加川良がやって来た、去年に続いて。

ステージで熱演する加川良とすぎの暢

 細かな部分は違っていたが、大枠は予想したとおりだった。もちろん大いに満足である。満足であるが、何か物足りない気がするのは贅沢というものだろうか。何の話かというと昨日の加川良ウィズすぎの暢のライブのことである。去年のライブは僕たち夫婦とこのブログにたまにコメントくれるderiさんご夫婦、都合4名で参加したのだが、今年はderiさんのご主人の都合がつかず、その分たまにこのエントリーにも登場する高校の頃からの友人のS君を誘った。当日は我が配偶者は早めに仕事を休み開場時間の6時過ぎにはderiさんと一緒に席を確保しておく手配になっていた。僕とS君は仕事の都合もあり、6時半くらいにライブハウスの入り口で待ち合わせる予定にしていた。

 夕方の5時過ぎに外回りを終えて会社に戻り、事務処理をしていたらすぐに6時を回ってしまった。まだ仕事をしている連中に「お先に」と声をかけて車に乗り、家路を急いだ。配偶者はもう出発したかと思い携帯に電話するがつながらない。自宅に電話したら下の娘が出て、『ハハはもう出かけたが、おとうも出かけるのか』と聞いてきた。『そうだ』と答えると声のトーンが上がった。そりゃそうだろう。週末の夕方にうるさいことをいう親が二人していなくなるのだから、バカ娘二人にしてみれば天下を取ったようなものだろう。家に帰りつくと満面の笑みをたたえた上の娘が「Sさんから電話があって、遅くなるらしいとお母さんに言ってた」などと告げる。服を着替えて、ライブハウスまでは家から歩いて10分くらいなので、そのまま歩いて向った。途中S君に電話したら急な用事が入ったが7時半くらいには行けるとのことだった。

 歩き始めて気がついたが、その日は朝から激しい雨が降ったり止んだり、途中ぎらぎらの太陽が出てきてキツネの嫁入り(いわゆる天気雨という状態)になったり、妙な天気で夕方6時過ぎだというのに結構暗くなっていた。6時半くらいに会場について、配偶者からチケットを受け取りお店に入ると、客席はは3分の1くらいの入り。ざっと3~40人くらいか。ステージ間近のテーブルを見ると、アロハを着た背の高い人がいた。Tasaki。さんだ。丁度一年ぶりの再会を祝い、立ち話を少々。延岡から友人3人で来て、本日もライブ終了後の打ち上げまで居るとのこと。拙ブログも読んでます、あの時代の話が哲学的に書いてあるなどとお世辞を言われて恐縮した。延岡にはちょくちょく行くので、次は教会に遊びに行きますと約束して別れた。

 自分達のテーブルに戻るとderiさん、あまり元気がない。なにやら朝から体調が悪かったが、加川良のライブだからと無理して出て来たらしい。会場を見渡すが客の数はあまり変化がない。主催のWさんが去年の6割くらいと言っていたが、会場の半分から前にしか人がいない。僕が買ったチケットの通し番号は98だったので、前売りで100人くらいは来るはず。しかし現状はどう贔屓目に見ても50人が関の山だ。宮崎には日向時間という悪しき風潮があり、時間にルーズな人が多い。もう少し客が入るのを待ってライブが始まるだろうと思っていたら、いきなり何人かが拍手をしたので振り向くと、黒い人影が2人並んでステージに進んだ。加川良とすぎの暢だ。初っ端から二人で演奏するのだとわかった。

 僕の予想では最初は加川良が一人でやって、休憩後に二人でやるのだろうと思っていたが、そんなことはどうでもいい。「1年ぶりに寄せてもらいました。次に来れるのは10年後だと思っていたんですが…」とMCが入り、すぐに歌が始まった。去年のライブは宮崎初ライブだったので、かなりMCが長くて多かったが今年は2度目ということでどんどん歌っていく。「贈り物」や「アイ&アイ」などと一緒に今回聞きたかった「駒沢あたりで」もやってくれた。最初の30分くらいで一気に走っていった感じだ。すぎの暢が拍手を受けてステージから下がり、加川良が一人で弾き語りを始めた。最初、何の曲か解らず、ぼんやり聞いていたのだが、印象的なフレーズが。「生活の柄」だ。アレンジをちょっと変えているので、高田渡の歌い方と全く違う。しかし、一人で歌っているので、ここはコーラスで協力しなければ男が廃る。♪あるき、つかれては、くさにうもれてねたのです。あーるきつかれ、ねたのですが、ねむれーないのです~野太いオジサンたちの声が響く。Tasaki。コーラスグループは元より会場のほぼ全員が歌ったのではないか。

 前半のステージのMCで印象的だったのは、やたら宮崎を持ち上げてくれたこと。前日は鹿児島だったがお客の反応は冷たいものだった、などとローカルナショナリズムをくすぐるようなことを言う。「しかし、宮崎、すごいですね。もう、ほんと、そのまんま宮崎ですわ」と、彼独特の表現でくすぐりを入れてくれる。「それというのも、あの知事さんのおかげ。もう、東さんに足を向けて眠れません。いや、いっそお東さんとお呼びしたいくらい」などと言って笑いを取り、その後ぼそっと「浄土宗か」と呟く。僕はこういうテレというか、一人ボケ・ツッコミが大好きなのだ。

 弾き語りは3曲で終わり、客の年齢層を考えたWC休憩に入った。時間は7時50分を過ぎていた。S君に電話するとすぐにつながり「悪い、悪い。あと5分くらいでそっち着くから」とのこと。会場のWCの前のベンチに座ってS君を待っていると、いろんな人たちがWCを利用しに来た。皆さん、結構いい年齢である。中には、え、ここ銀行だったっけと思わせるような七三にビシッと髪を分けた人もいた。ぼんやりそんな風景を眺めていたら、アポロキャップを被り、大きな声で関西弁で喋るオッサンが来た。一番前に居た客の一人で、加川良から「サクラ」と言われ「兵庫県から来てるんですよ」「昨日も居ました」「その前も居ました」などといわれた、熱狂的なファンの一人のようだ。その足取りと口調から結構アルコールにやられてるのが分かった。WCを済ましたオッサンは「ええホールや、うん、ええホールや」と独り言を言っていたかと思うと、受付の女の子に「こんなええホールつぶしたらアカンで」などと言いはじめた。昔の僕だったら「いらん世話じゃボケェ」とケンカを売っていただろうが、そこはそれ、最近とみに人間が出来てきたというか、丸くなった、いや体型じゃないって、人格がだ、えと、つまり、こういう発言や行為も、まあお酒のせいだとか、旅したときに訪れる日常からの開放感で、普段はこのオッサンも抑圧された悲しい人民の一人なのだ、ということが解って来たので、あえて黙殺した。

 待つこと10分、ようやく階段を登ってくる足音がした。やっと来たかと思い、そちらを見ていると、なんと身長は170くらいあるだろうか、ナイスバディのロンゲのおねーさんがやってきた。しかも一人だ。思わずまじまじと見つめてしまった。相手は僕の視線に気がつき「何、このスケベオヤジは」みたいなシカト光線を返してきた。思わず僕は、「いや誤解です」と言ってしまいそうになった。いやほんとに目立つ女の人でした。何でミュージシャンはいい女をゲットできるのか、という、これはもうロックやフォークを聞き始めて以来の大難問を考察していたら、S君がやってきた。お前のせいでヘンタイ扱いされかけたと文句のひとつも言いたかったが、時計は8時を過ぎており、そろそろ後半が始まりそうだったので、チケットを渡して席についた。

 後半はすぎの暢が一人で始めた。名古屋の民族楽器だという「ミンミン」を引いて1曲演奏した。3本線のギターみたいなものと説明があり、音的には琉球のサンシンに近い感じがした。しかし「ミンミン」といえば、あの激動の70年代に「王将」と、その中華大衆料理界の覇を京都で競い、一時期は支店の数も結構いけてたのだが、王将の「ギョーザ無料券」ばら撒き攻勢や、「開店記念日、ビール大瓶無料サービス」、「真夏のご飯大盛りサービス」などのゲリラ戦法に破れ、哀れ、今は一部に名を残すのみとなったはずだが、今は形を変えて楽器界に殴りこんでいるのか、などと考えてしまった(いや、絶対違うと思うが)。すぎの暢はその後もリズムボックスを使ってスティールギターを演奏したりしたが、ちょっと興味は持てなかった。「A LIVE」での村上律のボーカルを最大限生かす演奏を聴いていただけに、余計ちょっとしゃしゃり出すぎじゃないの、という感想は拭えなかった。面白かったのは「炭坑節」を英語バージョンでやり、元歌に気がついた客が手拍子始めて、一緒に歌いだしたらぼそっと「やはり、皆さん、こういう歌は良くご存知ですね」と一言。思わず笑ってしまったが、九州だから炭坑節という安易なセレクションじゃないだろうな。

 ようやく加川良が再度登場して、また二人の演奏が始まった。「幸せそうな人たち」の中のフレーズ、♪生まれたときから僕たちは滅びて行く道の上にいる~、このフレーズは胸に沁みた。第二部というか、後半の部は一気に名曲が続いた。「オレンジキャラバン」も「ラブソング」(3枚目のアルバム「アウトオブマインド」の1曲目で、あのアルバムが名盤であることの証明のような曲です)も、アレンジを少し変えていたので最初は「?」という感じだったが、やはり加川良の生の歌声が乗ってくると格別である。そして今回のステージのハイライトはなんといっても、ややロックぽいアレンジの「教訓Ⅰ」。二人で立って歌い、演奏するのだがエンディングですぎのがジャンプした、と思ったら、なんと、加川良も飛んだ。確かに飛んだ。5センチくらいだったが。そのまま「胸にあふれるこの想ひ」になだれ込み、客もクラップハンズで参加し、さながらフォークコンサートのようであった。

 いよいよライブも終わりますとMCが入り、昨年同様そのままアンコール。「皆様のお手を煩わすことはございません」と、中高年をいたわる優しいコメントの後「さあ、何をやろうか」と言った途端「流行歌」とかみんな思い思いの曲のタイトルを叫ぶ。僕は「こんばんはお月さん」といいたかったしTasaki。さんは「下宿屋」といいたかっただろう。しかし決めるのはあくまで加川良自身なのだ。「高知」が始まった。そしてラストナンバーを歌った加川良は「おやすみなさい」のコメントを残してステージを終えた。

 ちょっとそれ風なことを書くと、最初から音のバランスがあまり良くなかった。特に後半が始まったら加川良のギターの音がハウってしまし、何度か御大がマイクから離すが止まらない。「音を下げて」とミキサーに言うが一向にハウリングが止まらず、最終的にはモニターを切ってようやく止まったとか、照明の演出がダサかったとか、まあ多少文句を言いたいところはあるのだが、おおむねいいライブだったといえるのではないか。しかし、どこか物足りなかったのは何故か。ライブが終わった後、僕たち夫婦とderiさん、S君とで飲みに行ったのだが、その時deriさんが「すぎのは要らなかった。去年のようにギター一本のほうが良かった」と言っていた。僕は、二人でやったほうが音が広がるし、特にすぎののコーラス、ハモリはいいと思っていた。ただ去年はじっくり加川良の歌が聞けたが、今年はちょっと曲の数が少なかった、というかあまりMCもなく、淡々と演奏を続けたステージの進め方に違和感があったのか。

 確かに楽しかった。2年連続で加川良を見れたことは、以前だったら考えられないことだった。でも、何かが引っかかる。解った。去年はほとんど予備知識無しで聞いたが、今年は「A LIVE」を聞いたり、「ユーズドエンド」を聞いたりして、自分の中で勝手に作った演奏イメージがあったのだ。それがリアルの加川良の演奏と微妙な違いがあったので、脳が受け入れることが出来なかったのではないか。考えたらファンの勝手な思い込みだよな、などと結論付けた。でも来年もまた見たいので、ライブハウスを出る前にWさんに「また来年もお願いします」と勝手なお願いをしてしまった。

 実はこの後、4人で居酒屋に行き大いに語り、そのときの話のほうが圧倒的に面白いのだが、ちょっとブログにするにははばかれるようなネタが多いため、ここで終わる。しかし、配偶者と一緒に飲みに行くもんじゃないな。deriさん、今度は二人きりで行きましょうって、ダンナさんに怒られるって。

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コメント

今回の良さんのMCでは、私も、
「浄土宗か」
の、マイクから離れながらの控えめな一言にやられました(笑)

加川良のMCは独特のユーモアセンスを

持ってますよね。爆笑というのではないが、クスッと笑った後に毒が回ってくるというか、昔、筒井康隆の短編小説に「信仰性遅感症」というのがありましたが、その感覚に似ています(罰が当たりそうですが)。

来月は山下洋輔がオーケストラと一緒に「ラプソディインブルー」をやるし、11月はカルメン・マキのおねーさまがやってくるし、ああ、予算の確保をしなければ…。

大阪と同内容ですね

 7月に私が大阪八尾で見た時とほぼ同内容ですね。すぎのが炭坑節歌うのも、MCがプライデートに比べて少なかったのも、生活の柄を歌ったのも。そして、兵庫県の人はきっとその時も一番前のほうに座ってきたのでしょうね。
 大阪ではそのまま打ち上げがそのライブハウスで行われたようですが、なかったようですね。私は去年のライブの様子からして、常連さんの中にぽつんといるような感じになるのが見え見えなので行きませんでしたが・・・・。

ユーズドエンドツアー2007

というタイトルで巡業したようなので、セットリストなどは同じだったのでしょうか。そういえば曲の進行によどみが無く、流れるように進んでいったのは、予めきちんと曲順から何から決めていたからでしょうか。HPの掲示板を見ると、熱心なファンが今度のツアーでは「偶成」をやってくれとか書き込んでいたので、僕も事前に「こんばんはお月さん」のリクエストを書いておけば良かったかも知れません。

打ち上げは無かったのでしょうか。Tasaki。さんの日記にも、後片付けに来た加川良と話をしたことしか書いて無かったです。

ありがとうございましたっ。

加川良、堪能しました。体調は思わしくなかったのだけど、ライブが始まる頃には、元気になっておりました。けっして元気がなかったのではなく、じーーーっくり聴き入っていたのでありました。彼の詩は、とってもストレートで、ピュアだなぁと思います。人柄がそのままうたに滲み出ている感じがするのです。好きだなぁ・・やっぱ。
人生の旅人ですよね。私もそろそろ白秋に片足突っ込んでしまいましたが、彼のライブに身を置くと、なんだかまだまだ楽しく生きていける気になりまする。
ありがとうございましたっ!・・・・っとそれから、ご友人のSさんに失礼なことばかり言いまして、反省しています。すんまそんとお伝えください(^^;
来年もよろしくっす!

詩がいいんです!

旅の歌や放浪の歌、そして女の一人称で歌う歌、一歩間違うとド演歌の世界になってしまうけど、全てが加川良ワールドの詩なんですね。それをギター一本でハミングしながら歌うのがまたいいんです。

あの翌日に配偶者から、「加川良の詩はわからん」と言われたのでCDをかけていたのですが「ボブマーレーが死んで山の上に行って水が欲しい、っていうのがどこがいいと?」と言われ、おめぇに食わせるタンメンはねぇ、じゃ無く、おめぇに解る加川良の詩はねぇと言ってしまい、家庭内が大変不穏な空気に包まれました。

あ、S君は女の人と話せたらそれで満足な人だからドントマインドです。また機会があれば一緒に騒ぎましょう。

打ち上げは…どうだったんでしょう。
良さんが引いた後、お客さんもスーと引いてしまって、
遠方から来られたファンの人たちが残っているだけの感じでしたね。
私は一緒に出かけた友達がサインを貰いたいというので、
良さんが片付けに戻ってこられるまで待っていました。
サインとか貰う人も、2、3人のようでしたね。
終わった後の盛り上がりも昨年からすると今一だったのかも?

我らも早々に駅に向かいました。

去年は結構サインを待ってる

お客さんも多かったような気がしました。僕もユーズド2を買ったので加川良のサインは欲しかったのですが、配偶者が腹を空かしていて機嫌が悪かったので、そそくさと店をでてしまいました。たしか去年はニューレトロで打ち上げがあったんですよね。そういえばTasaki。さん、日記を掲示板にしてしまったので、去年の名文が読めなくなって困っています。そのうち過去ログとして復活させて下さい。
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