してもらったことだが、やはり本場に行って勝負してきたことはすごい。隣のサラリーマンからも「すげー」とか「おー」「さっすが」など感嘆の言葉が飛び交う。「そこではこう言ってました。“ウェルカム・トゥ・カバーン・クルブ”。“カバン、狂う”です。これがリバプールの発音なんです。“ラブ”は“ロゥブ、”カム“は”コゥム“ですね。ほとんどローマ字そのものです。だから”バス“は”ブス“(客席大笑い)。ホント、本当ですよ。はっきり”ブス“といいます。”あのバス乗りなさい“って言いう時に普通、”Take that bus.”。これが普通の僕らが知ってる英語。でもリバプール行くと”タイク・ザッツ・ブス“。”あのブス持ってけ“みたいな、そうともとれる言い方(笑)。じゃ”eight days a week”のB面やります」といって演奏し始めたのは初期のバラードの名曲”No Reply”。そういえば昔、マーマレードというミニコミを学生時代作っていたけど、誰も僕達の呼びかけに応えてくれずこの歌のことをテーマに記事を書いたことなんか思いだした。

 「何べん呼んでも返事が来ないって歌ですね。電話をかけても出ない、家にいるのは知ってるぞ、と。そういえばこないだ誰かと出かけたろ、と。ほとんどそういう歌なんです(会場、笑)元祖ストーカーのような歌なんですね。」といいながら弾き始めた曲は「涙の乗車券」である。あの印象的なイントロから最後の「マイ・ベイビ・ドン・ケア」の繰り返しの部分まで完璧に弾き終えてまたもや興味深い話をしてくれた。「”チケット・トゥ・ライド“、『ヘルプ』の映画の中の曲です。今日は皆さん、ビートルズ詳しいようなので今からこの曲の説明をしようと思います」。こういいながらもう一度「涙の乗車券」のイントロを弾き、ドラムのところはギターのボディを叩いた。「このリンゴのドラムが入ってきた時に、なんか引っかかるな、なんか変だなと思うことないですか(客席から「ああ、そういえば」「あー、うんうん」と反応あり)。「なんかおかしいぞ、なんか変わったリズムだぞと、そんな感じあるでしょ。」といいながらもう一度イントロ部分を弾きながら「実はこのギターのイントロがおかしいんですよ。実は」と聞いてるこちらの頭の中にクェッションマークだらけになる話が続く。「ギターは普通こういう感じであの曲は弾くんだけど、ジョンがちょっと変わったこと、12、123、12、123、ってこういうリズムで弾いていて、それにリンゴが合わせたんです。最初リンゴは素直に合わせていたと思うんですが、ジョンが『リンゴ、それちょっと違う、オレが弾いてるのはこういうリズムだ』と後にアクセントの入るリズムで弾いている。それでリンゴは「ああそう」といってちょっとずれたようなリズムで叩いた。でもこれがね、このズレた感じがねこの曲の一番大事なところなんです。これがね、ごく普通にやると」といいながら正調「涙の乗車券」を弾いて、珍しく歌ってくれる。確かに平板でごく普通のポップスの感じがする。それをオリジナル通り少し引っかかる感じに弾いて歌い「ほら、こうするといきなりビートルズの曲になるでしょ。あ、これだと思うでしょ。でもこんな変なのはビートルズでもこの曲だけ。ビートルズの曲の中にも他にはないです。ワン、ツー。ワン、ツー、スリー。ワン、ツー、ポンポンポンって。ただこの曲がこのリズムであることで物凄くコシが重く聴こえますね。」



 こう説明しながら”I think I’m gonna be sad”と歌い、「で、途中で” I don't know why she's riding so high”ここにくるとそのリズムはなくなります。もう淡々と叩いてます。そしてまた” I think I'm gonna be sad”でまたワンツー、ワンツースリーに戻る。そしてサビのところでこの曲は疾走感があります。なんか前に進んでいく気持ちよさがあり、そこからまた” I think I'm gonna be sad”で腰の重い感じ、それと疾走感と相まってこの曲の良さが出てくるんですね。もしどっかでビートルズのコピーバンドを見るときは、この曲のここのところを注意してみてください。このリズムがしっかり出来ていれば大丈夫、ここが違っていると、おっとそれは違うんじゃないかと(笑)。ま、ここがビートルズのコピーバンドを見るポイントになると思います」。うーむ、思いだした。告井軍曹は実は告井教授でもあったのだ。前回のライブでは「プリーズ・プリーズ・ミー」を微分して説明してくれた。今回は「涙の乗車券」を素因数分解してくれたわけだ。「さあ、それでは映画の『ヘルプ』の中の曲を何曲かやってみたいと思います」。そういって2曲続けて演奏した。曲は” The Night Before”、そして"You're Going To Lose That Girl“。

 「ユー・ゴナ・ルーズ・ザット・ガール、この曲の日本語のタイトルご存じですか」と質問され、すでに全員教授の授業を受ける学生状態なので、すぐに一人が返事をした。「恋のアドバイス!!」「そう、恋のアドバイス、その通り。このタイトル、実によく出来ています。ユー・ゴナ・ルーズ・ザット・ガール、あんたあの子に振られるよ、という意味です。『あんたあの子に振られるよ』と他人に言われれば、それは確かに『恋のアドバイス』。それでビートルズの日本の歌のタイトル付けた人は一人です。当時、東芝にいた高嶋さんて人なんですね。で、その高嶋さんてどんな人かというと、最近、バイオリニストでよく出てくるおばちゃん、高嶋ちさ子。あの人のお父さんです。あの人のお父さんが東芝にいたんです。それであの人のお父さんが全部タイトルを付けました。いろんなのがあって中にはひでぇのもありますが(会場爆笑)、これは良く出来てますよね。オリジナルタイトルより良いんじゃないですか?『あんたあの子に振られるよ』即ち『恋のアドバイス』。さて、それでは映画『ヘルプ』のタイトル曲です」。ジョンが本当はもっとスローに切実に歌いたかったがアップテンポにアレンジしたことで軽快なロックンロールとして生まれ変わり大ヒットしたナンバー。その余韻が残りつつ奏でられた曲はなんと「ミッシェル」である。



 「ミッシェルの頭のところ、1番のところはポール・マッカートニーはフランス語で歌ってるんですね。そしてミッシェルというタイトルもフランス人に多い名前を選んだそうです。この曲は意図的にフランス人に受ける様に作られているそうです。何故かというとヨーロッパの中でフランスだけがビートルズの売れ方、今一つだったらしいんです。だからフランス人にもビートルズを売ってやろうという気持ちがあったようです。だからミッシェルというのは特別な人の名前ではないようです。ポールがミッシェルという女の人に曲を作ってあげたとかそういう話じゃ無いです。ポールは特別な人のために曲を作ったことはないんです。特別なものというとあれだけど、人間以外のために作った曲はあります。犬です。自分の飼い犬の名前。マーサ、マーサ・マイ・ディア」。曲はミッシェルからこれまたポールのメロディーの面目躍如であるマーサ・マイ・ディアに続く。

 「ホワイト・アルバムからマーサ・マイ・ディアでした。今年は戌年ですからね。ではホワイト・アルバムの中から何曲かやってみます」というアナウンスの後に演奏したのはなんと前のライブでリクエストした「マザー・ネイチャーズ・サン」である。この曲の良さは実は二ルソンのアルバム『ハリー』で知った。もちろんオリジナルのビートルズの歌と演奏もいいのだが、二ルソンのアレンジと彼のまだアル中になる前の美声で歌われる「マザー・ネイチャーズ・サン」は最高だ。告井軍曹にとってはライブの展開上の1曲かもしれないが、僕にとっては最高のプレゼントだった。もしかしたら以前リクエストしたことを覚えて、いるはずないか。毎年100本以上のライブをやってるんだからな。しかし、ここは告井軍曹の脳髄の中に宮崎=「マザー・ネイチャーズ・サン」と刷り込まれていたら面白い。続いての曲は「ブラック・バード」。そういえば地元のジャズ・ボーカリストの香月保乃もこの曲はレパートリーにしているな。先日はThe Red Birdというユニットで「ブラック・バード」歌ったっけ。おっと、この曲の途中で鳥の鳴き声、もちろんブラック・バード(ツグミ)の鳴き声がオリジナルには効果音として入っているのだが、なんと告井軍曹、口笛でそれを再現。「今日はちょっと調子が悪く上手く出ません」といいながらもクリソツな鳴き声を再現。鳥が出て来たら次は豚だろう、というわけでもないが続いての曲は「ピギーズ」、子豚ちゃんの歌だ。もちろん最後には子豚の鳴き真似もしっかり入れてくれた。「もうひとつくらいホワイト・アルバムの曲を」といって奏で始めたのは、なんと「ハニー・パイ」。時代がかったアレンジととぼけたポールの歌声が楽しめる小品。「ホワイト・アルバムからもう1曲やって休憩したいと思います。誰でも知ってる曲、知らない人はいない、多分、あのアルバムの中で一番ヒットした曲じゃないかな。これです」。僕は「ホワイル・マイ・ギター」か「バック・イン・ザ・USSR」かと思ったが軽快なカリプソのリズム。ご存じ「オブラディ・オブラダ」だった。会場全員でクラップハンド。大いに盛り上がり一部が終了した。というところで、続きはまた。


先日の告井ライブの影響で



本日のロックバー、開店前のレコードはビートルズの『アビーロード』。一緒にライブに行ったY尾君が告井軍曹の3枚目のアルバムを買ってサインを貰った。僕は家から持って来た春一番のライブでセンチの演奏が入っているアルバムにサインを貰ったのだが、Y尾君が僕の持って来たCDを聴きたいというので貸した代わりに告井軍曹のサードを借りた。

前々回のライブで告井軍曹の2枚目のアルバムを購入したので、今、車の中で聴くのはその2枚。セカンドはサージェント・ペパーとホワイト・アルバムの曲がメインでサードは初期のビートルズナンバー中心の選曲。続いて聴いていると実に楽しい。しかし、オリジナルのビートルズのサウンドをアコギ一本で完全コピーするのだから恐れ入谷の鬼子母神だ。

さて、今日はビートルズのアルバムを反時系列に聴いてみるか。



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