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告井軍曹、或いは告井教授の3.14ライブ・レポート その2


 「じゃ10分か15分くらい休憩します。あ、それから後ろのほうにCD持ってきてます。今日、演奏(や)った曲も入っているし、どんな曲を演奏しているか見るだけでも楽しいですよ」という挨拶をして告井軍曹は奥のボックスに行った。休憩時間、インターミッションである。僕はこの時間帯を利用してI上さんに告井延隆がいかに素晴らしいミュージシャンで日本のロックに偉大な足跡を残した人か延々と話しを、なんてパターンで行くと、当然若いおねいさんには嫌がられて今後2度と一緒にライブに行く機会が無くなることを重々承知していたので、まずはファースト・セットの感想を話そうとした。そのこちらの意図を、まあはっきり言うと下心行動委員会の緊急問題提起を軽くダッキングして、彼女は告井さんのところにCDを買いに行った。普段、この手のライブではCDを買わないし、以前は「オレの自慢はビートルズのアルバムは1枚も持っていないことだ」などと豪語していたY尾君まで、いそいそとI上さんと一緒にCDを買いに行ってサインを貰っている。僕は自分の持っているアナログ・レコードかセンチのCDにサインして貰うつもりだったが、アナログは実家に置いたままだし、センチのファーストのCDは押し入れの中の段ボールのどこを探しても出てこない。仕方ないので春一番の4枚組の中でセンチの演奏が入っているCDを持参していた。告井さんにおそるおそる、「昔のCD持ってきたんですけど、サインしてもらえますか」と聞いたら「もちろん、いいよ」と気さくに答えてくれた。

春一番にサイン

 3人で再度テーブルに戻り、それぞれのサインを貰ったCDを確認したらI上さんとY尾君はどちらも同じ告井軍曹のサード、初期ビートルズの曲をメインにしているアルバムを買っている。僕がY尾君なら当然I上さんとは別のアルバムを買って、それを貸しあいすることでより親密になるという大原則パターンで行くのに、アホやなこいつはなどと内心考えていたら、急にY尾君が、「おい、このCD貸してくれ。代わりにこのCD貸すから」と言ってきた。実はY尾君は昔から中山ラビとか山崎ハコとか、あの手の暗い女性シンガーが好きだったのだが、僕の持ってきた春一番のライブにはセンチはもちろん、中山ラビやはちみつぱい、ごまのはえ、さらにザ・ディランに今は亡きエンケンの演奏が収録されていたのだ。もちろん異議なしなので、その場でCDを交換。さてお代わりのジン・トニックも用意して、I上さんにアプローチするかと思っていたら、セカンド・セットがスタートした。告井軍曹、もう少しゆっくりでええんやけど、ほんまに、などと内心ぶつぶつ。

 チューニングを少しやってから演奏し始めたのはオリジナルではシタールの音色が印象的な「ノーウェジアン・ウッド」。演奏が終わり、告井教授の話が始まった。「"Norwegian Wood“、この曲を先ほどの高嶋さんは「ノルウェーの森」と訳しましたが、これは今では誤訳ということになっています。森だったら"Norwegian Woods”だろうと(つまり複数形というわけだ、ま、こんな説明は無用か)。でもこの曲は"Norwegian Wood”。Woodだから木でしょう。こういう(ステージの下を指さして)床なのかテーブルなのか分かりませんが、実はそんなことはどうでもいいみたいです。つまりどういうことかというと、この曲の詞の内容は、あるときナンパした女の子の家に行って明け方まで意気投合していろんな話をして、いざこれからというところで『私、明日早いの、もう寝るわ』と言って寝ちゃった、と」ここまで説明したときに誰かが「それはないわ、そこまでいってそれはない」という大きな声で叫んだ。誰だ、一体と思ってよくみたらオレだった。「うん、それはないわ。だけど置いていかれちゃった、その彼はしょうがないのでバスタブで寝たと。で、朝起きたらやっぱり彼女はいなかった、と。」、ここまで聞いたとき今度は”She’s gone”と切実につぶやいた奴がいた。実感こもってるな、誰やと思ったら、またオレだった。大丈夫かオレ。「ええ、シーズ・ゴーンなんです。それで火つけてやったと。ホントなんですよ、こういう詞なんですよ。だからむちゃくちゃな歌なんですが、この詞の中で” Isn't it good, Norwegian wood”ってフレーズが出てきます。この” Isn't it good,”ってのは『いいじゃん』って意味ですね。ご機嫌じゃないですか、いいじゃんって意味です。ノルウェーの木はいいじゃん、ご機嫌じゃんってこれ意味わからないでしょう(I上さんも「分からない」と首を振っていた、カワイイ、ま、それは置いといて)。これ、もともと” Norwegian wood”では無かったという話なんです。もともとはですね”Isn't it good”=ご機嫌じゃん、”knowing she would”だったらしいんですね。この”knowing she would”の意味は”knowing”、つまり『分かる』ということ、分かる、分かるよ、”she would”であることが分かるよという意味。『シー・ウッド』であることが分かるのがご機嫌じゃないか、って意味です。では『シー・ウッド』ってのは何か」。ここまで聴いた僕は「なるほど」と力強く頷いた。伊達に英文科に6年いたわけじゃ無い、シェークスピアやミルトンは分からないが、もちろんディケンズもオスカー・ワイルドもちんぷんかんぷんだが、この手のエーゴは分かる。分かるんだよ、オレはと思わず絶叫したかったが、そんなことをしたらオレの人格が否定される。誰だ、既に否定されているなどというやつは。



 「英語圏の人たちは”she would”って言うだけでニコっと笑います。で、どういうことかというと、『あの娘、どうなんだよ』って聞いたときに”Yes,she would!!”って言うと『あの娘もその気』って意味になる。だから『あの娘もその気である』ってことが分かる、それが”knowing she would”の意味らしいんです。ところが若干エッチな意味があるので『これはいかがなものか。ジョン、ラジオでかからないかもしれない』、一応向うも放送倫理規定みたいなものがあるので、『ここだけは歌詞を変えてよと、あまりにも直接的過ぎるので』とジョンが言われ、『あ、そう。それだったら♪ノーイング・シー・ウッド、ノーイング・シー・ウッド、ノーウェジアン・ウッド、あれ?これでいいやこれで行こうノーウェジアン・ウッドで』という感じだったらしいです。意味なんかない、単なる語呂合わせだったみたいです。それでノーウェジアン・ウッドになったと。で、もともとこの曲は” This Bird Has Flown”ていう曲だったんです。ジス・バード・ハズ・フローンという歌詞も出てきます。昔はちゃんと曲名の後にカッコして”This Bird Has Flown”と書いてあったんです、今はどうか知りませんけど。だけど歌詞がノーウェジアン・ウッドに変わったことによって意味不明です。でもこの意味不明なところがいいじゃないか、と。詞というものはちょっと意味不明なところが良かったりするじゃないですか。世界がふっと広がったり、何だろうこれはって。何だかよく分からないけどいいな、ノルウェーの木は。わけわからない歌詞だけど前から何でこんか歌詞なんだろうと思っていたところが、実はそういうことだったと知りました。語呂合わせで何とか”knowing she would”を分からせようとした、そういうことみたいです」。うーむ、深い。告井英文学教授の話は実に深い。こんな授業ばかりだったらオレは間違いなくオール優で卒業したはずだが、現実は言語学の岡田妙教授の単位が全く取れず、しかも英作文の、いやいやそんな話ではなかった。



 次の曲はジョージの大傑作である「サムシング」。しかし途中のポールのリード・ベースとも言うべき躍動感をアコギで表現するのは流石告井軍曹である。しかし、教授だったり軍曹だったり忙しいな。情感たっぷりに弾き終えてついに待望の時がやってきた。「ジョージ・ハリソンの名曲ですね。さて、それではこれから何かやってほしい曲があれば、リクエスト・タイムにしたいと思います。何でもやりますよ。出来ない曲も何とか頑張ってやりますから」と懐の広い人だ。会場内は何をリクエストしようかと少しざわついていたその時に一人が声をあげた。「あのー、家族とうちわもめして水曜の朝早く女の子が家出する歌をお願いします。えーと”She’s Leaving Home”」。何だ、回りくどい言い方するやつだな。ん、ちょっと待てよ、「うちわもめ」ってセンチの最初のアルバムの1曲目でシングルになった曲じゃないか。センスのいい奴だな、誰だ。なんだ、オレか(笑)。サージェント・ペパーに入っているこの曲は最初あまりいいと思わなかった。ハープで始まりストリングスもちょっと大げさな感じのバラード。しかし大学の時に輸入盤屋で『第二次世界大戦』というものすごいタイトルのビートルズ・ナンバーのカバーアルバムを購入し、そこでブライアン・フェリーが歌っているのを聴いて、その良さを再認識した思い出がある。アルバム・タイトルは出鱈目だが、当時大人気だったピーター・フランプトンとビージーズが正義の味方のペパー楽団で悪役がエアロ・スミスで「カム・トゥゲザー」なんか歌っていた。この歌は途中の部分で主旋律と取り残される年老いた両親の嘆きのメロディーが重なるのだが告井軍曹は当然完璧に再現してくれる。動画はあの変態的なボーカルが楽しめるブライアン・フェリーを貼っておく。



 「シーズ・リービング・ホーム、しかしなんというステキな曲なんでしょうね。素晴らしい、他、何かありますか?」という投げかけに対して4人組サラリーマンの1人が「アイブ・ガッタ・フィーリング」と叫ぶ。「おー、アイブ・ガッタ・フィーリング。出来るかな、あんまり覚えてないんだ」といいながらも、あのブルース・フィーリングあふれる曲を弾き始めた。この曲でのポールのボーカルが黒っぽくていいんだよね。告井軍曹、快適にぶっ飛ばしていくのだが、曲の後半で「ここから先を覚えてないんだ。すいませんね」なんてエクスキューズしたが、いえいえ、リクエストした彼も満足そうでした。次のリクエストは「ロング・アンド・ワインディング・ロード」。女性の声だったので多分I上さんのリクエストだったか。アルバム『レット・イット・ビー』つながりである。この曲を初めて聴いたときは「ロング・アンド・ワイディング・ロード」と聞き間違えて「長くて広い道」と思っていたが、なんのワインディングだから「長くてくねくね曲がっている道」だと知ったのは高校生の時にカメちゃんのオールナイト・ニッポンで教えてもらった。カメちゃんにはゼップのアルバム『聖なる館』も発売直後に全て聴かせてもらった。その時のタイトルの説明が「せいなる、ってこれはセックスのことではなく『ひじり』のほうのせいです」と教わった。流石にその後ニッポン放送の社長になるだけある。あ、ロンガンワインディングの話だった。歌われている道とはモナリザの背景に描かれている道と関係があるんじゃないかみたいなことを何かの本で読んだ記憶があるが自信がない。

 「えー、次は」の声に答えてリクエストに上がったのは「ゲット・バック」。おいおい『レット・イット・ビー』しばりが続くのかよ。もちろんこのロックンロールの名曲を告井軍曹はジョンのリズム・ギターの癖まで完全に再現してくれる。最後の裏声のところまでそっくりやってくれて「もう少し行きますか」の声に反応してリクエストはまたしても『レット・イット・ビー』からの曲で「アイ・ミー・マイン」。映画の中で突然、ジョンとヨーコがワルツを踊り出すシーンが印象的だった。そうそう、中3の時の担任の先生の家に大学合格の報告を兼ねて同級生と一緒にウィスキーを持って遊びに行ったことがあった。その時にたまたま『レット・イット・ビー』のアルバムを持っていて、そこの家のステレオで流した、この曲を聴いた先生は英語の教師だったが思わず「なんでアイ・マイ・ミー・マインじゃないんだ」とつぶやいていたのが可笑しかった。「アイ・ミー・マイン、忘れちゃったな」とこちらは告井軍曹のつぶやき。すかさず僕が最初のフレーズを歌ったら思いだしてもらったのか演奏を始め、あのアイ・ミミー・マインの前のところで「こんな感じだったよね」と終わった。「もういい?」と聞く告井軍曹に「アンド・ユア・バード・キャン・シング」と無茶なリクエストしたのはオレだ。「アンド・ユア・バード・キャン・シング?また凄いのが出てきたな」と苦笑交じりに弾き始めたのは、中期の名盤『リボルバー』の収録曲。そういえば『君の鳥は歌える』というタイトルの小説もあった。

 楽しいリクエスト・タイムも終わるかと思ったら突然Y尾君が「ビートルズで言ったらレイラ」と訳の分からないことを言いだした。「え、ビートルズで言ったらレイラ?それは何、あ、分かったあれですか」「あれです」「これですね」と言って弾き始めたのはご存じ「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」。そうか、あの曲はクラプトンが弾いてるし泣きのメロディーもジョージの作曲ではあるが「レイラ」に共通するものがある。Y尾君もなかなか粋なリクエストするやないか、あ、さてはI上さんに受けようと思ってこのリクエスト・タイムの間ずっと考えていたな、などと邪推してしまう(笑)。「ここでジョージ・ハリスンの曲をもう1曲やってみたいと思います」という紹介で始まったのはイントロが印象的な「タックス・マン」。これ聴くとパブロフの犬的にチープトリックのファースト・アルバムを思いだす。そのアルバムにも”Taxman,Mr. Thief”という曲が入っている、もっともデビューしたころのチープ・トリックは全然売れなくて彼らの名前がようやく知られるのはまるでビートルズそのものといえるヒット曲「甘い罠」をシングルで出したあと、もっと正確にいうと来日してからだ。あ、話が逸れた。



 「このタックスマンは税務署の人のことを歌った歌でですね。税務署のやつがオレにこう言う。5%はお前にやるぞ、あとの95%は俺がもってくと。税金を95%取られていたということを歌にしたんです。あながち嘘じゃないと思います。イギリスは税金高くて有名です。で、この曲が『リボルバー』というアルバムの1曲目に入ってます。大金持ちの歌ですね、この曲。税金を95%取られるなんてめちゃくちゃな金持ちです。この次に入っている「エリナー・リグビー」って歌は今度は最下層の人の歌を歌ってます。エリナー・リグビーって人の歌ですが、それはどういう人かというと教会のウェディングに現れてはですね、最後にライスシャワーって、米をおめでとうって撒くんですが、その米を拾って生活する人なんです。それが2曲目。もう大金持ちの歌から一気に最下層の人の歌まで、そういう人に光を当てるってのがさすがビートルズだと思います。じゃ、その「エリナー・リグビー」をやります」。

 「このエリナー・リグビーって曲がですね、4年前、イギリスにライブしに行ったときに必ずリクエストが来る曲です。この曲が好きだということよりもイギリス人は良くビートルズを知っていてですね、この曲にはビートルズが一切演奏に参加していないということを知っているんです。この曲は全部弦楽四重奏だけで成り立っている曲です。そのクラシカルな曲を、君はギター一本でさっきからいろいろやってるけど、これは出来ないだろうと。それでリクエストが来るわけです」。この時にY尾君が「この曲スタンリー・クラークがやっている」といったところ「いや、スタンリー・クラークは入って無い。全部、弦ですよ」と軍曹。Y尾君はしぶとく「いや、スタンリー・クラークが最近演奏していたんで」と食い下がる。軍曹も「スタンリー・クラークがやってるかもしれないけど、僕は知らないな。僕が好きなのはヴァニラ・ファッジがやってるやつ。原曲の影も形もない、あれもなかなかいいですね。」

 「それでこんなイギリス人の客もいました。何かリクエストをと言ったら, "Eleanor Rigby"って叫んでるオッサンがいました。聞きとりにくかったので、え?と聞きなおしたら、"Eleanor Rigby"とまた叫ぶ。こちらが"Eleanor Rigby?"と聞き返すと”Ok,Ok,Tomorrow”。明日でいいって、要するに出来ないでしょって言ってる。それで”No,Tomorrow,Tonite”と言って演奏しました。沢山拍手をくれましたね。まあ、しかしこれはギター一本でやる曲じゃないですね。大体ビートルズの曲をギター一本でやろうなんて人間はあんまりいない。まあ僕にとっては何でも挑戦です」



 ライブは最高潮に達していたが、もうそろそろ終わりの時間が近づいているのを感じていた。サージェント・ペパーの歌詞ではないが” I don't really want to stop the show”という気持ちでいっぱいだった。こういう時を至福の時間というんだろう。告井軍曹の演奏に解説に目の前にはきれいなおねいさん。ま、Y尾君が邪魔と言えば邪魔だが、今回は彼のおかげで楽しい時間が作れている。さて、このエントリーもあと少しなのだが、週末で月末の夜、こればかりにかかりきりになるわけにもいかないので今日はここまで。続きはアンコール編としてカミング・スーンであることを力強く約束して終わりたい。ああ、疲れた。あいむそーたいぁーど、やっちゅうねん。
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コメント

坂崎幸之助 K's TRANSMISSION

埼玉のFM局「NACK5」の番組ですが3/23放送回にセンチと告井さんが勢揃いしてゲストで出てましたよ。
https://www.youtube.com/watch?v=-l7MyZBhMoM
私もこれから聞きます。

「ターン・ターン」はこちらで

先ほどの動画では音楽カットされてましたので。

https://youtu.be/Y8onVRohADI

かくたさん、レス遅くなりました

blogのコメントは携帯にメールで知らせるように設定してたけど、今回は届いておらず、いまコメントに気が付きました。入院後の経過はいかがでしょうか?告井軍曹、センチのツアーに参加して楽しくやってたようです。とりいそぎレスまで!!
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