告井軍曹、或いは告井教授の3.14ライブ・レポート その3

 「じゃこれね」と言って弾き始めたのは”In my life”。ビートルズが初期の荒々しいロックン・ロール・バンドから一歩進化したアルバム『ラバー・ソウル』に収録されているジョンの名曲。この曲の間奏部分はちょっとバロック的でお洒落。高校時代の合唱コンクールを思いだす。何故か。ここのちょっとチェンバロっぽいメロディーが課題曲の間奏部分に挿入され、クラスのほとんど全員がいいメロディだと感心した。ということは当時はまだこの曲を知らない人が圧倒的だったのか(笑)。メロディもいいがジョンの歌詞もいい。まだ20代の若者だというのによくも人生を悟ったような歌詞を作れたもんだ。まあ「ヘルプ」の歌詞も「恋を抱きしめよう」の歌詞もそうだが。

告井ライブ

 「それでは初期のビートルズの曲を何曲かやって最後にしたいと思います」。ついに来てしまった。そうなのだ。楽しいライブの時間も終わりが来る。いつまでもショーの時間を楽しんでいたいが、物事には始めがあれば終わりもある、それが人生ってものなのさ、などとニヒルを気取っている余裕はなく、最後の最後までライブを楽しむぞと体は前のめりになる。初期のナンバーと言うとあれはもちろん、これもやるしそれもやるし、いやいやぜってーあの曲は外さないはずとほとんど代名詞だらけになりながら待っていると、「じゃデビュー曲」と言いながら「ラブ・ミー・ドゥ」を弾き始めた。ビートルズには珍しいちょっと黒っぽいサウンド。

 「この曲は1位になれませんでした。アメリカでは後で1位になったけど、イギリスでは最後まで1位になれなかった。この後の曲はほとんど1位です。先ずは初めての1位から」といって始まったのはもちろん「プリーズ・プリーズ・ミー」。前回のライブではこの曲を微分積分してくれた。説得力ある話だったな。立て続けに今度は「フロム・ミー・トゥ・ユー」である。♪ダララー・ララ・ラン・ラン・ラー、ダララー・ララ・ラン・ラン・ラ~ってコーラスが斬新だった。この歌で前置詞の”from”と”to”の使い方を教わった気がする。僕の英語力、そのようななものがあるとしたらビートルズとS&Gとドン・マックリーンのおかげだな。そして次はもちろん「シー・ラブズ・ユー」である。以前のエントリーにも書いたが「アイ・ラブ・ユー」か「アイ・ワズ・ラブド・バイ・ユー」だったポップスを3人称の”She loves you”にすることで、歌に奥行きが出来た。私と貴方だけの世界に彼女や彼がいることを認識させ、2人の世界から全世界を獲得したのがビートルズだった。などと書くとちょっと昔のアジビラっぽくなるか(笑)。そして「抱きしめたい」。”I wanna hold your hand”を「抱きしめたい」と訳すのが的確かどうかは高嶋さんにまかせておけばいいか、今はこの軽快なロックンロール・ナンバーを楽しみたい。



 告井軍曹が突然歌い始めた。” Well, she was just seventeen You know what I mean And the way she looked was way beyond compare. How could I dance with another Oh, when I saw her standing there” ここまで歌って突然止めてしまう。「えー、勢い余って歌ったわけではありません。ここまで演奏(や)りましたが、ここまではベースと歌だけです。ポール・マッカートニーはこの曲をベースを弾きながら歌う。これはなかなか難しいことです。当時、ベースを弾きながらのリード・ボーカルってポール・マッカートニーくらいしかいなかったんじゃないかと思います。珍しいですね、普通はギターを持って歌うものです」。どうやら告井軍曹の、いや告井教授の最終講義が始まったようだ。しっかり聴いておこう。会場のみんながステージに注目した。

 「ドラマーでボーカルってのはいましたが、ベーシストでボーカルというのは当時ほとんどいなかった。こんなめんどくさいことやりながら(と言いながら「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」のベース・ラインを弾く)歌うってのは。ビートルズが好きになった若者たち、僕らはすぐビートルズのコピー・バンドを始めるわけです。で、これがベースを弾きながら歌わなければならない。これが大変なんです。そんならギター弾いてる人、ギターはこういうフレーズなので(といってちょっと弾く)、簡単だからギター弾いてる人が歌えばいいじゃないか。と、なりそうなものですが、それはダメなんです。ビートルズのコピーバンドって言うのはギタリストとかドラマーとかベーシストっていう、そういう役割はないんです。担当楽器はないんです、ビートルズのコピーバンドには。あるのは担当人物。」、ここで会場に笑いが起こる。担当人物、なんだそれという空気。

 「例えばビートルズのコピーバンドやってる人に聞いてみてください。『何やってるの』っていうと相手は『うん、ジョン』」。一同大爆笑。「ギターじゃないんだ。ジョンなんだ」という声が上がる。「そういうことなんです。そうでなければビートルズのコピーバンドではないんです。ビートルズと同じことをやって、人前で演奏するとなんとなくビートルズになった気分になる。これがビートルズのコピーバンドの本質です。ただビートルズの曲を演奏(やって)るだけじゃ、ビートルズのコピーバンドとは言えないんです。それほどまでにあのお兄さんたちになってみたいと。ビートルズのコピーバンドってのはビートルズごっこなんです。なんかどっかでビートルズになった気になる。それが楽しいんです。さあ、それでは最後の曲。ロックンロールの名曲です。これを4人揃ってやってみたいと思います」。1-2-3-4の掛け声とともに「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」が始まった。ポールのベースに、生涯一リズム・ギターのジョン、そして途中で「カモン・ジョージ」の掛け声とともにジョージのリードも同時に弾きまくる。圧巻のサウンドに会場は大興奮。そして演奏が終わり「” I saw her standing there”。お疲れ様でした~」といって告井軍曹はステージを降りた。



 ステージを降りてすぐにアンコールの拍手にこたえて再登場。「さて、ちょっと面白いことやってみようか。”And I love her”って曲あるけど、あれは途中で半音上がるんですよ。ギター1本でやるときに半音上がるととっても大変なんですよ。ギターで半音上がると大変で、コードがこういう風に(とやってみせて)、さ、そこをどういうふうにやるかよく見ていてください」というアナウンスに続いて、ちょっと切ない「アンド・アイ・ラブ・ハー」を弾き始める。そして半音上がるところは、なんだこれは、ああなるほど、コロンブスの卵だ!!!で、ここは種明かししない。いったい告井軍曹はどうやって半音上げたのか、あなたの街の近くのライブハウスで是非自分の目で確認してほしい。「ではもう1曲」と言ってギターのフィード・バック音がした。そう、「アイ・フィール・ファイン」である。エレキギターでないと表現出来ないと思いこんでいた音をアコギでいとも簡単にやってしまう。これは一種の魔法だ。

 「ありがとうございました。お疲れ様でした」といって告井軍曹はステージを降りた。最初7人の客で始まったライブは、そのあと3人ほど増えて、それでも10人。たった10人の客に対して一切手を抜かず、たっぷり2時間、ビートルズナンバーを聴かせてくれた。そして我ながら呆れてしまったのだが、全曲、僕はライブの間、口ずさんでいた。歌詞を全く忘れて居た曲もあったが正確なギターの音色であっという間に思いだすことが出来た。ああ、オレ、やっぱりビートルズ好きなんだと実感。そうそう、ライブの帰りにソファでくつろいでいた告井さんに話しかけた。その時に実は今日はセンチがはっぴいえんどの曲をカバーしたレコードを持ってきてサインを貰うつもりだったと話したら、告井さんが「あれはいいだろ」と力強く答えてくれた。さらに横にいたスタッフも「あれは最高ですよね。僕も持っています」と言ったので固く握手。告井さんには次回もライブ楽しみにしていますといって分かれた。

 エレベータを降りて、今見たライブの話をしながら帰り道についた。そうそう、I上さんとはFacebookでお友達になり、今後は何かあればメッセンジャーで連絡しますといって分かれた。それ以来、何ら音沙汰もないしメッセージを送っても反応がない。ブロックされているような気がするが、気にせず我が道を行くのが僕のエライところである、シクシク。

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