言い訳日記、あるいはこの間のライブ日記 その2

 15日の金曜日は、香月さんのラスト・ライブなので、いつものY尾君はもとより、昨年から親しくなったワカイモン(といってもどちらも30代なのだが)も半強制的に誘ってライフタイムに行くことにしていた。もちろん、今回のライブは20時開演なので、その前にいつもの居酒屋で18時過ぎに集合ということにしていた。脱メタボ闘争を革命的に闘い続けているワタクシは、今回も自宅から居酒屋まで歩いて向かうことにした。もちろん、宮崎の7月の夕方は太陽ギラギラ、ビルの谷間(by エレカシ)であり、その中を走れ、熱いなら(by Panta)とばかりに、一目散に目的地に向かうワタクシの姿があったはずだ。それはまるで、一度は裏切ろうとしながらも、いやそんなことをしては人間の風上にも置けない、と気を取り直して走るメロスの姿にも似ていた、と言えなくもないのではないかと二重否定を使いすぎて、意味が混乱しているけど、それくらい暑い中を信号に間に合うよう走ったり、汗を拭き拭き歩いたりして、いつもの居酒屋に着いたのは今回も18時を少し回ったころだった。

 例によってY尾君は中ジョッキをもうほとんど空にしていて、その横にある小皿に残った水分と皿の端にへばりついている黄土色の残骸から、「おでん、大根と厚揚げ、うーん、あと一つは、これはちょっと待てよ、そのかすかに残った繊維質からしてゴボ天、どや、間違いないやろ」とエルキュール・ポアロか隅の老人かというような名推理を働かしたが、ミステリをほとんど読まなかったY尾君には通じなかった。しょうがないので、「あ、オレも生1杯、それからおでんで、こんにゃくと厚揚げね、それから豚バラと鳥皮とネギマを各2本」と力強く宣言した。注文した品が出てきて、「まあまあ」、「それじゃ、お疲れ」とかなんとか言いながら乾杯した後、Y尾君がおもむろに、「お前、UMKのジャムナイト、行ったことあるか」と聞いてきた。自慢ではないが、昔のジャズ・インだったら何度も見に行ったが、フェニックス・グループが撤退というか倒産して、その後地元の放送局が冠になって、しかもジャズの日が1日、ラップだとかその手の若者音楽の日が1日の2日間のイベントになってから、まともに行ったことはない。だいたい、俺んち電子レンジ(むろん、これはオレ×ジ・レ×ジ)なんてバンドのライブなんか見てられるか、そう伝えると、「いや、オレも行ったことはなかったし、ジャムナイトで5000円使うくらいなら、地元のミュージシャンのライブを2回見たほうがいいと思っていたんだけど」、と何やら奥歯にものの挟まったようなことをいう。

 前回は、彼の鬼平に対する熱き思いをおちょくりながら聞いていたので、今回はおとなしく話を聞いていたら、とんでもない話に変わっていった。「それで、会社の同僚にジャムナイトのことを聞かれたので、さっきみたいなことを言ったら、『じゃあ、誰かほかの人がいいかな』なんていうから、よくよく話を聞いてみたら、そいつはチケット買ったけど、どうしても都合がつかなくなったから、代わりに行かないかという話で」と、おもむろに茶封筒からチケットとフライヤーを取り出した。よく見たら、チケットは2枚ある。「てーと、なにかい、そのお方が野暮用で当日行けない代わりにこちとらに行ってくれとそういう訳かい」とワタクシ、突然時代劇の登場人物にジャガーチェンジして聞いてみた。「うん、お前、行くか」「郁々、いや違った、行く行く」、ということで、急遽、翌日のジャムナイトへの参戦が決まった。

 さあ、そうなると人間、あっさり態度が変わるもので、実は一昨年のサリナ・ジョーンズは見たかったとか、今年は女性ボーカリストばっかりだけど、阿川泰子もずいぶん懐かしいし、綾戸智恵はこの前のローカルバラエティで地元のアナウンサーとセッション(そのアナウンサーがアマチュアながらトロンボーンを長いことやっており、マジで2曲セッションしたのを偶然見たのだ)してたとか、口調は急速にジャムナイト、なかなかいい企画じゃないかという話になりつつあったら、今回はY尾君が爆弾発言をした。

 「実はオレ、UMKの就職の面接で4次までいったっちゃわ~」「へー。4次つったら、ほとんど最終面接みたいなもんやけど、なあ」「そこでね、向こうの面接官から『君はうちの会社に入ったら何をしたいか』と聞かれて、オレは胸を張って『フェニックス・ジャズインを城島ジャズ・インに負けない日本一のジャズのイベントにします』って言いきったわけよ。」「ほー、なかなかにチャレンジャーというか向こう見ずというか、♪若さゆえ~なやーみー、若さゆえ~くるしむ~初めての~」「歌はもういい。で、相手の面接官は確かにちょっと感動したと思うっちゃわ。ただ、オレの場合そのあとのことを考えてなかった」「え、というと?」「面接官が『わかりました、そのほかにあなたが私たちの会社に入ってやりたいということを教えてください』と聞かれたから、オレは『別にありません』って答えたんよ。」「はい?いや、お前、そりゃジャズ・インを日本一のイベントにするって立派だけどよ、放送局のメイン業務じゃないだろう、ふつう、他の目標っていうか、本来の目標って考えておくもんだろ」「いや、オレはジャズ・インを日本一のイベントにするしかなかった」「いや、そら、あかんやろ」「おう、だからUMKは落ちた」。Y尾君の名誉のために書いておくと、彼はその後地元の大手の会社にしっかり就職して、現在に至っている。

 というような、バカ話をしているうちにワカイモンもやってきて、やはり人数が増えると話も盛り上がるし、飲み食いも勢いがつく。大いに飲んで食べているうちに時計は、はや19時半を過ぎている。前回、20時前に行ったら満席だったという苦い体験をしているので、二度と同じ轍を踏まないよう、その段階で居酒屋を切り上げて、ライフタイムに向かった。2階の踊り場に長机が出ていると不味いなと思いつつ、階段を上った。しかし、店の扉を開けるとやはりほぼ満席。空いてるのは後ろのカウンターくらいだった。それでも、前のほうをよく見てみると、いつもシルバーシートと呼んでる壁際の席のところに空いてる椅子がいくつかあった。大急ぎでそこに行き、とりあえず4人無事に座れた。場所的にはステージ向かって左側のところで、目の前にマイクが立っている。

 開演の時間になり、いつもの香月バンドが登場した。と、思ったらベースがレギュラーメンバーの諏訪園君ではなく、以前のメンバーである海江田君だ。香月さんのMCで、諏訪園君は突然福岡への出張が入ったので、出演できなくなり、急遽、鹿児島にいる海江田君を呼んだらしい。こういうところが、いかにも地元のバンドというか、セミプロのミュージシャンって感じで、応援したくなる所以である。今日が、正真正銘、宮崎での最後のライブになるので、それまでにいろいろ関係のあった人たちにメールしたら、こんなにたくさんの人が来てくれた、どうもありがとうというお礼の言葉からライブは始まった。

 例によって、まずはユーフォニウムの演奏から始まった。彼女を初めて見たのは2006年のニュー・レトロ・クラブでのクリスマス・イベントで、僕の目的はその日のゲスト・バンドのリトル・ジャイブ・ボーイズだった。その日に30年以上ぶりに藤井君と恵副君を見て大いに盛り上がったのだが、彼らの演奏の前に、そのイベントの企画グループの演奏があり、そこで香月さんの歌と楽器を聴いたのが最初だった。ほとんどアマチュアばかりの演奏者の中で、香月さんの歌と楽器は完全に突出していた。お金を払ってでも見たい(聴きたい)と思える音だった。今年は6月に藤井君のソロ・ライブを見ることができて、その1か月後に香月さんのラスト・ライブを見ているのかと思うと、一瞬、ぐっと来た。こういう縁というのは不思議で、その不思議さは翌日のジャムナイトの演奏メンバーの中でも見つけるのだが、それは別の話だ。

 香月さんのことばかり書いてしまったが、僕たちが彼女のライブを見に行くようになってから、バンドメンバーはほとんど変化がない。あ、ベースが諏訪園君から海江田君になり、またもや諏訪園君になったというのと、ドラムが、そう、ドラムが最初はライフタイムのマスターである草野さんが叩いていたのだが、香月さんのお兄さんの宏文さんが宮崎に戻ってきてからバンドに加わり、リズムが一気に締まった。いや、草野さんの時は締まらなかったとかそういう意味じゃないんですよ、とここは素早くフォローを入れる、気配りの男、drac-obであった(笑)。そういう意味では唯一不動のピアノが大西洋介さんで、彼のリリカルなピアノが香月さんの伸びのある声によく合っていた。

 えーと、僕はどうしてもボーカリストとしての香月保乃を見てしまうので、彼女のもう一つの楽器であるユーフォニウム(ユーフォニアム)についての記述が少なくなる。というか、最初にあの楽器見たときはチューバだと思ったくらいで、でんでん知らなかったのだ。音色は暖かいというか、おっとりしたなんていうのか、非常に人間ポイ。サックスやトランペットは金属的に聞こえることがあるが、ユーフォニウムはまるで肝っ玉母さんというか陽気な未亡人というか、まあ、そんな音色なのよ、って読んでる人はわからないだろうから、自分で調べて聴いてみてください。ここでは、ボーカリスト香月保乃の話しかでてこないのだ。



 楽器の演奏が終わり、マイクを持ち歌い始めたのは「サマー・タイム」だった。日本の原発は安全です、ってやつじゃない。それはRCの「サマータイム・ブルース」だ。「サマー・タイム」は、これはもうワールド・ワイドのスタンダードで、本当にたくさんの人が歌っているが、僕が一番好きなのはジャニス・ジョップリンの歌ってるやつ。バックはエレキバンドだけど、もうブルースが満タン状態で、特に深夜一人で聴くと鳥肌が立つこともあった。それに近い感覚を持ったのが、何年か前に廃店舗でのライブを聴いたカルメン・マキ。あの時は最強トリオだったから、板橋文夫のピアノに太田恵資のバイオリンで、そういえば太田恵資さんとはこの間のストリートで立ち話が出来たっけ、とトッショリの思い出話は終わりがない。

 次に歌ったのは、意外や意外。ビートルズの、それもホワイト・アルバムの収録曲の「ブラックバード」。以前から、香月さんのライブの時にはオジサンたちのキラーチューンである70年代ポップスを歌ってくれたのだが、ビートルズナンバーはやったことがあったっけ。まあ、僕が聴いていないだけかもしれないのだが。原曲はポールがアコギ一本で歌っている、切々とした歌。暗闇の中に希望を求めて飛ぶブラックバードは、ビートルズ解散後、ウィングス率いたポールが「ブルーバード」として『バンド・オン・ザ・ラン』の中に録音していると僕は勝手に判断している。最初の曲目紹介の時に、香月さんが「ジョンの曲です」といったので、黙ってりゃいいのに、おせっかいなワタクシが演奏後に「ポールの曲だよ」と声をかけたら、律儀に訂正のアナウンスをしていたっけ。うーん、こういう素直なところは見習わないといけないな。



 そうそう、うれしいハプニングもあった。翌日のジャムナイトに参戦するため宮崎入りしていたピアニストの荒武裕一郎(宮崎市出身)が、ライフタイムに来ており、草野さんの計らいでデュオで1曲やってくれた。曲は「Misty」。ここでは本格的なジャズ・ボーカルをしっとり歌ってくれた。荒武さんは、このほかにもその日ライフタイムに来ていた女性の人たちの歌伴をやってくれた。余談だが、演奏終了後、酔っぱらったY尾君が「オレはフェニックス・ジャズ・インを日本一のイベントにしたかったが、それをUMKの面接官はわかってくれなかった」という話を荒武さんにも話してしまい、それを聞いた荒武さん大いに受けて、明日UMKの社長を紹介するから15:30からのパーティに出てきたらとまで言ってくれた。いや、もちろんリップサービスだけど。荒武さんは、宮崎出身のいろいろなミュージシャンの話もしてくれて、ギタリストの西藤大信はメロディ・メイカーであるとか、以前ポレポレ(宮崎にあるジャズのライブハウス、週末のみ営業)で宮里陽太と古地克成と一緒に演奏した時の話など、面白い話ばかりだったがちょっとここには書けない。



 デジカメで録画していたのだが、やはりバッテリーと2GBのカードのため限界が来てしまい、そのあと歌った「ア・ソング・フォー・ユー」は途中で切れてしまった。カーペンターズのヒット曲であるが、僕はオリジナルのレオン・ラッセルの歌とピアノが一番気に入っている。いやー、男の色気ってんですか、少し狂気をはらんだ歌声が、何とも言えないんですよね。レオン・ラッセルのカーペンターズ提供曲では、そのあとのシングルになった「スーパー・スター」のほうが有名であるが、あの歌を別の立場から歌った「グルーピー」というテイクは、やはりレオン・ラッセルの名演・名唱の一つだよな、などと、ここでもオジサンの妄想はネバー・エンディング・ストーリーなのだ。

 それでも、時間は過ぎていきライブもツー・セット終わり、香月さんの宮崎での最後の演奏も終了した。花束を抱えて、集まったお客さんにお礼を言ってバンドは演奏をやめた。さあ、そのあとが大変だった。草野さんがマイクを持ってスピーチをするのはいいのだが、最初はこんなにたくさん来てくれてありがとうという話だったのに、途中から本音が出て、毎月1回定期的にやってた時は来なくて、ガラガラだったぞ、もっとライブに足を運べ、この野郎というもので、それもデジカメで録画したのだが、さすがにこれをアップすると本人から確実にクレームが来ると思って自粛。一人で見直して苦笑しております。しかし、香月さんも8月からニュー・ヨークに渡り、向こうの学校に入って勉強するというから、最低でも2年間はライブが見られないのだが、今はYOU TUBEやU-STなんて便利なものがあるから、時々は音を聴かせてくれるとうれしいね。あ、My Spaceもあるか。以前、渡米していた時はニューヨーク日記てのをアップしていたし、今回もまたそういう形で元気な様子を見せてくれるのだろうが、次回はどこまで成長して戻ってくるか楽しみである。体に気をつけて、頑張りすぎないように行ってらっしゃい。2年たったら、オレも40代か、とどうして最後の最後で大嘘書くのか、ワタクシは!!

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