先週のライブの話 ジャズナイト編 その3

 ジョージ川口とビッグ4の名前を知らない、ポンニチのジャズファンはいないはずだ。何しろ、初代のビッグ4はジョージ川口(ds)松本英彦(ts)中村八大(p)小野満(b)というそうそうたるメンバー。メンバーひとりひとりが日本のジャズの生き字引みたいな人たちで、たとえばジャズに全然興味がないという人でも、中村八大の作った歌を知らないという人はいないだろう。何しろ日本の有名なロックンロール(byキヨシロー)、「上を向いて歩こう」を作り、さらに六・八・九コンビで様々な名曲、ある意味スタンダードナンバーを作っている、と中村八大ばかり紹介したが、あとの人たちも八大に勝るとも劣らぬ名ミュージシャンである。そのジョージ川口の息子である、川口雷ニが父親の代から一緒に演奏しているビッグ4+1とボーカル・グループのBREEZEを率いての登場だ。メンバーは水橋孝(b)、市川秀男(pf)、川村裕司(ts)、岡野等(tp)、もちろんドラムは川口雷ニ。

 実は、僕は一度だけだがジョージ川口と話をしたことがある。ずいぶん前のエントリーにアップしたことがあるのだが、例によって余計な話をごちゃごちゃ付け加えているので、肝心なところだけ抜粋して、ここに載せます。これをエコ・blog・スタイルと呼ぶのはあなたの勝手である。

 それとこのアルバム(注:鈴木勲の『blow up』というアルバム)については後日談があり、僕が大学6回生のころ(恥)帰省して地元のジャズ喫茶に行った時のこと。あれ、ジャズ喫茶じゃないか、ライブも出来るしお酒が主体の店でスペイン語で「友達」という意味の単語を店の名前にしているところで、大上瑠利子並の恰幅のいいママさんとキリギリスみたいに細く、外見は哲学者みたいなマスターがやってるお店だった。結構宮崎のジャズファンとジャズファンを装ったスノッブが集う所で、生意気盛りの僕はよく店の二人に議論を吹っかけたりしていたが、軽くダッキングされて終わりというケースがほとんどだった。一度だけローカルナショナリズムと地方で有名なお店であることの自己満足についてマスターに絡んでいたところ、どこかで地雷を踏んだらしく初めて真顔で怒られた事があった。あら、話が逸れた。そのお店で日本のピアノでは菅野邦彦が一番好きだとそこに行くたびに吹聴していたのだ。ある晩県庁に勤めていた同級生と一緒にその店に行ったときの事、たしか平日の水曜か木曜で、客は僕たち二人きりだった。

 店のママが電話を終えて僕たちのところに来て「今からジョージが来るよ、もしかしたら菅野も来るかも」と言った。ビックリして聞き返すと、ツアーの途中だかなんだか分からないがジョージ大塚が他のジャズメンとオフで宮崎に来ており、今からウナギを食べにこの店に来るとの事だった。その店にもアップライトのピアノはあったので、菅野さんが来たら「エブリシング・ハプンズ・トゥ・ミー」をねだろうと待ち構えていた時だ。「よう!」と野太い声がしてカイゼル髯の小太りの男と痩せ気味の若そうな男が店に入ってきた。ジョージはジョージでも川口さんのほうで、一緒に来たのはベースの水橋孝さんだった。お二人は出前のウナギを黙々と食べ、その間は声をかけるのも憚れるような雰囲気だった。ようやく食べ終え、お茶を飲んでいるところをママが話しかけ、たまたま客の僕たち二人も会話に参加させてもらえた。

 一体全体どうしてジョージ大塚が川口になったのか、最後まで分からなかったが伝説の川口さんは本当に話の面白い人だった。川口さんは一滴もアルコールは口にしない。代わりにコーラを水代わりにがぶがぶ飲み。ライブの後はバケツで飲むそうだ(ほら、始まった。ジャズミュージシャン特有のホラ話だ)。ベトナムで米軍に護衛してもらいながら川で泳いだ話とか、後に本で読んだジョージ伝説のエピソードのいくつかを直接話してもらい、彼の独特な話し方と身振り手振りで全て本当の話と思ってしまうくらいの迫力だった。よく覚えているのはプロの手は、プロの手でドラムの練習のし過ぎで指が変形したとかなんとか言われ、調子に乗った僕が握手してもらい、ついでに水橋さんにも手を差し出したら「僕はまだ修行中だから」といって拒否された。その時の水橋さんの表情にいつかは自分もジョージさん以上のミュージシャンになるという決意を見たというのは、こちらの勝手な思い込みだったか。


 今から、ざっと30年前の話だが、その時はまだ若くて痩せた(今も痩せてはいるが)、へなちょこファンには利き腕は預けないというゴルゴ13的クールさの水橋孝が、ベースを弾いている。そしてドラムはジョージの息子だ。これでぐっと来なければ、血と涙の通っている人間ではない。また、管楽器がいい。特に岡野等のトランペットは空間を切り裂くというか、音がドームから空中へ、空に向かってまっしぐらに突き進んでいくようなサウンドだった。まずは、バンドで1曲やって、それからコーラス・グループのBREEZEが出てきた。男女2人ずつのメンバー構成で、ハーモニーを聴かせる。もっとも、今回急に組み合わせが決まったせいか、あるいはビッグ4+1の名前に遠慮があったのか、やや緊張して萎縮しているというか、ちょっとお邪魔させてもらいましたみたいなところがあって、かわいそうだった。このコーラス・グループを見ていたら、やはり30年ほど前のフェニックス・ジャズインで見たコーラス・グループを思い出した。デビューしたばかりの神崎オンザロードがバックを務めた、そのグループはITSといった。

 いや、実は、そのグループ名はすっかり忘れていたのだが、今回エントリーを書くために、川口雷ニのHPをチェックしていたら(彼のバイオグラフィーを見ていたら)、なんと1980年のところに「プロ入り。JAZZコーラスグループ、IT'sのバックバンドの関係からCMレコーディング。」という記述があり、僕がフェニックス・ジャズインでITSを見たのも、間違いなく1980年だったし、それ以上に長年忘れていたそのグループの名前が分かってうれしくなりググったら、またまた面白いことが判明した。ITSで検索したら、株式会社オフィスケイというHPにヒットして、そこの社長である東郷輝久氏のプロフィールを見ていたら1978年のところに「佐藤允彦氏の協力により、ジャズヴォーカルグループ『ITS(イッツ)』を結成。全国でコンサート活動を行い、人気を得る。」という項目があった。なるほど時系列的にはその通りだなと思いながら、その前の歴史を見ていたら。1965年のところに「故本田竹広(ママ)氏とソウルバンド『MOJO(モウジョ)』を結成。弘田三枝子氏、由美かおる氏等と全国を回り好評を得る。」という部分があった。最初は何気なく見ていたのだが。MOJOというバンド名に何か引っかかるものがあり、ぼんやり考えていたら、思い出した。

 頭脳警察を結成するはるか前に、ホリプロのGSである『ピーナッツバター』のベーシストとして参加したパンタが、もちろん、あの性格だからミリタリールックで失神サウンドを歌うGSなどに収まるわけがなく、すぐに脱退するのだが、その後に参加したバンドがMOJOで、本人も何かのインタビューで弘田三枝子のバックをしていた時期があると発言していたことがあった。おお、なんというめぐり合わせ。日本のジャズとロックのシンクロ。前のエントリーでパンタの義兄はジャズのトロンボーン奏者の故板谷博だということを書いたが、僕が見たり聴いたりした音楽で、これはいいなと気に入った音楽は、こういう形でリンクしていたのだ。この発見にちょっと僕は痺れたね。



 おやじ譲りの豪快なドラムで、川口雷ニのビッグ4+1の演奏は終わった。今回のイベントを担当している男女のMCが出てきて、昨年は口蹄疫でジャズナイトが開催できなかったが、今年は3.11などがあったにも関わらず、まただからこそこの会場内でも募金コーナーを設けているのだが、こういう風に盛大にイベントが出来てよかった、みたいな話をして、続けて、これから最後の演奏の前に花火を打ち上げます、昨年の予算が余っていたので今年は2年分派手に打ち上げますと盛り上げた。後ろを振り返ると一気に花火が打ち上げられて嫌でも夏のムードを盛り上げてくれた。さあ、いよいよラストのお笑いのおばちゃん、じゃない、綾戸智恵のライブだ。そうそう、この綾戸智恵のライブだけは最前列で見ようというY尾君の提案に従い、僕たちは最前線へと移動し、早く来てシートや椅子で見る場所を確保している真面目な市民の隙間にもぐりこんだ。目の前はステージだ、と言いたかったが、実は最前線を陣取ってる団体がいて、しかもその前にはレールが2か所並行して敷かれていて、そこにはテレビカメラが左右に移動して視界を遮る。ここでちょっと報道関係にクレームを申し上げたい。なぜ、君たちはさも当然のような顔をして、一番前に陣取り、しかも人力で、つまりは己の足で移動しながら映すならまだしも、レールの上にトロッコみたいなもの乗っけて、助手に押させて左右に動き、ここだというときは止まって撮影をするのだ。その後ろにいる人間は視界が遮られて見づらいだろう。そんなことも分からないのか。いつから我が国はこのように他人の痛みや苦しみが分からない国になったのか。あ、コイズミの頃から、そりゃ間違いない。

 で、まあ、出てきました、体は小さいが声と態度はめちゃくちゃでかい介護のおばちゃん、我等が綾戸智恵。テレビなどで見て、小さいなぁと思ったことがあったが、実物は本当に小さい。しかし、声は本当に大きく張りがある。トークも芸人かと思うくらい流暢でツボを押さえていて笑わせる。今回はニューアルバムのプロモーションを兼ねたライブだったので営業トークも多かったが、嫌味がないんだよね。「せっかく新しいアルバム出したのにプロモーションを会社任せに出来まっか?何でも人任せはあかんちゅうねん。もう、そんなんは自分でやらんと誰もしてくれまへんがな。これから歌う歌聴いて、ええな、思たら、後ろのテントに仰山CD積んでますから、お父さん、買うてや、あ、今ちゃいますよ。歌聴いてからでええんですから、もうほんま年寄りは気が短くてあかんわ」みたいなことを延々とやるのだ。笑わせるツボと聴かせるツボをしっかり持ってるおばちゃんである。メンバーは宮野弘紀(g)、金子雄太(org)、西嶋徹(b)、田中倫明(perc)、それに綾戸智恵のピアノとボーカルである。ピアノがあるのに、オルガンってのはと思ったけど、いいんだなこれが。オブリガードみたいに使ったり、リードを交代で弾いたり、そうそう、ロックで言えばザ・バンドみたいな感じだったな。

 ニューアルバムからの曲を主にやったのだが、突然MCで「トム・ウェイツいうおっさんがおりましてな、これ、あんまり売れへんおっさんやけど、ええ歌書きますねん。あんまりヒットはせえへんけど、私が日本で歌ってヒットさせたろと思てうとてますねん。曲は『’Ol 55』ていいます」。なんと、僕の大好きな(初期の)トム・ウェイツのナンバーだ。原曲より若干黒っぽいアレンジだったが、そんなに大仰な感じではなくピアノとともに歌い上げてくれた。朝早く起きて女の家を出て行かなくてはならない、その切なさを歌った歌だが、綾戸智恵の歌声はトム以上に切なかった。



 演奏が終わり、盛大な拍手で送られたあと、当然アンコールの拍手は止まない。その拍手にこたえて、またもやメンバーが出てきた。あれ、ちょっと人数多くね(このあたりの表現、ヤングやね~)。なんと綾戸智恵のグループのほかにサックスの川嶋、コーラスのBREEZE、トランペットの岡野、さらにゲストボーカルでこのイベントのオープニングを飾った阿川泰子も登場した。曲は「スウィングしなけりゃ意味がない」。いやもう、みんなで大盛り上がり。綾戸智恵がアドリブでゲストミュージシャンをおちょくる。阿川泰子には「かわいいやんけ、かわいいやんけ、オバハンやけど、ほんまはオバハンやけど」とか、「川嶋、川嶋、元サラリーマンの川嶋」とかもう言いたい放題である。阿川泰子も負けずと言い返すのだが、声の太さと大きさで負けていましたね。で、アンコールはまさかのこれ1曲。拍手が響き渡る中、登場した男女のMCはブーイングの嵐の中ひたすらお詫びしていました。とまあ、なんとかジャズナイトのレポートを終わります。しかし、やっぱり1バンド40分じゃ物足りない。やはり地元のジャズ現場をしっかり追いかけねばの娘だ。

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コメント

私も買ったけれど

DRACに「BLOW UP」旋風を起こしたのは、
非常に不本意ではあるが(笑)、F田君ではなかったろうか?
あいつは、ほとんどにおいて いいかげんな男で、
見習うべき所は無かったけれど、音楽に関しては王道で、
コレクションのセンスも良かったと思います。
と ほめてやったから F田君、服役中でなければ 連絡くれ。

大変残念な事実ですが

あのアルバムをボックスに最初に持ち込んだのは、「なんですろ」F原です。またの名を「レインボーサンダル」のF原、高知は土佐塾出身のヘンタイでした。いきさつは、↑のエントリーの「ずいぶん前のエントリー」のところにリンク貼っていますので、お暇なときにでもどうぞ。

>服役中でなければ 連絡くれ。

いや、マジで服役とか海外逃亡とかじゃないですかね。あ、逃亡中ならネットは見られるか。あいつの性格からして、自分のことが話題になっていればうれしがって絶対絡みに来るはずですから、物理的にアクセスできない状況としか考えれれません。やはり、懲役…。

>音楽に関しては王道で、コレクションのセンスも良かった

ヴァン・ヘイレンのファーストみたいなこともありましたが(笑)。

Perc.

田中ミチアキーノさん、10年前くらいに
ベースの高橋ゲタ夫さんと、うちの店に来た。
当時、うちはBARなんだけど、Tシャツ・トレーナー・キャップ・缶バッジetcとかも販売してて、
田中さん、ビートルズの缶バッジ2個お買い上げ(600円也)

おととし、京都RAGでお会いし、『岐阜THIS BOY、覚えてます?』って、覚えてたよ!
ミュージシャンって、めちゃ記憶いいからね!
でも、うれしかったな! 

いやいや、ミュージシャン以上に

THIS BOYさんも記憶力がいいではありませんか。以前も何度かコメントで教えてもらいましたが、日本のジャズ界の有名人が結構お店に来られてるようで、back-mountain-cすね。なっちの来店話もひとつ宜しく(笑)。
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