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インターナショナル・マン

西藤さんは流石に僕の名前を正確にしかもミスター付きで書いてくれた
 と、いうことで昨日のエントリーの続きなのだが、「ジンゼン結婚式」というのは「人前結婚式」のことで、式に参加している全員が承認して結婚という契約が成立するということらしい。確かカトリックの結婚式だったか、似たようなのがあって牧師が「この結婚は皆さん全員が承認しないと成立しません。一人でも異議のある人が居たら流れます」などという説明を、サークルの後輩で今はD大学の学生課のエライサンになってるらしいK君の結婚式のときに聞いたことがある。確か83,4年の頃ではなかったか。当時のサークル時代の先輩・友人・後輩が結集して式に参加したのだが、牧師のその説明を聞いて、全員で「ナーンセンス」と叫んで、結婚式をめちゃくちゃにフンサイしてやろうと根回しをしたが、皆さん立派な社会人におなりで、そのような「ボーリョク学生」がやるようなことには誰一人乗ってこなかった。非常に残念だった。

 などと、話がまたあらぬ方向に行きそうで、その結婚式で賛美歌を歌ったあとは、銀閣寺の今は無きサーカス&サーカスの跡地にできたCBGBとかいうクラブでパーティをやったとか、そこにD大の職員(良く考えたら新郎の同僚なので当たり前だが)が沢山来ているのにアジをやったバカが居た(あ、オレだ)とか、そのあとは黒潮丸だったか串八だったか座敷で鯨飲鯨食をして、それでも物足りなくて北白川の天下一品までタクシーで行ってチャーシューの大を食ったとかいう話になりそうなので止める。って、十分脱線した話を書いているのだが。

 まあ、久しぶりの結婚式で過剰な演出も無く、新郎・新譜の人柄が浮かんでくるいい結婚式だったのではなかったか。5,6年前に勤めていた会社の社員の結婚式に行ったことがあったが、そのときは新郎・新婦のこれまでの人生をビデオじゃなかった、スライドで上映されて、それぞれにストーリー仕立てになっており、ああ、こうやって見ると「Every Dog Has His Day」というのは単なることわざではないのだなぁと思うこともあったのだ。ちょっとこのあたりの表現が曖昧なのは、リアル社会に関わるので、ちょっと自粛しているのだ。ま、そんなことはどうでもいいか。

 ところで、いつからかは知らないが結婚式の料理は持ち帰りが出来なくなった。少し前は食べきれないほどの料理が出されて、その大部分は持ち帰り用になっていたが、食中毒を懸念してかテイクアウトせずにこの場で全て食べろなどというアナウンスが流され、さてそうなるとメインのタイの塩焼きをどのようなタイミングで食べるかが喫緊の課題として浮上した。と、いうのも僕は結婚式の料理で一番好きなのがタイの塩焼きで、しかもそれは冷めていることが条件なのだ。少し冷たくなった固いタイの身を箸でつまみ、皮と一緒に引っ張ると、サクッという感じで切り身が取れる。皮の部分には荒塩がかかっており、そのまま口に放り込んで噛むとほのかに感じる玄界灘の潮の味…。

 で、楽しみにしていたタイの塩焼きは出なかった。大層不満であった。その不満を抱えたまま時計を見ると17時半近い。会場に入るときに今日は途中で抜けるからと、新郎や会社の連中には断っていたが、一応自分のテーブルの人たちに会釈して、それでも引き出物の袋はしっかり持って、死んでもヒキデモノを離しませんでしたと木口古兵がって、もうそれはいいか、早足で会場から去ったのであった。配偶者に17時40分には車で迎えに来るよう、その際に着替えも一緒に持ってくるよう頼んでいたので、ケイタイを鳴らした。出てきたのは下の子で「どした?結婚式もう終わった」などとのんきなことを言う。聞いてみるとまだ自宅から出ていないという。コノヤローせっかくのライブに遅れたらどうする、と怒ってすぐ来るよう伝えた。
手前のアコギがオープニングのバラードを飾った

 車が来て乗り込み、バックシートで礼服から普段着に着替えていると、何となく自分がビートルズのメンバーか何かで、「ア・ハード・デイズ・ナイト」のワンシーンみたいだと思った。それだけ気分がハイになっていたんだろう。雨が降っていたが、車はスムーズに流れ会場時間の18時を2,3分回ったところでH高時計本店に着いた。受付にはM原さんがいて、Y尾君はもう会場に入っていると教えてくれた。階段を上がって2階にいくと仮設ステージの前に椅子がずらりと並べてあり、Y尾君は前から2列目のベスト・ポジションを取っていてくれた。階段を上がったところに即席のドリンクバーが出来ていたので、そのことを教えると早速ワイングラスを2つ持ってきてくれた。

 ところで、この日に見るフランシス・マバッペ・トライブは全く先入観なしというか、情報もしらず、西藤大信は若手ジャズ・ギタリストというくらいの認識しかなかった。しかし、そんなことはどうでもいいと思えるような圧巻のライブだった。18時半を回ったところでMCが入り、すぐにミュージシャンが登場した。サックスの背の高い白人、ドラムのちょっと小柄な白人、そしてイケメンの我がポンニチ代表の西藤大信、最後に登場したのがふっくらというよりがっしりと表現したほうがいいベース兼ボーカルで今回のグループのリーダー、フランシスだ。最初にメンバー紹介を西藤さんが当然日本語で行う。ピーター・ガブリエルと競演したというところに僕はちょっと興味を持ったが、まさかジェネシスみたいなプログレ系の音では無いだろうと予想していた。

 1曲目はフランシスがアコギを手に取り、ステージ中央に置いてあった椅子に腰掛け爪弾くところから始まった。彼はアフリカのカメルーン出身でその国の子供たちのことを歌った歌だと西藤さんが説明してくれた。メロディのきれいなバラードで、言葉は全然分からないが胸に染みてくるものがあった。ふと、下地勇を始めて聞いたときのことを連想した。しかし、バラードが終わってからはリズムの嵐だった。とにかくベースがうねるというか、グルーヴするというか、ビンビンなのだ。声は意外に高いがキンキンするような声質ではないので聞きやすい。ベースを弾きながら歌うというのは、ジャック・ブルースというか(我ながら、たとえが古いなぁ)、最近ではスティング(ってスティングも相当古いが)などが有名だが、どっちかというとスティングみたいな声の感じです。あ。説明してもしょうがないので彼のHPでかなり試聴できるので聞いてみてください。

 西藤さんのギターはテクニックに走ることなく、エモーショナルな音色をかなで、ドラムはアフリカの打楽器だろうか名前は分からないが、不思議なビートを叩いている。サックスは何となく無表情というか、癖のないところがこの人の個性なんだろうか。いや素直に耳に入ってくる音だ。そうそう、何曲か演奏を聴いているうちに頭の中に「アイランド」時代のキング・クリムゾンが浮かんできたのだ。ドラムはイアン・ウォーレスでサックスはイアン・マクドナルドではなくメル・コリンズ時代のクリムゾンだ。一体どこに共通項があったのだろうか。今考えてみると不思議な連想だった。

 何曲目だったか、カメルーンのリズムをフィーチャーした曲をやった。聞いてビックリ、沖縄のリズムそっくり、チャンプルーズだ。もっとも一言でアフリカのリズムといっても沢山あるとMCで話があり、変則5拍子のリズムや、何じゃこのリズムはという摩訶不思議なものもあった。共通して言えるのはバンドのリズムの切れのよさ、特にエンディングの思い切りの良さ。突然、終わるのだ。一切の余韻無く。ところで、今日のライブはチケットの要らない、いわゆるフリー・ライブなのでせいぜい1時間ちょっとだろうと思っていたが、何と前半1時間休憩入れて後半1時間というみっちりライブであった。これには感謝感激した。

 休憩時間にトイレに行ったのだが、2階のトイレが多かったので1階に下りた。するとそこに西藤さんがいた。そばで見るとやっぱりイケメンである。つまりオレにとっては不倶戴天の敵である。ルックスが良くて楽器も上手い。天は簡単に二物を与えると心の中で毒づいた。しかし、二物ではなかった。彼の作曲能力に驚くのに時間はそうかからなかった。畜生「Message to you」みたいな素晴らしい曲も作れて、演奏できて、しかもあの外見だよ。世の中どこか間違ってると、もてないオトコのひがみはエンドレスに続くのだった。

 休憩も終わり、後半のステージが始まった。お客さんは立ち見を入れて100人ちょっとだろうか。いい具合に会場も暖まり、後半は1曲目からノリノリであった。そういえばフランシスが何か話すと西藤さんがそれを日本語にするのだが、ステージ途中で「今日は通訳の西藤大信です」という自己紹介は受けた。それとフランシスの「ゲンキデスカ?」という日本語はアントキの猪木の真似だろうか。一体誰が教えたのだろう。客席から「元気でーす」というレスポンスが嬉しいのか「ゲンキデスカ?」を何度か連発した。

 セットリストはどういうものかさっぱり分からなかった。ほとんど全てフランシスのオリジナルだったと思うが、西藤大信のオリジナルの「Message to you」は素晴らしかった。彼のギターも指とピックを交互に使い、曲に陰影をつけていたがフランシスのボーカルが一段と素晴らしかった。楽しいライブは時間が早く過ぎてしまう。ラストナンバーは全員大乗りの演奏で、古びたフレーズだがまさしく客席とステージが一体になった熱い演奏だった。最後のメンバー紹介が終わり、ステージから彼らは去っていった。しかしアンコールの手拍子は鳴り止まない。僕も久しぶりに両手が痛くなるまで叩き続けた。PRIVATEと書かれたドアが少し開いた。フランシスたちの笑顔が見えた。アンコールナンバーはその日のどの演奏よりも熱く素晴らしい演奏だった。曲が終わった瞬間多くの人が立ち上がった。自然発生的スタンディングオベーションだ。実はブログ用に写真を撮ろうとデジカメを用意していたのだが、会場の雰囲気を壊しそうで遠慮していた。しかしアンコール前あたりでどうにも我慢できず隠し撮りした。アンコールが終わったときは、もう知ったこっちゃないと堂々とカメラを向けた。
隠し撮りのためアングルが良くない

 ライブのあとに物販スペースが設けられ、CDを買ったらサインが貰えるというのでフランシスのCDと西藤さんのミニアルバムを買った。本当はドラムの人のCDも欲しかったのだが、その日結婚式の祝儀で財布がほとんど空だったのを忘れていた。もっとも最初の2枚を買うにもお金が足りずY尾君に借りたのだ。フランシスがやってきてサインをしてくれた。思わず「'S Wonderful, 'S Marvelous」と叫んだら、ニッコリ笑って「Marvelous?Thank you」と答えてくれた。また名前を書いてくれるというので僕の名前をローマ字で言ったら、丁寧にサインしてくれた。そのCDはFM TRIBEの1枚目でライブでもやった「INTERNATIONAL MAN」、「NEED SOMEBODY」、「AFRICA」などが入っている。しかし「インターナショナルマン」のカッコよさったらここ最近聞いたことが無いな。

 西藤さんのCDは、「Message to you」の入っているミニアルバムを購入した。こちらもサインしてもらい、そのときに「『Message to you』はCDでは女性ボーカルが歌ってると言ってましたが、あの曲は絶対男性ボーカルがいいと思います」などと余計なことを言ってしまった。西藤さんは「そうですか、まあでも聞いてみてください」と大人の対応だった。家に帰って自分の発言の愚かしさを知り、土下座コメントを彼のHPに書くことになろうとはそのときは全く思わなかったのだが。

 実はこのエントリー、後日談がありその翌日仕事である外国の人と会った。用が済んでナニゲニどこの国から来たかと聞いたら「トリニダードトバコ」という。「ああ、スティールドラムの国」といったところ、知ってるのか、音楽好きなのかという話になり、好きどころか昨日はフランシスのライブに行ったと話しをしたら、なんと西藤大信もよく知っており、シークレット・ギグも良くやったなどと言い始めた。えーと、名前出しても大丈夫かな、スティールドラムのプレイヤーでカリブ音楽のプロデューサーをしているガイさんというお方だった。いやー、宮崎狭いわ。そうそう西藤さんも宮崎は小林の出身なのでみんな応援してや。
アンコールが終わって全員で拍手 フランシスは「ゴッドブレスユー」と一言



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コメント

お久しぶりです。

1つだけ・・・
鯛の塩焼きはいいですね。
私もあれがでない披露宴は気持ちさめます。
ドンだけいやしいねん、私。

ええっ?dahliaさんもタイの塩焼きが

お好きですか。そうですよね。やっぱり「めでたい」というくらいだから、結婚式にはつき物ですよ。当節のモノを知らない連中が勝手にタイを料理に入れてないんでしょう。えびは要らないからタイを出せと、式場の人にクレーム出したかったくらいでした。

mixi離れてから初めてのコメントありがとう。これからもおバカなエントリーにお付き合いのほどを宜しく。たまには近況を教えてくださいね!

無題

> ふと、下地勇を始めて聞いたときのことを連想した。
> 何曲か演奏を聴いているうちに頭の中に「アイランド」時代のキング・クリムゾンが浮かんできたのだ。

フランシス・マバッペ・トライブ
聞いたこともない音なのにこの辺でなんとなく共感できちゃう私って何(笑)。

ピーター・ガブリエル

ジェネシス以降のキャリアの方がすでに長いのに、やはりあの時代の印象が強い人が多いですね。
ユッスー・ンドゥールとの関係は有名ですが、彼はアフリカを含めてワールド・ミュージックの普及にはかなり力を注いでいる人です。
南アのアパルトヘイトに反対した運動家、スティーブ・ビコに捧げた曲もありますし、アフリカとはかなり縁の深いミュージシャンですね。アフリカという所にかかわると、人権問題には目をそむけてはいられなくなるのでしょうね。

かくたさん、ナイスコメントありがとう

そうなんです、それが音楽の持つ魔力なんでしょうね。実は、板橋カルテットのライブを見て、あまりに圧倒的な音の前ではどんな言葉も無力か、などと考えていました。しかしこのライブを見て、いやそんなことはない、エントリーに書いて一人でも多くの人に知ってもらいたいという気持ちがあれば、自ずと言葉は出てくるということを再認識しました。

しかし、下地勇とアイランド時代のクリムゾンで、音のイメージを連想できるかくたさんって普段はどのような音楽を聴いているのか、気になりますね。

ジェネシス時代のピーターは

今一、好きでは無かったです。ステージパフォーマンスの写真を見ても、どこか飛んでるおじさんみたいだったし、大学入って最初に買った2枚組みも「ブロードウェイに羊が出る」などというわけの分からない音と歌詞で頭痛くなりました。でも、なんといってもジェネシスは彼のバンドだったし、フィル・コリンズもピーター・ゲイブリエル(などと書くとちょっと気取った感じですが)がバンド辞めたから仕方なく歌ったら意外と良かったという棚ボタですからね。

アフリカ、凄いところだな。

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ご紹介ありがとうございました

早速訪問してコメント残して来ました。年齢も同じみたいですが、こちらと違って真面目な方のようで、ギャグが通用しないのでは無いかとやや心配しています。ま、毎度おちゃらけた話しか書けない僕としては、ああいう書き方を学ばねばいけないのかと反省しています(もっとも反省だけならサルでもする、と言われますが…)。
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Author:drac ob
1975年5月から1981年3月まで、眺め続けた景色から時代と文化が見えてくる。混迷と停滞の時代を撃つ、はずはない。

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