書き忘れたがクリスのドラムは強烈だった

 今日は日曜日ということで、先日見た「坂田明&ちかもらち/ジム・オルークと恐山:内乱の内覧」(しかし、長いイベント・タイトルだな。しかも主催は「坂田明の世界を楽しむ会」と、こちらもやや長い名前だ)のライブ・レポートを書こうと思っていたが、なかなか時間が取れなくて、ついこの時間(只今22時50分)になってしまった。しかも明日は、今年の2月に亡くなった伯母の家の荷物の整理に延岡まで車で行かなくてはならず、せっかくの休み前の夜更かしが出来ないとというやや厳しい状況の中でレポを書き始めよう(って、何を気取ってるんだ、オッチャンいい加減にせえよ、堪忍、堪忍、キャイン、キャイン)。

 思い込みというのは怖いもので、ライブの前日まで、正確に言うと夜の10時を過ぎるまで、19時開場、19時半開演だと思い込んでいた。会場のメディキット県民文化センターというのは僕の家から車で15分から20分かかる場所にあるのだが、19時に現地集合なら18時に仕事を終えて軽くメシ食って十分間に合うと考えていた。しかし虫の知らせというか、ナニゲニ前日の夜ライブのチラシを見ると、そこには開場18時30分、開演19時となっているではないか。早速チケットを手配しているY尾君に電話して、とにかく何としても18時半過ぎには、現地に集合しようと確認しあった。僕は、場合によっては会社から直接車で会場に行くことも考えたが、配偶者が18時過ぎに家に戻れば会場まで車で送ってくれるというのでお言葉に甘えることにした。えてしてこういうことは後で高くつくことが多いのだが、そこは神ならぬ身のdrac-ob、いささかも憂えることが無かった、などとちょっと大仰なことを書いてしまった。

 当日、忙しく電話やメールをしている会社の同僚達の冷たい視線を左右のフットワークで軽快にかわしながら、18時丁度に会社を出た。配偶者に電話したら15分以内に戻って送るとのことだったから、急いで家に帰り、珍しく揃って帰宅していた子供二人からも「また訳の分からないライブに行くと~?」と、やや不満げな声を後頭部で聞き流し、服を着替え万全の体制で待った。待ったが18時15分を過ぎても配偶者は戻ってこない。外は大分暗くなり始めている。まずいな、今から自分の車で行ったほうが正解じゃないだろうか、と考えていたら玄関のドアが開いた。お帰りなどというのももどかしく、すぐ彼女の車に乗り込んだ。夕方の帰宅ラッシュが始まっている中、車は一路ライブ会場に向かった。会場に着いたのは18時35分くらいだったか、駐車場から駆け足で会館の階段に向かった。Y尾君に電話したら、彼も今会場の階段を登っているところだった。

 受付にはライフタイムのマスターと香月さんがいた(ちょっと余計な話だが、最近香月さんがキレイになった。アレはきっとオトコが出来たに違いないと不良中年オジサン達はこのところ話し合っている。いや、別段それでどうこういうことは何も無いのだが。やはり余計な話だったな)。チケットを見せて、受付を済ませると案内の人がホールのドアを開けてくれた。正面にステージが見えた。前回BAHOを見たときは演劇ホールといって客席数が1112席(今、HPで調べたので間違いない。以前のエントリーは見た感じで1400~1500くらいのキャパと書いたが、実際はそれよりはやや少なかったようだ)もあったが、今回はイベントホールというところで客席は300席。お客さんも適度に入っていて、いい感じである。予想以上に若いお客さんが多い。ステージの方に歩いていくと、前から3列目の席がまるまる空いていたので、その中央あたりに陣取った。目の前にマイクとPAがある。手を伸ばせばステージに届きそうな位置である。開演までに10分以上あったのであたりを見渡したり、携帯でエントリーを送ったりして時間をつぶした。開演5分前にブザーが鳴った。そして19時丁度にブザーが鳴ると同時に客電が落ちた。え、時間通りに始まるの、と一瞬戸惑ったがステージ左袖からメンバーが出てきた。

 やたら大柄なベース、痩せてスキンヘッドのドラム、緑のカーディガンを羽織ったおたくっぽいギター(ジム・オルークだ)、そして背の低い坊主頭でちょび髭のサックス吹き。坂田明御大である。街中でこういう集団に会ったら、間違いなく視線をそらし一切のかかわりを拒否したくなるだろう。しかし、ここはライブの会場だ。お金を払ってこのような異形な集団を見に来ているのだ。物好きだなオレも。てなことを考えていたら、坂田明がドスの聞いた声でメンバー紹介をしていきなり演奏が始まった。坂田明に対しては大変失礼であるが、かれこれ30年近く前に、とあるオールナイトのジャズ・イベントで一緒だった女の子が「豚のいななき」と形容した強烈なサックスは相変わらずだ。あ、説明しておくとその女の子と僕は一切関係が無い。何もないったらない、無かったのだ。もういいじゃないか、昔の話は…。

 サックスが息をどうしたらそこまで続けられるのかといいたくなるくらいの、パワフルなブローを炸裂させ、ドラムは硬い音でビシバシリズムをキープする。ジムのギターは、フレーズとかコードとか一切弾かずに、なんというかハーモニクス奏法みたいな、フィンガリングが独特なこれまで聴いたことの無いような音を出している。手を見ると丸くて指も短そうなのだが、フレットからフレットまで、どうやったらあんなに指が伸びるのかといいたくなるくらい、まるで魔法でも見ているような演奏スタイルだった。そうそう、ベースはウッドベースだったが、途中から音が聞こえなくなって、奏者もベースを椅子に立てかけてシールドやアンプのチェックを始めてしまったのは残念だった。

 それまで強烈に響いていたサックス・ギター・ドラムの音が瞬間的に止まり、坂田が頷いて演奏が終わった。時計を見たら20分以上の演奏だった。ベースのPAがおかしいと坂田のアナウンスがあり、スタッフも出てきてしばらく調整していたがようやく音が出て次の演奏が始まった。次はちょっとスローな曲だったが、ここでも坂田のサックスとジムのギターが大活躍。もっともやってるのはフリー・ジャズなので、心地よいメロディとか耳障りのいいサビとかあまり出てこない。出てこないというか、積極的にない。音楽を楽しむというより受け取りようによっては苦行というか修行に近いような気がするが、こういうのが好きだからしょうがない。もっとも毎日聞きたい音楽ではないが。

 会場のお客さんも結構この手の音楽が好きなようで、特に後ろの席にいた二人組みはやたらイエーとかサカターとかイケーとか叫んでいた。各自のソロ・パートに来ると、温かみのある拍手が自然発生的に出てきたりして、会場はなかなかいい雰囲気だった。もっとも僕の右側に座った家族は、ご夫婦とお子さんという3人連れだったが、お子さんがどうみてもまだ小学4,5年生くらい。退屈しまくって一部の途中でぐっすり眠ってしまった。ご夫婦はノリノリで、それはまあ結構なことだが、あの子は多分ジャズは一生聴かなくなるんじゃないかと余計な心配をした。

 演奏の合い間に坂田がトークを入れるのだが、独特のだみ声とユーモアで笑わせてくれる。今回のイベント・タイトルは「坂田明とちかもらち」になっているが、皆さんよーく見てください。「ちからもち」=力持ちではなくて「ちかもらち」なんですよ。これは坂田いわく「私の息子の娘、ま、その孫っていうんですけどね、その子が『ちかもらち~』と叫んで、じゃそいつをバンドの名前に頂こうと…」。この話を聞いて、ふと思ったのはフリー・ジャズいやフリー・ジャズに限らずインストゥルメンタルな曲の題名の意味とは何かということである。坂田がメジャー・デビュー(と、いう表現が正しいかどうか分からないが、いわゆる注目を集め始めた時期)したのは山下洋輔トリオだが、そこでもバンマスの山下が「グガングガンと始まるから曲名が『グガン』」とか「その曲が出来た意味は逆から読んだら分かる『クナトンナ』」とか「どうしても曲名が決まらず、苦しんでいたら坂田が学生時代に覚えていた単語が苦し紛れに出てきて『ミトコンドリア』」などと、あまり曲名には意味が無いというか単なる符丁だという見解を出していた。そんなものかなぁ、と単なる聞き手は考えてしまうのである。もちろん深い意味をタイトルに求めてしまうのも、これは「誤読の権利」であるから、この権利は今後も主張させていただくことを、この場で公然と宣言する、って何を力んでるんだオッサン。

 第一部のラストは、ギターのジム以外は全員訳の分からないパーカッションというか風鈴というか、ねじ回しみたいな器具をリズム楽器に使い、さらには坂田がハナモゲラの逆襲かとでも言いたくなるような、聞き取り不能のボーカルを入れたおどろおどろしい演奏だった。多分この演奏が「恐山」なのだろう。一部が終わる前に、CDを全員買うようにという「命令」もあり、休憩時間にのぞきに行った。結構いろんなCDやDVDも出ていて、僕はジムのタイトルは忘れたが大学のなんたらかんたらという名前のアルバムが1500円だったので、手元不如意なれどこれくらいだったら買えるなとチェックした。

 第二部も怒涛のごとく始まった。今度のセットは前回以上にフリー・ジャズの度合いが強く、いやフリー・ジャズというより実験音楽か、もうアンサンブルとかソロとかそういう次元ではなく、それぞれが自分のパートで強烈な自己主張をしていた。もっともベースだけは相変わらず音が悪くて、ソロも全くなし。というか、このグループの奏でる音にウッドベースでは力弱いのではないか。チラシにはエレキ・ベースの即興演奏で名を馳せたとあったので、エレキに持ち変えるのを期待したが最後までウッドベースだった。この第二部で特筆すべきはジムのギターだろう。まともに弾いたのはコンマ1秒も無いくらい。左手にビニールの手袋をはめて、ボトル・ネック風の音を出したり、ギターを顔の前に立てて弾くのでてっきりジミ・ヘンのように歯で弾いてるかと思ったくらいだ。そうそう、後半で見せてくれたドライバーの根元を使った演奏が特に凄まじかった。昔からガイジンがドライバーを使うというのはプロレスで覆面レスラーの常套手段だったが、今ではギターの奏法になっているとは思わなかった。

 実は、ジム・オルークは映画「実録 連合赤軍」で初めて聞いて、その独特のサウンドとメロディに興味があったのだが、まさかここまで前衛的な演奏をするとは思わなかった。何を隠そう、今日は大慌てで「ユリイカ」と「インシグニフィカンス」を聞いたのだが、これも先日のライブとは全然別人28号。どちらも大変良いが、個人的には「インシグ~」のロックぽい音が気に入った。

 ライブはあっという間に終わり、アンコールの拍手が響いた。数分後、全員がステージに戻り、坂田がマイクをジムに渡して「これからはジムのワンマントークの時間です」。いや、驚いたのは流暢とまではいかないが十分聞けるニホンゴでメンバーのダーリン・グレイ(ベース)との出会いの話や、いかにフリー・ジャズが好きで坂田の音楽を尊敬しているか、そう、時間にして5分以上は話したのではないか。坂田の話でも東京のライブ・ハウスに坂田を尊敬しているミュージシャンが来ていると聞いて、行ってみたらジムで、何と坂田自身も忘れていたワハハ時代のLP(そういえばチャクラの小川美潮と一緒にワハハというグループを組んで『死ぬときは別』なんてアルバム出していたな。久しぶりにチャクラの「福の種」が聞きたくなった)を出してサインしてくれといわれたなどのエピソードを話してくれた。

 アンコールも無事に終わり、坂田御大のCDトーク「CDを買うと聴かなくちゃいけないなどと思うことがいけない。そういうのが重荷になって買わなくなる。聴かなくていいんです。買って、そのCDを裏返しにして部屋に飾るなんてのもいい。仏壇に飾ってもいい。もっといいのは10枚、20枚買って畑の周りに吊るしておくとカラスが来ないから、来年は豊作間違いなし」などというありがたいお言葉を頂き、更には「サインもします」との言葉に力を得て、CDを買ってサインをもらいエントリーに写真をアップしようと思ったのだが、腹を空かせたY尾君がそそくさと会場を出たので、誠に残念ながら僕とジムの会話は成立しませんでした。いや、会ったら一度、なんでアメリカ人なのに若松監督の映画を全部見ているのか聞いてみたかったのだが。

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コメント

とりあえずCDを注文してみました

Jim O'RourkeってSonic Youthにも在籍してたのですね。いや、全然知りませんでした。所謂、Noise系のミュージシャンでもあるようで、何だか得体の知れない人ですね。まぁ、ちょっと興味を持ったので、「Mimidokodesuka」オソレザンを注文してみました。取り敢えず、Free JazzもNoise系もそこそこ嫌いじゃないので…。

昨日からずっとジム・オルークの

CDを聞いています。聞けば聞くほど吸い込まれていくというか、彼の世界に嵌って生きます。ライブの時は、その凄まじいギターワークに圧倒されたのですが、今聞いているCDはとてもメロディアスで彼のボーカルもいい味出してます。そうそう、「実録 連合赤軍」のサントラも9月に発売になった様です。あのサントラにも坂田明のサックスが入ってますね。今月はゲルピンだけど、何とか手に入れようっと。

こんばんは。
「ちかもらち」ってそっちでもライブがあったんですね!
京都のライブに僕も行きたくてその2~3日前まで行くだったのに、仕事に追われ行けませんでした。
drac-obさんのレポートを読み、やはり無理を押しても行くべきだったと後悔してますが、後悔してもどうしようもないです。
ジム・オルークの「ユリイカ」と「インシグニフィカンス」は素晴らしいですね。他のアルバムもけっこう持ってるのですが、残念ながら即興もののアルバムはそんなには聴けません・・・。あとは「ハーフウェイ・トゥー・ア・スリーウェイ」を揃えれば、大丈夫だと思います!

12月のライブが楽しみですね

もりさんのエントリーを読んでいなければ、もしかしたらこのライブはパスしたかもしれません。丁度同じ時期にブラジルのミュージシャンや大野エリのライブなどもあって、そちらにも色気を持っていたので…。しかし、あの「ユリイカ」のジャケットと映画「実録 連赤」の音楽が良かったことが決め手でライブを見に行く決心をしたのですが、今更ながら行って良かったと思っています。

惜しむらくはベースが本調子でなかったこととウッドベースだったことです。エレキベースでズンズン絡んでいたらもっと最高だったような気がします。お勧めのCDもチェックしてみます。ありがとう。
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ジム・オルークの夜

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