はた迷惑な性格、こりゃ直らんな

 ようやく、少しずつだけど元気が出てきた。このところの憂鬱な気分は一体なんだったか、深く考えるのは止めにして、逆に何故元気が出てきたかを考えてみた。答えは簡単だった。僕は怒ると元気が出るという基本的なことを忘れていたのだ。怒る対象は何でもいいが、あまり風呂敷を広げてもしょうがないので身近なことを怒るようにした。今日はランチタイムに怒りが爆発した。

 外回りの仕事をしている人間にとって昼飯の問題は大事である。これは外回りに限らないが、内勤オンリーだと弁当、出前、コンビニ惣菜などとバリエーションが限られる。いや、本当はそうではなく内勤における昼飯の問題も奥が深いことは百も承知だ。出前を取るにしてもその店は何曜日が定休日かしっかり押さえておかないと、「今日は大福亭のちゃんぽん、この1点で勝負っ」と燃えていた気持ちが電話の呼び出し音のあまりの長さに、おかしい、そんなはずはない、ここの店人気があるからたまたま注文が混んでいて電話を取れないのだ、などと必死で思い込もうとしてみるものの、頭の中からもたげてきた恐るべき疑念、ひょっとしたら今日は水曜日、定休日では無いか、いや間違いない、と分かったときの落胆。心は、いや全身が今日は大福亭のちゃんぽんを食べて、それも最初は半煮えみたいなキャベツを一気に放り込みガジガジかじりながら、丼の中央部に割り箸を突っ込み、それを持ち上げるときの充実感のある重さ、割り箸がブリッジしながら健気に麺と具を持ち上げようとするその光景、そこにきらめく湯気と胡椒の香り。

 さあ、その状態が今日は再現不能だと分かった瞬間、一気に朝日屋のカツカレーなどと方針変更できる奴に、ろくな奴はいないというのが僕の人生哲学である。つまり一点突破全面展開でないとイカンということだ。いや、ちょっと違うな。これがダメならアレがある、あれがダメでも次がある的な植木等的あるいはドン・ガバチョ的無責任出前取りの法則も、確かに一理あるが、九州男児はそのような浮気症ではダメなのだ。いや、本気の浮気はいい。いかんのは遊び半分の浮気で、って、なんだか話がそれたような気がするので、もう一度外回りの昼飯について話を戻す。

 外回りの昼飯というのはたいてい時間に追われていて、まともに12時から13時の間に取ることは無い。いや、もちろんその時間にしっかりランチタイムを取る計画的な人も多いだろうが、僕は基本的に人が混むその時間帯は避けて13時から14時の間、ひどいときは15時過ぎにお昼を食べることも多い。もっともその時間帯になると、お店が限られてくる。ファミレスとかチェーン店のお店で無いと開いていないことが多い。今日は13時にアポイントがあったので、珍しく12時前に食事を取ることが出来た。もっともアポイントの場所の近くでゆっくり食べられるのはファミレスだけだったので、あまり好きではないがその店に車を入れた。

 僕がファミレスをあまり好きでないのは、マニュアル的対応しか出来ない店員の応対が嫌いだとか、メニューが代わり映えせずどの店に入っても同じだとか、凶牛肉じゃなかった狂牛肉やわけの分からない野菜や肉を食べさせられるのが不愉快だとか、そのような理由ではない。もちろん今上げた理由も多少はあるが、一番の理由は読むものが無いということに尽きる。随分前に書いたエントリーに新聞読みながら食事していたら見知らぬ人から注意されたという話を書いたことがあるように、僕は活字を読みながらものを食べるのが大好きなのだ。これは行儀とかマナーとかに照らすと大変いけないことだというのは十分分かっている。しかし、親元を離れた18の歳からずっと活字を友として生活していた人間としては食事中に読むものが無いと淋しいのだ。いや、子供のしつけに良くないから、家族で食事するときは読まない。読まないが我が子二人はしっかり父の遺伝子を受け継ぎ、食事のときに活字(正確に言うとマンガだが)を読むのが大好きでいつも配偶者に怒られている。不憫だと思う。思うがそんなことを言うとこちらにミサイルが飛んでくるので父は沈黙するのだ。

 まあ、ファミレスに読むものは無い(これも正確ではないな。無料の求人誌や、たまにタウン誌なんかが置いてあったりするから)と、分かっているので僕は車のキャビネットにたいてい文庫本や新書を入れてある。もっとも昼の時間に食べながら読むのでせいぜい10数ページ読んで終りなので、ここ1ヶ月はずっと殿山泰司の「三文役者のニッポン日記」を読んでいる。まだベトナム戦争が行われていた、日韓条約が批准されるかどうかといった60年代の日記だが、中身は嫌になるくらい21世紀の今日この頃と変わらない。「政治が悪い」とか「物価が高い」とか、「悲惨な事件が多い」とか読んでいてこれは一体何時の出来事かと錯覚してしまうくらいだ。もちろん、泰チャン独特の筆致で読みやすいのだが、内容は大変暗い。一度きちんとエントリーに書いてみようと思う。

 というわけで、車をファミレスの駐車場に入れて片手に駐車券、片手に文庫本を持って店に入ると12時少し前なのに席はがらがらだ。僕はいつも指定席にしている2人がけのテーブルに座りランチを注文した。何時ごろからそうなったか、はっきり覚えていないが随分前はウェイトレスの人がお絞りとお冷をもって来てくれたのに、今ではセルフサービスである。お絞りは紙ナプキンである。紙ナプキンにはインクがにじむから、その上に文字や絵を書いてはいけない。おっと、それはどうでもいいか。ぼんやり待っていてもお冷もランチ用のスープも誰も運んでくれないので自分で取りにいった。片手にコップ、片手にスープカップを持って自分の席に戻ろうとしたら、誰か座ってる。結構年配の男の人だ。透明なビニール傘を片手に持ち、じっと前を見ている。僕がテーブルを間違えたかと思ったが、殿山泰司の文庫本が置いてあるので間違いない。ナンだ、このオヤジはと思って、じっとにらみつけた。

 僕の視線に気が付いたオヤジは僕を見つめて、ん?という反応だった。こちらはもう一つ目に力を入れて、更にテーブルの上の文庫本に視線を移しもう一度オヤジの目を睨んだ。するとオヤジは、あらら、すまんなというような表情をして立ち上がった。僕が先に座っていた席だと理解したようだ。しかし、そのあとの動作にちょっと僕は驚いた。テーブルは沢山あいているのだから、普通は離れた席に座るのでは無いかと思ったが、なんと僕の隣の席に座ったのだ。もしかしたら話好きのオヤジかもしれん、という予感がした。僕は食事時に知らない人から話しかけられるのは大嫌いなのだ。いや食事中に限らないが。こういう奴はシカトに限ると思い、僕は席に座るとさっさと本を開いてそちらに集中した。隣のオヤジは僕に何か話しかけようとする気配があったが、僕は真剣な顔をして60年代の諸問題に取り組んだ。

 2,3分したらパンパンという音がした。何も殿山泰司の本を読んでいたからといって「在日米軍を相手にした売春婦」のことではない。純粋に手を叩く音だ。横を見るとオヤジが両手を叩きウェイトレスを呼んでいた。テーブルにボタンがあるのに手を叩くというのは何事だと思って見ていると、席に来たウェイトレスに「今日のおすすめは?」などと聞いている。ウェイトレスの反応を見ると、どうやらこのオヤジはなじみというかしょっちゅう来ているような感じだ。ランチのメニューの内容を聞き、オヤジは注文した。僕は本に戻ったらまたパンパンという音がした。オヤジがまたウェイトレスを呼んでいる。追加注文かと思ったら「水」などといってる。「セルフです」といわれるかと思ったら、ちゃんと水を持ってきた。それから目の前をウェイトレスが通るたびに手を叩いて何事か話しかけた。ウェイトレスも嫌がらず、笑顔で接客している。こりゃそうとうなファミレスの常連だと思っていた。

 そうこうするうちにお昼のピークが来て、客足が伸びてきた。僕とオヤジの座っていたテーブルの前をダブルのスーツを着て汗を一杯かいた中年の男性が歩いてきた。その足が止まると「いやぁ○○さん」とオヤジに声がかかった。どうやらオヤジと顔見知りらしい。オヤジの左のテーブルに座った男はオヤジに「いや、あの案件はですね、その、やはり、相続が、そういうときは意固地にならずに、裁判はソンですから」などと熱心に話しかけている。男のダブルのスーツの胸元にひまわりのバッジが付いていた。あれ、弁護士?弁護士がファミレスでメシ食ってるんじゃねえよ、などと不良パンク中年は急に怒りがこみ上げてきた。二人の話を聞くとも無く聞いていると、どうやらオヤジの財産分与か何かのことを弁護士がいろいろアドバイスをしているようで、どうもこのオヤジは結構な資産家のようだ。

 横で日替わりランチ525円ドリンクバー付を食べていた僕は無性に腹が立ってきた。こらこら、ここはお前らが出入りするようなとこじゃないんだ。イッパン大衆、ジ・オーディナリィ・ピープルが集って、限られた時間にエサを掻き込んでいくとこなんだよ。いや、もちろん、コーヒーや紅茶もあるよ。ただコーヒーはほとんど出がらしで紅茶はティーバッグ(TEA BAG)だ。まことに残念だが若いオネーチャンのティーバック(T-back)ではないのだ。お前らだったら昼間っからてぃーばっくのオネーチャンのいる店に行けるだろうが、などと最後のほうはいささか逆恨みの誤爆めいたが、貴重なランチタイムにわけの分からない資産家オヤジと弁護士男の二人を見ていたら、無性に腹が立ってきて、それと同時になんだか元気が湧いてきたのだ。こういうのを典型的な反権力意識というのだろう。いや、違うな。ビンボー人のヒガミだ。

 いずれにしてもちょっと元気が出てきたので、またエントリーを書き殴っていきます。応援ヨロシクお願いします。

スポンサーサイト

コメント

ジ・オーディナリィ・ピープル

ホテルニュー越谷 by スネークマンショーですか(笑)。

どもです。
タイちゃん、イイですね。
ワタクシもちくま文庫のほとんど持っております。
竹中直人が演じた「三文役者」も面白かったです。

明日まで大阪でオシゴトです。

ムカツクおやじ

コメントはお久しぶりでございます。
福岡西方沖地震があった年(2005年)の6月に、福岡県主催の防犯セミナーに行った時のことです。
平日だったけど、友人と一緒に会社を休んで行ったのですが、最前席に座った私らの後ろに、偉そうな親父が部下らしき人と来ていました。
彼は、セミナーが始まる前は、偉そうにでかい声で部下たちと話していましたが、いざ、セミナーが始まるとあくびの連発。確かに専門的だが知っていることも多く、若干退屈な話ではありましたが、大地震もあったことだし、曲がりなりにも防災に興味を持ってセミナーに参加しているんだろ? いったい何しに来やがった、こいつ(怒)と、うざったく思ってましたが、午後からの講義には彼らの姿はありませんでした。ざまあ・・・いや、あ~あ、最後にあった講義が一番面白かったのに、残念ね。
で、思ったのでありました。
あのおっさんはどっかの会社にいる天下りで、多分暇つぶしにセミナーに顔をだしたんだろうと。しかし、それなりの歳を経た紳士であるべきおっさんが、セミナーに出席して講義聞きながら大あくび(それも声付き)連発とは。あのオッサン、ずっと、こんないい加減な感じで血税から高い給料をもらい、挙句すごい額の退職金をゲットして、天下った今も楽してロクに仕事もせずに(多分会社ではフリーセルで時間を潰しているんだ)高給を得てるんだろうな、と勝手に想像したら、だんだんムカついてきてしまったのでしたとさ。

いえ、キンクスの「ソープオペラ」です

75年に出たキンクスの「ソープオペラ」というアルバムが好きで良く聞いていました。ストーリー仕立てになっていて、自分をロック・スターだと思い込んだ主人公が、一般人の生活を演じるという非常にややこしいストーリーのアルバムでした。そのアルバムの中に「THE ORDINARY PEOPLE」という歌があり、レイ・デイビスらしい皮肉の効いた詩で、それ以来「一般人」という単語を見聞きするたびにこのメロディが流れてきます。もちろん僕も 「THE ORDINARY PEOPLE」なんですが…。
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A006710/VICP-64254.html

イカさん、また大阪出張ですか?

結構頻繁に行かれるのですね。僕は地域密着の仕事をしているので、出張できる人が羨ましくてたまりません。大阪といえば串かつにたこ焼きにうどんと美味しいものが多いし、真昼間からヨッパライが路上に寝ている場所もあるし、刺激的ですな~。

そうですか、イカさんもタイちゃんのファンですか。あの人の文章は独特で、一回はまるとやみつきになりますね。僕のブログも最初の頃はかなり影響受けてます。いや、あの「キャインキャイン」とか「オッチャン、かんにんしてえな」とか、自分で言っておいて自分で突っ込む例のパターンです。もっと役者としても、ミステリファンとしても、フリージャズファンとしても、そして文筆家としても再評価されるべき人だと思います。

そうでした、燐さんも怒りをパワーの源に

している人でしたね。しかし、その手のクソオヤジはあちこちにいますな。黙っていればいいのに口を出したり、態度で物語ったり、あるときは他人を叱ったりすることで自分の存在価値を上げよう、認めさせようとする俗物です。あわれなのは、そんなクソオヤジの腰ぎんちゃくを演じざるを得ない部下の人たちです。この構造だけはどうにもならんのかなぁ。

いや、そんなことはない。せめて自分のブログでその手のクソオヤジ糾弾エントリーを書いてやることで、シンパを増やして何時の日か全日本クソオヤジ放逐同盟を結成するのだ(自分が放逐される側にならないよう気をつけようっと。あ、根っからのルンペンプロレタリアートの僕には余計な心配だった)。

キンクス

いまさらながらの返信ですが、
実は私10年前に渋谷公会堂での来日公演を見ておりまして、
その後まとめてCD再発があったこともあり、アルバムはほぼそろえております。

「30歳まではフー、30歳過ぎたらキンクス」というのが個人的な信条です。

でもねー
RCA時代は正直よくわからんです(笑)。
(「不良少年のメロディ」は好きですけど)

今日は自宅で作業だったので
BGMにRCA時代のアルバムを続けて聞いてみましたが
曲やフレーズは確かに覚えてるのに曲名わかんなかったり
このアルバムにこんな曲入ってたっけってのの連続。
まとめ買いしたアルバムってそういうものですが。
特に「ソープ・オペラ」はどうにも入り込みにくいアルバムで……。
歌詞カード読むべきでしょうか。

やっぱりパイやアリスタ時代のほうがいいなあ。
あ、一番好きなのは「フェイス・トゥ・フェイス」と「サムシング・エルス」です。

あります、あります、そのパターン

中・高生のころ、つまり小遣いが不自由だった頃はアルバム1枚買うのも必死だったし、そもそも感受性がまだまだ若かったので、ビンビンに音にはまりましたが、社会人になりある程度まとめ買いなどできる様になると、当然1枚のアルバムに対する集中力、さらには1曲に対する執着心が薄れるせいか「あれ、この曲はこのアルバムだったっけ」みたいなことはしょっちゅうありますね。この前はRCの「指輪をはめたい」を試聴で聞いて、いい歌だなと感心したら棚の奥からアルバム『OK』が出てきて、あれこれに入っていたのかと愕然としました。

「ソープ・オペラ」歌詞読んだほうがいいですよ。すごく笑えます。

ああ、暑くてコメが振るわないのだ。

余談ですが、ソープオペラって、メロドラマのことですよね。
それから捩ったのが、スペース・オペラ。
面白いですね。

ところでソープ・ランドっていうのは

ミツワやギュウニュウとかカオウなどといった有名石鹸メーカーが作ったテーマパークかと思ったら全然違って、いわゆる「個室付き特殊浴場」のことです。老婆心ながら補足説明とさせて頂きます。

真面目な話、ソープオペラの語源というか謂れは、TVの昼メロのスポンサーが石鹸メーカーが多かったためそう呼ばれたと聞いています。なるほどなぁと当時受験勉強にいそしんでいた身の上ですが、このようなことばかり覚えてしまい肝心の単語や公式はすっかり消えてしまった悲しい歴史があります。

それにつけても日々の暑さよ!
非公開コメント

プロフィール

drac ob

Author:drac ob
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

FC2カウンター

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

QRコード

QR

鳩時計

フリーエリア

ブログ内検索