Battito del Soleライブ・レポートというかせんべろ日記

 非常に疲れた1日だった。しかし、充実した1日でもあった。山下達郎の全国ツアー・メンバーに選ばれた宮里陽太のバンド、イタリア語で『太陽の鼓動』を意味する、Battito del Sole(バッティト デル ソーレ)のライブを見に行ったのは、先日の土曜日だった。あ、ちなみにイタリア語でというところから、バンド名まではmixiのコミュのコピペ。いまだにバンド名をはっきり覚えておらず、通称、『陽太のバンド但し若いもん向け』と呼んでおります。ちなみにオーソドックスなジャズを聴かせる宮里陽太カルテットは、ちゃんと陽太カルテットと呼んでいます。年取ると長い名前が覚えられないのよ。もっとも若いころは、プレミア―タ・フォルネリア・マルコーニとかファー・イースト・ファミリー・バンドとかブラッド、スエット&ティアーズとか長い名前のバンドを簡単に覚えていたのだが、これも1日100万個は死んでいく灰色の脳細胞の劣化のせいだろう。

 まあ、そんなことはどうでもいいが、このBattito del Sole、やっぱ面倒だから陽太バンドと書いてしまうが、ライブは10日土曜日、午後7時からニュー・レトロ・クラブというライブハウスで行われるという情報をゲットしたワタクシは、持てる限りのネットワークをフル活用して動員をかけた。まずは、毎度毎度の相方であるY尾君に、このところライブ参戦率がアップしてきたS藤くん、さらに海外生活四半世紀のS谷君という高校時代の学友諸君に声掛けし、全員の参戦を確認。さらに若い友人たちにも声をかけ、そちらも最低二人、もしかしたら三人になるかもしれない。さらにさらに、今度の陽太バンドは若いもん向けだから、そら、きれいどころっちゅうか、まあ、その、おねいさん関係がいないと寂しい。男ばかりで元ディスコであるニュー・レトロ・クラブに行っても気持ちがすさむだけではないかと思い立ち、20代のきれいどころにメールしたけど、返事なし。しょうがないな、じゃ、同年代なら二つ返事で参加するだろうと思って高校の同級生関係にメールしたが返事なし。もっともこちらは、メールチェックが多くて週1回、下手すりゃ月1回という大おねいさんたちなので、メールに気がつかなかった可能性がある。

 だったら電話して誘えば良かったじゃないかという気がするが、実は直前まで若いおねいさん関係の参戦が、その可能性が高かったわけよ。で、その場合のワタクシの態度というものを考えた時に、これは圧倒的に若いおねいさん関係に話しかけるというか、当然このバンドのことやミュージシャンのことを知らないだろうから、まあ年長者の義務として説明するわけだ。そうするとですね、これまでの経験から言うと大おねいさんがたは10人が10人怒る。いわく「私たちを邪魔者扱いしている」「若い子だけちやほやしている」「これって明らかにサベツじゃない?」「あんたたちも今は若いから、そういう態度取れるけど、歳を取るなんてのはあっという間だからね。いい気になってるんじゃないわよ」みたいなですね、悪貨が良貨を駆逐するってんですか、ちょっと違う気もするが、まあ無用のトラブルが発生する可能性が高い。で、あればぎりぎりまで若いおねいさんの参戦確認を待って、それでどうしてもダメなときに大おねいさん方に電話すればいいか。などと、今考えるととんでもなく甘い見通しを立てていたのだ。まあ、でもこういう甘さがあってもいいじゃないか、人間だもの。

 で、最終的には上に書いた野郎だけの集まりになってしまい、それも当日になってY尾君から急用で参戦できないとメールがあり、じゃあ、ライブ前の17時からのせんべろ大会は同級だったS藤君、S谷君、そして若手組の2人の、僕を入れて都合5人の参加ということになった。当日になり、いろいろ雑用を済ませて自宅からせんべろ会場である「たか×ご」という大衆飲み屋に向かった。17時集合で連絡していたので、僕がお店に着いたのは、その5分前。やはり海軍生活が長かったせいか、5分前精神がばっちりしみこんでいるワタクシであった。ウソです。営業マン生活が長かったので、客は待っても待たせるなの鉄則で、どんなに横着しようとしても早く着いてしまうのだ。

 この「たか×ご」という大衆飲み屋は地元では知る人ぞ知るせんべろ酒場で、いまでこそ改装して小奇麗なビルになっているが、その前はもうなんというか、こんな薄汚いところで飲み食いしたら絶対ヤバイぞという感じの凄まじい飲み屋だった。出入りするお客さんも第一次産業というか、建築というか土木というかニッカボッカの似合う方が圧倒的多数で、それ以外のお客さんも赤黒い顔で、くわえたばこの気性のちょっと荒そうなおじさん関係しか出入りしないところだった。学生時代は、その店に出入りするのは絶対詩人ばかりだと確信していた。その心はアルチュール・ランボー、なんちゃって。

 まあ、しかし、月日は経ち、学生の頃のような皮相な対労働者観というものは無くなり、昼間からやっていてビールを頼むとすかさず大瓶が登場してきて、おでんは24時間ぐつぐつ煮込まれているは、単品のあんかけ焼きそばやチキン南蛮が結構いけてて、焼鳥も通ぶった奴は必ず塩でなどと注文するが、てやんでい、たれで食ってみなって、本当の鶏の味がしっかりわかるからよ、え、おい悪いこと言わないから塩分取り過ぎは高血圧の元だぞ、などと後半はちょっと錯乱したが、まあ、かような居心地が良くて安くてお腹一杯飲み食いできる酒場はちょっとない。ブ・ナロードなどという言葉があったが、そんなことを言う前にオレこそがれっきとしてルンペン・プレカリアートだからして、実にお似合いのせんべろ酒場であるのだ。

 その「たか×ご」に5分前に来たのはいいが、誰も見当たらない。念のために参加予定の皆様に電話すると「今から出ます」「これから帰って着替えていく」「あ、もうそんな時間でした?」「只今電話に出ることが出来ません」などの、要するに定刻に来たのはオレだけか。オレは反帝国主義者であるが、定刻主義者でもあるのだとこの怒りをどこに向けたらいいか分からず、店ののれんをくぐり「ビール、おでんは大根とちくわと蒟蒻」と一瞬のためらいもなく注文し、しょうがないから携帯からエントリーをアップした。そうこうしているうちに1人、2人と参加者は増えてきた。ようやく4人そろってビールから焼酎に変わって、つまみも鳥皮だとかまぐろの山かけだとかタラの芽の天ぷらとか地鶏だとかパワフルなものが増えてきて、まあ飲んだ呑んだ。ちなみにこのお店の名前は正確には「宣伝酒場たか×ご」というのだが、いったいどこにプロパガンダの要素があるのか、ゲッペルスからなにがしか学んだのか、それとも電通の鬼十訓をお店のスローガンにしているのか、謎が解けないまま時間が来たので店を出た。そうそう、もう一人のS藤君はせんべろには間に合わないので、直接会場に来るとのことだった。おっと会計報告を、4人でたらふく飲んで食って一人当たり1,900円でした。厳密にはせんべろではなくてにせんべろだったが、この程度の誤差は「想定の範囲内」である。

 お店を出たのが18時半くらいで、ちょうど日がすっかり落ちかかる、いわゆるたそがれ時であった。ふと目の前を背の高いミニスカートの良く似合うおねいさんが歩いていた。どういう訳か、僕たちの先頭をどんどん歩いていく。歩く方向が一緒だったので見ようによっては僕が後ろから付いて行ってるようにも見える。S谷君がからかい半分で「おい、drac-ob、お前、ストーカー行為はいかんぞ、もっと離れろ」などというが、いかんせん進行方向が全く同じなのだ。僕たちの話し声にせかされるように歩いて行ったおねいさんの目的地はなんとニュー・レトロ・クラブであった。そこで俄然、オトコ4人の目つき態度が変わる。「おい、見たか、今みたいなおねいさんがもしかしたら入れ食い状態かもしれんぞ」、などと品の無いことを言ったのが誰だったか記憶にないが、こうなると人間あさましいもので我先にと会場への階段を上って行った。

 ここで、陽太君の関係者ご一同にワタクシ深々と頭を下げてお詫びしないといけないのだが、正直、ニューレトロであれだけお客が入っているとは夢にも思いませんでした。実は、せんべろの「たか×ご」でライブのことを話していた際に、ついこの前このニューレトロで友達のバンドが出たという話をした男がいて、その時はオール・スタンディングだったけど今日もそういう形式じゃないかときかれた。僕は、「まあ、若い人も多いかもしれんが、椅子を取っ払ってのオール・スタンディングはないだろう。ちゃんとテーブル椅子があって、ナイトクラブみたいな感じでライブするんじゃないか」と、これは普段見慣れているライフタイムのライブの雰囲気を話していたのだ。

 ところが入ってみてビックリ。4人まとまって座るスペースが無い。というか、壁際のソファのところはすでにお客さんが座っているか、予約席になっているか、パンフや上着などで確保されていて、空いてるところが無い。18時半開場、19時開演なので18時40分くらいに入れば大丈夫と思っていたのが大誤算だった。それでも、なんとか丸椅子を確保し開演を待った。

 19時ジャストにメンバーが登場した。その時の客席の反応はオーッという軽い地響きみたいなもの。いや、これ、なんだ、いつの間にこんなに人気が出ていたんだ。やはり達郎のツアーに参加して、一気に知名度が上がったのか。真っ暗なステージにメンバーが登場して、カウントとともにいきなり演奏が始まった。ファンキーなナンバーだ。陽太のオリジナルじゃなくて、Papa Grows Funkあたりの曲かもしれない。感心したのは、演奏が始まった瞬間に客の反応が、そのボルテージが一気に上がり、その中でメンバーそれぞれが自信を持って演奏したいたこと。特に、陽太のプレイはそれ以前から彼ならではの音色というか音があったが、この日の陽太はそれまで以上に堂々と自信たっぷりに吹いていた。やはり、達郎のバックで圧倒的多数の耳の肥えた観客とそれ以上に鋭い耳を持つミュージシャンたちに揉まれていった中で生まれた来た自信がそうさせているんだろう。

 2曲目は彼のオリジナルで、「Happy Tree」。人の様々な縁や関係を木のように表現したというか、諸星大二郎のマンガに出て来そうな進化の木みたいなイメージのきれいなバラード。陽太の才能は、もちろん演奏者としても素晴らしいものがあるがメロディ・メイカーとしても能力も演奏能力に勝るとも劣らない。今回のライブでは演奏してくれなかったが「ベーコン・レタス・エッグサンド」という名曲もある。東南アジアをツアーした時だったか、そこのホテルで食べたベーコン・レタス・エッグサンドがあまりに美味しくて曲にしたというエピソードの曲だ。一緒に行った連中の反応も、あまりに室内が暗くて良く分からないが、十分楽しんでいる感じは伝わって来た。手を叩いたり、体を揺さぶったり、暗くても振動は伝わってくる。そういえば以前はなかったパーカッションが入っている。新しいメンバーだろうか。あっという間に第一部は終了して、メンバーがステージを降りた。



 さて、その後の第二部だがこれがまた強烈だった。Battito del Soleのメンバーの中でプロとしてやっているのはバンマスの陽太とキーボードの大西さんの二人で、あとのメンバーはいわばセミプロ(もしかしたら違っているかもしれない。その時は御免)だが、もちろん音としては十分楽しめるし聴けるものだった。個人的にはギターのTaNNy君がサンタナを連想させる音を出したりして頑張っていた。もちろん、このメンバーのまま最後まで走ってもらって全く異議なしだったのだが、なんととんでもない仕掛けがしてあった。山下達郎の宮崎公演は前日の9日金曜日で、翌土曜日は移動日で日曜日は大分での公演だったらしい。その移動の1日を陽太はBattito del Soleのメンバーとして演奏したのだが、なんと山下達郎のツアー・メンバーであるドラムの小笠原拓海とギターの佐橋佳幸の両名がスペシャルゲストとして登場。いやはや何とも圧倒的な音でした。Battito del Soleのドラムも決して悪くは無いのだが、小笠原の叩く音は同じドラム使っていてどうしてここまで違うのだ。このタイトな音はどうなっているのだ。自分のスティックを持ってステージに上がったが、もしかしたらあれは魔法のスティックなのかと言いたくなるくらいの、まあ言葉に出来ないくらいの強烈なタイコでした。またギターも、流石りゅうせき、ながれいしってくらいのもんで、もうめんたんぴんいーぺーこーどらどらばんばん、バカッタレてなもんで、とにかくまあものすごいメンバー率いて山下達郎はツアーをしているんだなというのがしみじみと感じさせられたライブでした。

 このライブに実は、デジカメ持ち込んでいてそれでも演奏に集中したかったのであまりカメラは使わなかったのだが、このスぺシャルゲストが参加した1曲目だけは夢中で録画した。しかし、しかしである。音楽いや音というものはその瞬間のものであることを再認識しただけであった。今まで何度も拙blogでライブレポートを書いてきたが、どうあがいてもライブの瞬間の音というのは切り取れない。言葉では無理だし、録画したものでも無理だ。デジカメに入っているデータを何回見ても聴いても、もちろん生で聴いたときの感動はよみがえるが、音は死んでしまっている。やはり音楽は生き物で、とくにレコーデッドされた音楽は別として(今ふと思ったけどRECORDEDという言葉そのものがDEADというニュアンスを含んでいるんじゃないだろうか)、ライブでの音楽を再生できるのはライブだけ。つまり生きてる音を聴かないとダメだという当たり前だの結論だった。



 ゲストミュージシャンとの強烈な演奏を聴かせてくれた後は、本来のメンバーに戻ってステージは終了した。本当に汗を感じるいいライブ、いい演奏でした。しかし、これだけ陽太がビッグになるとこれまで出ていたストリート音楽祭には出なくなるんじゃないかという不安と、まあ無い物ねだりなんだけど、ハードバップなカルテットの演奏も聴きたいよう、電気電気と威張ってるんじゃなくてアコの楽器で勝負するのが男じゃ、などとわけのわからないことを考えて、この日の感動を誰かに伝えたくなり、思わず宮里さん(陽太のお父さん)に電話して感想を話した。山下達郎のツアーに参加して一回り、二回り大きくなって自信をつけたというのが僕たちの結論でした。

 そうそう、S藤君だがライブの開演前にぎりぎり間に合った。そこでは話す時間もなかったので、その後ROCK BARに行ってその日の感想や今後のライブの予定を話し合ったのだが、実は4月3日にあの遠藤ミチロウが来るのだ。そのことを彼に話すと、ちょうど吉祥寺で友川かずきを見て来たばかりで、やはり言葉を持っているミュージシャンはいいと二つ返事で一緒に行くことになった。しかし、ミチロウについて僕が話すことと彼が話すことがどうもすれ違う。思わず「お前、遠藤ミチロウ知ってるよな」と尋ねたら、「知ってる知ってる、アコギでパンク風な歌歌う男ジャン」などという。まあ、それほど違ってはいないが、「パンク風というかパンクそのものだろう、ミチロウは」と答えて、はっと頭にひらめいたことがあった。「お前、もしかして『東京ワッショイ』の遠藤賢司と間違ってないか」。ちゃんちゃんであった。もちろんケンジであろうが、ミチロウであろうが中年パンクスのオジサンたちはライブに参戦するのだ。

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コメント

おねいさん残念でしたねえ、、うはは、、

Recordedって無意識にDeadを感じてる気がしますね。
最近ライブでビデオ班やったあと、なんとモニターではなんの問題もなかったのに録画できてないことがあって、あれはショックでしたわ。こんなことなら最初から集中して観ればよかったな、おれの40分間を返せみたいな。いまだに残念orz
ミチロウくるんですか。1月にソロをはじめてみたけど、とにかくインパクトでかかったですよ。間違いないデスね!

ギターの佐橋まで来たとは・・・
でも実物めちゃ小さくかった??(汗)
先日の達郎コンサート見たばかりだし。
でも、このLIVEも想像しただけで、いいね!

あと、ミニスカのおねえちゃん達ね(笑)

ビデオ録画していて

映ってなかった時の衝撃ってのは、タマランチ会長(死語)ですよね。子供が小さかった時に、幼稚園か何かの行事にビデオ担当で録画したのですが、どういう悪魔の呪いか全く映っておらず家族一同、親戚一同から激しく非難され、ブチ切れたワタクシは「お前らには心のカメラは無いのか。亀井勝一郎先生も、感動的な場面では心のシャッターを押すと随筆に書いてあったぞ」と反論したものの、今の政局の亀井センセくらいの負け惜しみに過ぎませんでした。

>1月にソロをはじめてみたけど

ゆひょんさんがミチロウとハグしている写真の時ですかね?還暦過ぎても、まだまだ現役感丸出しでカッコいいっす。オールスタンディングでないことだけを祈っています。

確かに、佐橋氏は

背はあまり高くなかったですね。ただちょろちょろとしゃべったことが面白くて、ギターもソロをブイブイ言わせた後は、バッキングに回って渋いところを聴かせたり、流石は一流どころ、一味違いました。この時の動画は編集してアップしようと思ってますが、音があまり良くないのと観客の頭が多く映っていて見づらいんですよね。どうしようか、ちょっと検討中です。

>ミニスカのおねえちゃん達ね(笑)

ここは花の75年度生として、ゼッタイ外せません。譲れません(キッパリ)。
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