スロー&ファーストサイドオブ中山うり

 昨年も九州ツアーを敢行した中山うりと彼女のグループだが、まことに残念ながら宮崎は公演地から外されていた。九州というと新幹線の通っている地域ばかり注目されるが、いやちょっと待て、九州には太平洋側もある。人口も少なく、若者は流出し年寄りがやたら元気で人数が多く、産業も第一次産業が中心の、早い話が田舎ではあるが、そんな田舎にも熱心なうりファンがいることを久留米の友人が、うりちゃんのライブに行ったときに力説してくれた、そのおかげかどうかわからないが、まあ心情的にはそうあってほしいと思うが、とにかく9月22日に中山うりの宮崎ライブが行われる。欣喜雀躍の日々ではあるが、ちょっと待った、果たしてこの宮崎シティに中山うりのファンはどの程度いるのか。不安になり職場の何人かに聴いてみた。もちろん、この手の音楽を多少なりとも理解できるというか、好んで聴けると思っていた人たちだが、結果は、まことに残念ながら惨敗である。なにしろ『中山うりって、どんなうりなんですか?』と質問されたときは一瞬相手に殺意を覚えたくらいだ。しかし、自分の好きなミュージシャンを知らないからといってそのたびに人を殺していたら、これは安保法案どころの騒ぎではなく明らかに狂気の所業、そんなことをしなくても、早い話がいい音楽なんだから聴いてもらえればわかるはず。情宣活動を、プロパガンダをすればいいのだと気が付くワタクシは流石だと自分をほめておく。

 ということで、取り急ぎ中山うりを紹介するために、彼女の音楽をスローサイドとファーストサイドに分けて選曲。1CDに10曲前後、時間にして45分前後にまとめてみた。これは彼女のアルバム作りのスタイルをまねたものだ。CDは収録時間が長いからといって、やたら楽曲を詰め込むミュージシャンが多いが、聴く側からするとアルバム1枚が1時間以上だと、集中力も途切れるし、中にいい曲があっても後の曲の印象でアルバム全体の評価を低くすることがある。大嫌いな言葉だが「捨て曲」なんてことが言われ始めたのも音楽がアナログレコードからデジタルのCDに変わってからだと思う。話がそれた。早速、Slow Side of Uri Nakayamaの世界に入っていこう。

1. 月とラクダの夢を見た
やはり、オープニングはこの曲。彼女のデビューはCDではなく、iTunes Storeからのネット配信という、まさしく今の時代を象徴するデジタル・ミュージシャンでありながら、アルバム制作はアナログレコードっぽいというのは面白い。この辺りは彼女を見出したS-Kenの影響かもしれない。この歌で僕は彼女を知ったのだが、そのきっかけも僕が人生で何度目かのドツボにはまったことを知った久留米の友人が「うりちゃんでも聴いてまったりしてください」とメールしてくれたおかげである。「月とラクダ」というタイトルから、その昔のイギリスのプログレバンド、キャメルの『ムーン・マッドネス』を連想したが、こちらはアコーディオンとギターのアコースティックなサウンドと彼女の個性的な声が素晴らしいデビュー曲。

2. 夏祭り鮮やかに(Film Version)
続いてはファースト・アルバムの『Do Re Mi Fa』でも連続して入っていた「夏祭り」である。もっともこちらはミニ・アルバムに収録されているフィルム・バージョンでのテイク。歌の途中に入る詩がとてもいい。イントロのアルペジオが印象的。うりちゃんのバンドのギターは「月とラクダ」もそうだし、この曲もそうだが歌のバックというのを良く分かっている。ジャンゴ・ラインハルト的というか、ちょっとジプシー、あ、いまはロマというのか、あの手の匂いがする。中山うりの魅力は、その歌とアコーディオン演奏能力、さらに作詞のセンス、そしてすべての歌に歌心があり、ノスタルジーを感じさせる、いや実体験は無くてもそんな時間が時代があったんじゃないかと錯覚させる能力ではないか。この辺りは時間を見て、じっくり考えてみたい。

3. 夕焼け空に摩天楼
 こんな経験は絶対にないはずなのに、中山うりの歌う世界にはデジャヴ(既視感)が漂う。夕焼け空は日本人であれば、いや世界中のだれであっても見たことはあり、そこに特別な感情を込めることはあるだろう。しかし、夕焼け空に摩天楼、スカイ・スクレーパが登場するっていうのは、多分、ニュー・ヨーク在住者でなければありえないはずだが、ありえない世界も説得力を持って歌われる。後半の管楽器のアンサンブルが心地よい。初めて聴いたときははっぴいえんどの「風をあつめて」を思い出した。「人気のない朝の珈琲屋で暇をつぶしてたらひび割れた玻璃ごしに摩天楼の衣擦れが舗道をひたすのを見たんです」という箇所だ。今はスタバやドトールやタリーズなど大量消費のコーヒー屋ばかりで、喫茶店で暇をつぶすなんて死語になってしまった。

4. 青い夜
最初に聴いたときはイントロのホーミーとバイオリンに驚いた。閉園した後の動物園の情景を歌うという着眼点。心ならずも母国から強制的に連れ去られた動物たち。その野生の動物たちが何故か人間そっくり(by 安倍公房)。どこかで聞いたことがあるシチュエーションだと思ったら、エコーズのZOOだ。菅野美穂ちゃんも歌ったけど、辻仁成の多分唯一の名作。彼女の詩の特徴である同じ単語の繰り返し(リフレイン)で、青い夜の動物園の情景が浮かび上がる。そこに聞こえてくるホーミー。ちょっと不気味な感じの夜の動物園、あ、映画の『ナイト・ミュージアム』の世界に近いかもしれない。

5. 夜霧よ今夜もありがとう
言わずと知れた石原裕次郎のスタンダードである。太陽族とかいって、目茶苦茶やってた時代を完全に清算して一気にジャズ(っぽい)バラードを歌った、姑息な裕次郎。まあ、兄貴が慎太郎だから仕方がないといえばそれまでだが。もっとも裕次郎・慎太郎兄弟も若い頃があって(当たり前だ)、その当時は良識ある大人が眉をひそめるくらい悪かったらしいが、まあ所詮パンク以前のパンクである。あ、こんなこと書いていると終わらないので簡潔に。1枚目、2枚目と順調にアルバムを出してきたうりちゃんだが、3作目は何故かカバー大会。しかし、カバーも誰もが知ってる曲ではなく、あっと驚くタメゴロー(このネタが分かる人は断言する、昭和生まれだ)。PVを見たときは驚いた。多分小学生くらいの子供たちが演技&演奏していたのだ。ホステス役の女の子の演技が、まるで大人で女ってのは子供のころから女なんだなと痛感。

6. 回転木馬に猫と僕
NHKのみんなのうたは息の長い番組である。スタートが1961年だから50年以上は経過している。どんな歌を聴いていたかで、その人の世代とちょっと大げさだが思想傾向もわかる。最近はセカオワなどが登場しているが、「地球を七回半まわれ」とか「ドナドナ」、おっとざわわざわわの「サトウキビ畑」もここから出ているし、「WAになっておどろう」なんてのもあったっけ。個人的には「燃え上がれ雪たち」と「トレロカモミロ」が好きだったな。ま、そんな話はさておき、うりちゃんの歌と詩のイメージはみんなのうたに良く似合う。坂本龍一がプロデュースした日本に残したい歌シリーズのアルバムでもうりちゃんは「たきび」で参加している。この編集CDにも入れようかと思ったが、一応夏のイメージで曲を選んだのでカットした。

7. ホタル
アルバム『ホロホロ』のオープニングナンバー。このアルバムを聴いたときに、うりちゃんの最高傑作が出たと確信した。が、しかし、その次の『鰻』を聴いてうなってしまった。まだまだ、まだまだ彼女は先に進む。そして初ソロアルバム『ぼっち』を聴いて、それを更に確信。永久不滅のホウレン草(by ザ・スターリン)なのだ、うりちゃんは。ホタルというとこの季節は野坂昭如の『火垂るの墓』を思い出すが、暑い夏を決して忘れてはいけない事実として記憶しておきたい。もっともこの曲とあの小説の関連性は分からない、というか多分ないと思う。

8. ホロホロ
前曲がオープニングでラストナンバーがこの曲。ホロホロ鳥という鳥はいるが、ここでは「ホロホロ」と流れる涙から連想したのではないか。歌詞の内容も演奏も、これまでのうりちゃんとはちょっと違った感じがあるが、うーん、毎度おなじみのうりちゃん的なところもあり、良く分からん。

9. 蒼いアジサイが泣いている
 昨年発表した『鰻』の中の1曲。アジサイは、その土壌によって色が変わる。土が酸性であれば青いアジサイが出来るが、そんな化学反応的なことを歌っているわけではない。「私はここにいます」というフレーズとスティールパンの音色が印象的な1曲。そうそう、うりちゃんはこのアルバムで幅広いサウンドを獲得しながら、最新作はアコギ一本で歌うという離れ業を成功させている。

10. 石神井川出会いましょう
 最新作『ぼっち』は彼女のギターと歌だけで構成されている。そのヒントはこの曲を作ったことにあったと確信する。中山うりのセールスポイントはアコーディオンとトランペット、そしてミラクルボイスの3点セットだと思っていたが、ギター1本で歌うことでさらに表現力がアップした。「靴が増えて歌が増えて」、「猫になってもここに来るわ」、これは簡単なフレーズだけど「言いたいことがあるのです」にまとめれられて行く。


 続いてFast-Side of Uri Nakayamaがあるのだが、とりあえず今回は曲名だけクレジットしておく。反応が良ければ続編を書いていくが、多分ないだろうな。

1. マドロス横丁
2. つぎの駅はパラダイス
3. 黒猫・白猫
4. カーニバルの午後
5. Viva Viva
6. まさかさかさか
7. コバルトブルー
8. ガバオNo.5
9. 夢を売る男
10. カリオカの夜
11. トロントさん


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コメント

えっと

私は久留米じゃなくて太宰府じゃぞ。
前の職場は久留米でしたが、今はいちおう福岡市内ですし。

というわけで、後編キボンヌ(死語か?)

あああ、そうでした

久留米のライブに行ったことで、すっかり久留米の女(ひと)だと思い込んでいました。梅が枝餅の大宰府でしたね、謹んで訂正します。後編のリクエストいただきました。可及的速やかに対処します。といいながら、またズルズルと怠けてしまうことだけは避けたいと思います。などと早くも言い訳(笑)。

えっと、行ったライブも福岡市内の『カヨカリ』です。

続きはまあ、ぼちぼち待ってます。

え、でしたっけ?

もうすっかりボケてしまい、記憶がコンフュージョンウィルビーマイエピタフでございます。
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