『ドキュメンタリー頭脳警察』論 たぶんその1

 映像は2008.9.26の大阪心斎橋クアトロでのライブから始まる。曲は「戦慄のプレリュード」。アルバム『悪たれ小僧』のオープニングナンバーだったこの曲を始めて聞いたとき、つまり彼らの解散直前のアルバムを始めて聞いたときに頭脳警察のバンド・サウンドがずいぶんまとまったというかタイトになったと思った。それまでのアルバムでの演奏能力はちょっと首を傾げるところがあったし(早い話が下手)、『誕生』などはスタジオ・ミュージシャンばかりで、あ『仮面劇』もそうか。頭脳警察って、良く考えてみるとバンドとしての演奏がちゃんと聴けるのはセカンドとサード、それと『悪たれ』ぐらいなのだ。あの伝説のファーストもパンタのギターとトシのパーカッションだけだから、バンドというよりデュオ、今でいうユニットの演奏だ。3部形式の映画の一曲目としては、ちょっと意外な選曲。もっともどの曲がオープニングにふさわしいのかと尋ねられても、明確な答えはない。100人の頭脳警察ファンがいれば100通りの思い込みがあるだろう。つまり、オープニングナンバーも100通りあってもおかしくない。あ、これ書いてしまったらこのエントリー終わってしまうな。まあいいか、今回は『ドキュメンタリー頭脳警察』を見た感想を極私的に、だらだらと密集した隊列で孤独を恐れず、誤解こそ我が宿命として、悪たれ小僧がかいたナニのように生死ばらまいて飛んで行くのだ。そう、最初に確認しよう、われわれはあしたのジョーにはなれなかったのだ。

 ええと、頭がまとまっていないというか、この前2日かけてDVDを見て、その時感じたことを携帯からアップしたのだが、当然ああいう短い感想ではなくて、映像を見ながら演奏を聴きながらパンタやトシの話を聞きながらいろんなことを思い出したり、考えたり、あるいは感じたりしたことをなんとかエントリーにまとめたいと思っていた。どういう感じで書こうかと考えたときに、最初に浮かんだのが今は亡き平岡正明スタイルで「頭脳警察はトリックスターである」的な断言と思い込み文章だったが、最近人間が丸くなった僕にはちょっと荷が重い気がした。じゃ、いつものスカタン文章でテレテレ、ダラダラ、ズブズブで行こうと、まあ要するに考えるだけ時間の無駄だったのだが、それでもトータル5時間14分の映画の感想を書くなどというのは、もちろん映画の上映時間と感想の長さが比例しているわけではないが、「指名手配された犯人は殺人許可証を持っていた」を聴いて考えることと「それでも私は」を聴いて考えることはやはり大きく異なるだろうし、ま、でもイメージ的には「指名手配」のほうがずっと膨らますこともできるから、などと答えは堂々巡りの闇の中。ドグラ・マグラの迷路の中に入ってしまうのだ。

 ごほん、気を取り直して、とりあえず闘争方針を明確にしておきたい。つまり、あの映画の中で取り上げられている曲順に、またストーリー展開に沿って「私と頭脳警察」、「いかにして私は反権力になってしまったか」とか「心残りはない、再度生まれ変わっても同じ道を歩むだろう」とか「でも、もうちょっと世の中に迎合してお金儲けもうまくなってそうするとオレの人生大きく変わってたのではないか」とか「だいたいロック聴くのは、まあ、ああいう時代だったからある意味必然だったけど、なんでまた日本のロックにはまりこんでいったのか」とか「日本のロックもはっぴい系の無害なものでお茶濁しておけばよかったのに、どうして楽器下手、歌も下手だった頭脳警察、つまりはパンタにのめりこんでしまったのか」とか「♪金金食い虫、役立たずなのは『白黒カラーのドレスカー』がパトカーのことだと分かった時のうれしさがやはりきっかけだったのか」とか「だからといってモロトフ・カクテルが火炎瓶のことだと知って嬉しかったか」とか「だいたいパンタの歌詞に出てくる名詞は特殊なものが多すぎる」とかだんだん話がめちゃくちゃになってきたので、再度闘争方針をあの映画に出てくる曲を順に追いかけて、そこから連想した、あるいは思い出した僕の極私的頭脳警察論を書いていくという大きな旗を掲げて始めて行こう、って大体オレのblog活字が多いというか、やたら文章が続いて読みにくい、レイアウトを考えたらどうだ、字と写真のバランスが取れてないというご批判を良く聞きますが、これが修正できりゃ苦労はないわけで。ま、でもなるべく読みやすく書いていきます。

 で、クアトロでのライブ2曲目に「悪たれ小僧」が登場し、そのときだったか各メンバーの、パンタとトシのプロフィールめいたものが字幕で出るのだが、トシの父上はパイロット万年筆の労組の活動家で母上はBr.令嬢で駆け落ちして結ばれた、などという、え、ロミオとジュリエットだったのか、みたいなエピソードがさりげなく出てくる。おっと、ネタばらしはそれくらいにして、「悪たれ小僧」、レコードでは「アグネス・チャン見て何をかいた?」という歌詞なのだが、ずいぶん昔に読んだパンタのインタビューでは「何をかいた」の「何」の前に「お~」という間投詞を入れて、聴き手に分かりやすくしたなどというエクスキューズがあった。つまり「アグネス・チャンみて(お)ナニをかいた~」というわけである。もっとも今のアグネス・チャン見ても何もかけないのは、単にアグネスだけの責任ではないことを公然と宣言する。いや、お互い歳をとりました。もっとも、最近のアグネスは某カルト宗教に接近したり、エロマンガの弾圧に加担したりと、70年代的にいうと敵権力に寝返ってるような気がしないでもないが、アグネス問題の追及が今回のテーマではないので深追いしない。」



 で、そこから過去の追憶というか、頭脳警察というロックバンドのイメージを決定的にした三里塚の幻野の話がトシによって語られる。映像は幻野祭での「銃をとれ」の演奏シーンと歌が流れる。しかし、あのアルバム、確かアナログでは3枚組で、ずいぶん前にDVD付きで再発になって、それ以来あちこちで見かけるようになったが、長い間名前の通り幻のアルバムであり映画だった。僕が始めてあのアルバムを聴いたのは、確か78年くらいだと思う。商学部の自治会の活動家だったH本が知り合いから借りたといって、セカンドと幻野のアルバムをまた貸ししてくれたのだ。音も悪いし、演奏もひどかったがそこに封じられている時代の匂いというか熱気みたいなものが伝わった。何しろ幻野では演奏の合間や、いやもろ演奏中にいろんな野次や怒号がはいる。「トキコはまだか~。トキコを出せ~」と何故か加藤登紀子の登場を促す某党派の活動家や、パンタが「革命宣言」やってるときに「やってみろ、やってみろ、やってみろ」と怒鳴る多分白ヘルもしくはブントの反赤軍派の連中、で、あのアルバム当時の日本のロック、ジャズ、ブルースの凄いメンバーが入っているのだが、いかんせん1バンド当たりの時間も少なく演奏もベストのものとは言い難いし、何故か突然婦人行動隊の歌う「武田節」」なんかも入っていて「人は石垣、人は城、情けは味方、仇は敵~」ともう混乱の極みなのだ。

 ただ、当時の話(三里塚の幻野祭の話)になると毎回出てくる歌は「銃をとれ」というのが、僕は気にいらない。何故、「セクトブギ」をアップしないのだ。歌い終わった後パンタが「おふざけ」というのが、ちょっと気にいらないが、あの歌こそ当時のセクトに対する不満や不快感が見事に歌われているものはなかったと思う。ファーストの「戦争しか知らない子供たち」と「セクトブギ」はいまだに風呂に入った時などに口ずさんでしまう。
ということで、せっかくなので記憶頼みだが歌詞を書いておく。



 セクトブギ by Pantax’s World
♪民コロ、ケルンパ、フロント、ブント、男が女に社青同、赤軍(あかぐん、と読んでください)ぽしゃって革マル体操、セクト公害ナンセンス、セクトが無けりゃ時はすぐくる、あんたも今すぐ辞めちまえ、公害公害騒ぐなセクト、それなら今すぐ辞めちまえ。
民学、プロ学、セクトの幹部のじいちゃん・ばあちゃん辞めちまえ、岡林のように言ってるだけで何もしないよりゃマシだけど。今すぐマンガを読むのは止めよう、それよりセクトの猿芝居、場所を決めてじっくり見よう、青ガラスとの棒遊び~


 歌詞カードには「清く正しく美しく、全共闘はどこいった」というフレーズが書いてあったが、実際には歌われず、その代り岡林のところを2回繰り返している。多分、パンタが歌詞を間違えたのだろう。77,8年にパンタに2回インタビューする機会があったが、その時のライブでも歌詞を間違えていて、そこを聴いたら「そんなのしょっちゅう」と胸を張られてしまい、流石自分で作る人は強いななどと妙な感心をしたっけ。

 映画に戻る。この後音声だけだが75.12.31の屋根裏のライブのときの「銃をとれ」がちらっと聴ける。そう、初代頭脳警察のお葬式、つまり解散ライブだ。パンタ自身は何故か記憶から欠落しているようだが、この75年、つまり僕がD大に入学した年だが、それは同時に初代頭脳警察解散の年であり、解散ツアーの一環としてD大の学生会館でライブが行われた。EVE期間中だった10月のハズだ。そのライブに僕と先輩のT原さんは行く予定をしていたのだが、前祝いに始めた麻雀が歯止めが効かなくなり徹夜し、そのまま僕の下宿で寝込んでしまい気が付いたらライブは終わっていたという苦い思い出がある。何べん考えても愚か者の行動としかいいようがない。しかし、しかしである。あえて言い訳させてもらうと、頭脳警察の解散を認めたくない、その事実をライブを見ることで、当然その中のMCでパンタが解散の話をするだろうが、それを聴いてしまうと本当に終わるということを認めたくないので、麻雀を口実としてライブに行かなかった、いや行けなかったと自分では思うようにしていた。ちょうど、甲斐性のないばくち打ちが女房が今にも死にそうだと使いが来たにも関わらず「畜生、ちくしょう」といいながらばくちを打ち続けたという「路傍の石」のエピソードにちょっと似てるような気がする。いや、全然違いますか、ね?

 というわけで、75.12.31をもって頭脳警察は解散。パンタは76年にビクターのフライング・ドッグ・レーベルから『Pantax’s World』という、自身のペンネーム(著作権登録名)をアルバム・タイトルとしたソロアルバムを発表。これが、凄かった。バックに今は亡き塩次伸二やウィーピング・ハープ妹尾(同じフライング・ドッグ・レーベルだった関係からか次の『走れ熱いなら』にもセッションで入ってる)が参加したブルース・ナンバーがあったり、チャーがギンギンに弾きまくるロック・ナンバーがあったり、ホーンセクションがパンタックス・ホーンという名称で義理の兄である故板谷博、D大OBの向井滋春、小野広一、清水万紀夫などの面々が目一杯吹きまくって厚いサウンドを構築している。全7曲、すべていい。とりわけB面が好きでひところは毎日聴いていた。

 「俺が天気のいい日、道端のパーラーに一人で腰を下ろしてジュースを飲んでいたら、それまで眺めていた全世界がキチガイ病院だったということが分かった」という橋本治の解釈で有名な、そして最後のほうで繰り返されるモールス信号の意味は「あなたのサイクルをこちらのサイクルに合わせてください」という意味だと教わった時の衝撃はいまだに忘れられない、名曲「マーラーのパーラー」つまり「マーラーズ・パーラー」略して「マラパラ」、長州小力が得意なのは「パラパラ」、マイ・ベイビーは「バラバラ」と、こういうことを書いていったら切りがないのでやめるが、その「マーラーズ・パーラー」のリハーサル・シーンが登場する。バンドは不知火(ギターが鈴木匠、あとは全部陽炎と同じメンバー)。パンタも久しぶりのリハのせいか、いまいち声が出ていない。リハーサルじゃなくてリハビリだというジョークが出たのはここだったか。



 「マーラーズ・パーラー」について書きだしたら、エビセン体質(その心は、「やめられない、とまらない」 by 山下洋輔)になってしまうので、次のナンバーに行く。あああ、「フライデイズ・フライト」だ。この曲はPANTA&HALのライブ・レパートリーの中でも盛り上げに使われた軽快なロックンロール・ナンバーで個人的には大好きだった。前に書いたインタビューの時に「ヒット・チャートを日本とアメリカで狙ってる」とパンタが言ったので「『フライデイズ・フライト』をシングル・カットしたらいい」と提案したが、「うーん、ああの曲ね」と軽くダッキングされてしまった。しかし、78年に良く聞いたこの歌を再度聴けるようになるまでざっと30年かかるとは夢にも思わなかった。だって録音されたのは2007年に発表された『宿便』あ、日本語表記じゃなかった英語だった、『CACA』だ。パンタのファンになるという事は「忍耐」という宗教の苦行僧になることと同じだというのは『クリスタル・ナハト』予告編シリーズで再三体験したのでここではもう繰り返さない。

 で、久しぶりのライブだからまずはご挨拶からという、聴きようによってはやや弱気なスタイルではあったが、観客は生のパンタが見られればやはり満足なんだろう。初台DOORSでのライブが映される。曲は「キャット・オン・ザ・トップ(本人の英訳)」、早い話が「屋根の上の猫」だ。先ほど書いたパンタックス・ホーンがニニ・ロッソ風に聞こえなくもない少し長めのトランペット・ソロから始まり、「ワン・ツー・スリー・フォー」というパンタのカウントと同時に怒涛のロックサウンドが響き渡ったあの『Pantax's World』の1曲目だ。ちょっと驚いたのは、この時のステージ・アクションが70年代に見たときとほとんど変わってなかったという事。「変わらないという事と止まってるって事は違うんだよ」というパンタの言葉が聞こえてきた。

 えー、ここまで書いてきてまだ半分行ってません。本当はソロで「ライラのバラード」をやるところまでは書こうと思ったけど、今日から花の夏休み、たった3日しかない貴重な夏の日を終日PCでいいのか。海に行けばきれいなおねーさんたちが水着でおいでおいでしているかもしれない。山に行けばキャンプファイアーで危険な夏の恋が生まれるかもしれないというのに、オレは還暦を迎えたロック・バンドのオッサンの話を延々と書いていていいのだろうかという疑問がわいてきた。幸い今日は13日の金曜日、頭脳警察らしい日ではないか。この場に注目されているすべての市民・学生・労働者のみなさんへ、僕の夏休みが真に自由に解放されるまでこのエントリーを一時中断します。ああ、疲れた。


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