告井軍曹ライブレポ 間違いなく、その2

 『早く始めたら、早く終われるからね。この店は9時半に出ないといけないんですよ。10時だと思っていたんだけど違うらしい』と告井軍曹が、休憩を挟んで再度ステージに上がってそう話した。そうなのだ、この平和台公園は、夜10時になるとチェーンで施錠され、出入りができなくなるのだ。それは何故かというと、ひところやたら珍走団が出没して周囲の人たちに迷惑をかけたからだ。この平和台公園は頂上の駐車場まで長いカーブが続く一本道(by 友部正人)なので、面白がってボーソーするヒーハーが、いやミーハーが夜になると雲霞のごとく集まってきて、駐車場一帯を占有して、さらにはものすごいスピードでカーブを曲がりきれず自爆ならいいけど人様の土地や建物を破損するなどという事件も続き、ついにお上も堪忍袋の緒が切れて、夜10時以降は車両の出入りは一切禁止、つまりこのライブも9時に終わらせ9時半にはお店を出ていかないとそのまま一晩公園の中に閉じ込められてしまう。まあ、僕はシュラフを携帯しているから別にそうなっても大丈夫だが、ん、何故、車にシュラフを積んでいるか。それは簡単、人生何があるかわからない、備えあれば患いなしというじゃないか。別に家から追い出されることが多々あるからではない。断じてない。

 『WCに行ってる人は、WCで聴いてくださ~い』という本気とも冗談ともつかないMCの後、演奏したのは「Norwegian Wood」。その昔、「ノルウェーの森」というタイトルでクレジットされていた曲だ。シタールの独特の音色とジョンのけだるげなボーカルが印象的な曲だった。歌詞も「Norwegian Wood」を「ノルウェーの森」と訳したら、さっぱり意味がわからないというか実にシュールな感じになるが、なに「北欧産の家具」とか「材木」と訳すと実にシンプル。「あんたといいことしたいから美術館に火をつけるよ(by P-Model)」くらいの話だ。演奏はそのまま、ジョージの名曲「サムシング」に移る。オリジナルではジョージのギターよりも、ポールのリード・ベースともいうべき躍動感あふれる歌心あふれる演奏が素晴らしいが告井軍曹、それを完全に再現してくれる。特に間奏のところのベース・ラインは泣けたね。



 『それではリクエストを取ろうかと思います。リクエストタイム』と嬉しいMCが入る。さあ、何をお願いしようか、「イチゴ畑」はどう弾くのか、いや思い切ってハードな「へルター・スケルター」なんかどうだ、いやちょっと待て、やっぱりギターなら「ホワイル・マイ・ギター」だろうが、いや「ミスター・カイト」なんかも斬新な解釈をしてくれるかもしれないなどと考えていたら、誰かが「ハイ」と手を挙げて「レディ・マドンナ」をリクエストした。そういえば、まだチューリップがそれほどメジャーになっていないとき、たしか、「心の旅」がヒットしたことを祝って所属していたレコード会社がアビー・ロードスタジオで録音するという機会を与えてくれた。そのスタジオでメンバーがセッションしていたら、ポールが「よぉ」と声をかけて入ってきたので、一緒に「レディ・マドンナ」を演奏した、なんて財津のエッセイを読んだ覚えがある。ピアノで始まる曲というイメージが強いが、なんの何の、我らが告井軍曹はギター一本でさっそうと弾いてくれる。演奏が終わり『はい、もう曲名だけ言っちゃってくれていいよ』という軍曹の言葉に誰かが「マザー・ネイチャーズ・サン」と答えた。いいセンスだな、誰がリクエストしたんだと周りを見渡したらオレだった。などと書くと嘘みたいだが、本当に夢を見ているような感じがだったのだ。僕のほうを見た告井軍曹は何故か『ちゃんとやるから』と一言付け加えてギターを弾き始めた。勝手な想像だが、「エイト・デイズ・ア・ウィーク」のクラップハンドに答えてくれたんだと確信した。ホワイト・アルバムにはポールがギター一本で歌っている曲がいくつかあるが、その中でも一番好きな曲だ。メロディも詩もいい、実にいい・。学時代はニルソンの『Harry』に収録されている同曲をよく聴いた。あのアルバムは雨の日の修学院に良く似合った。などとちょっと気取ってみる。



 「ルーシー・イン・ザ・ダイアモンド」と誰かが叫ぶ。『ああ、「ルーシー」か。最近やってないから指が覚えているかな』と告井軍曹は答えるが、なんのことはない、原曲のあの幻想的なイントロがギターで再現され、一気にサイケデリックなジョン・レノン・ワールドが展開されていく。そして、このライブで初めて、一瞬指が止まる瞬間があったが、当然、そんなもの何食わぬ顔で我らが軍曹は演奏を続ける。今度は「タックスマン」と声がかかる。もしかしたらリクエストしたのはモダーン・レコードのボーカルの人だったかもしれない。『タックスマン、税務署のことを歌った歌です。「税務署のやつがオレにこう言う。お前に5%やろう、オレは95%持っていくよ」という歌です。ビートルズは税金を所得の95%取られていたんですね。こういうフレーズから入ります』と、あの独特のイントロを弾く。『ギターが入ります』、うーん、完全コピーですね。いったいどうやって弾いているのか、ギターをやってる人は必至で運指を見るだろうが、残念ながらギターはFの悲劇を克服できなかったオレだ。奏法なんかどうだっていい、いかに楽しめるかだ。しかし、ギターど素人のワタクシでも告井軍曹の凄さは分かる。わかりすぎるくらいわかる。

 『じゃあ、イギリスで一番リクエストの多かった曲をやります。期せずして今やった曲は「リボルバー」というアルバムの1曲目なんですが、その2曲目に入っている曲です。』こういって「エリナー・リグビー」を弾き始めた。僕はへー、というかフーンというか、英吉利人というのはよくわからねえなぁ、なんでまた「エリナー」が一番人気なんだと考えながら聴いていた。すると実に痛快な裏話を話してくれた。『何故この曲のリクエストが多かったかというと、この曲は弦楽四重奏のみの演奏で、そこでポールが歌っています。ほかのメンバーは一切演奏も歌も参加していません。そういう曲をいったいどうやってやるんだと、そういうことですね。「君はさっきからビートルの曲を演奏して面白いけど、こういうクラシカルな曲はできるのかね」、という意味ですね。そういうリクエストの仕方、いじめようと思ったのかもしれないです(苦笑)。ビクともしません(笑)。こんな客もいました。” Eleanor Rigby”というので” Eleanor Rigby?”と聞き返すと”OK,OK,Tomorrow!”ていう。「明日でいいよ」つまり「(この曲は演奏)出来ないでしょう?」という意味ですね。僕はちょっとカチンと来て、”Not Tomorrow,Tonite!!”と言って演奏しました。拍手をたくさんもらいました』。



 さすがは我らの告井軍曹、英吉利人の見くびった発言に対して演奏で切り返す、サムライなんだ、と胸のすく思いをしていたら曲は初期の「キャント・バイ・ミー・ラブ」になった。思わずクラップハンドで参加してしまう。しかし、間奏部分がちょっとおかしい、いつの間にか♪う・わ・さを信じちゃいけないよ、あ・た・しのこ・こ・ろ・はうぶなのさ~に変わっている。客席にちょっと笑いが走った。演奏が終わり曲名を言った後に解説が入った。『山本リンダって実はポールと凄い深い関係があるんです。ポール・マッカートニーの最初の奥さんは、リンダ・イーストマン。リンダつながりだったんですね』。僕は大うけしたが、客席は苦笑って感じだった。そうそう、このライブを見に来ていたのは、多分、このお店の常連さんだろうと思うが、自分自身もバンドをやっているという人や、その昔ウッド・ストックっていう愛と平和のイベントがあったのよ、そのころから私たち一歩も変わってないわと主張したいのだろうなと思われる人。まあ、俗にいうヒッピー崩れ(失礼)みたいな人。そして、どういうわけか若い、多分、20代だと思われる男女。総じておとなしいんだよね。アルコールを飲んでいる人がいなかったせいもあるかもしれないが…。

 『次は何をやろうかな、じゃB面シリーズ行きましょう。あんまり有名じゃない奴』というMCに続いて「アスク・ミー・ホワイ」を弾き始める。ビートルズのセカンド・シングル「プリーズ・プリーズ・ミー」のB面曲だ。多分、「プリーズ・プリーズ・ミー」も最初はこれくらいの店舗だったんだろうな、ということを先ほどの告井教授(当然、この場合は軍曹ではない)の話から想像してみた。しかし、最初期のビートルズもすでにビートルズだったんだということを確信させるメロデイとサウンドである。こういうバラードも平気で歌えるジョンはやはり天性のボーカリストだったと思う。続いてのB面曲は「イエス・イット・イズ」。「涙の乗車券」の裏側に入っていた曲で、長らく日本とイギリスのアルバムには収録されてなかった曲だった。『パスト・マスターズ』とか『レアリティーズ』なんかに収録されたのが最初じゃなかったかな。作曲したジョンはこの曲を大嫌いだといい、ポールは素晴らしい曲だと言ってるようだ。僕はポールの意見を支持したい。

 「アイ・コール・ユア・ネーム」が次に演奏された曲だ。しかし、B面シリーズといっても僕もビートルズを聴き始めたのは解散直前のころからで、ほとんどの楽曲を後追いで聴いているので、あんまりシングルB面ってイメージはない。もっともシングルB面イコールダメな曲という公式はない。逆にB面にこそ、そのバンドやミュージシャンの個性が出ているものも結構あったと思う。まあ、「アメリカン・パイ」や「アイルランドに平和を」のB面は勘弁してほしかったけど。シングル「のっぽのサリー(ロング・トール・サリー)」のB面だけど、この曲のほうがA面より良くできていると思うのは僕だけだろうか。さらに続けてもう1曲バラードを演奏した。



 『「ティル・ゼア・ワズ・ユー」、今日やった曲の中で、この曲だけがビートルズのオリジナルではありません。それでは、最後、今日はこの曲で閉めたいと思います』。最後の曲になってしまった。あっという間の100分間。最後に聴かせてくれたのは「ヘルプ」。この曲も本当はもっとゆっくりしたテンポで切実に歌いたかったが、ヒットさせるためにアップテンポにアレンジしてしまったので、歌の意味が損なわれてしまったと後年ジョンがインタビューで話していた曲だ。演奏が終わり、熱い拍手の中でアンコールが始まった。

 『今、自分に感心しています。何に感心しているかというと、9時に終わってくれと言われていたんです。なんと今9時丁度なんです。これ何時計っていうのかな、腹時計じゃないよね。さあ、それでは、じゃあ歌を歌います。さっき言ったセンチメンタル・シティ・ロマンスというバンドをやっていました。一昨年、僕は卒業しましてですね、今はやっていません。ほかのメンバーはまだやっていますが、「夏の日の思い出」という曲をやります』 。驚きの発言、僕はまだ告井さんはセンチのメンバーだと思っていたけど、2年前に辞めていたんだ。知らなかった。でも、このライブでセンチの曲が聴けるとは思わなかった。これも最初の、モダンレコードのボーカルが紹介したおかげかもしれない。「うちわもめ」じゃなかったのは残念だったが、告井さんが弾き語りで歌うセンチの歌は、文字通りセンチに響いた。夢の時間が終わった。



 ライブが終わり、告井軍曹のCDが売られていた。僕は2枚目のものを買った。リクエストしたマザー・ネイチャーズ・サンも入っている。そして、そのCDにサインをもらい、その時に告井さんにセンチを辞めたのは本当かと確認した。残念だが、事実だった、もっとも今はギター一本でこのSgt. Tsugei’s Only One Clubの活動で忙しいんだろう。後日、坂崎幸之助のラジオ番組の中で、年間100本ツアーで回っていると、もっともこれは3年前のラジオ番組の録音なので今はもっと本数は少ないかもしれないが、この一人ビートルズを続けることとセンチの活動の両方は大変なのかなとも考え納得しようと思った。帰りの車の中でサインしてもらったCDをかけながら自宅に車を走らせた。やはりCDなので音は抜群にいいし、曲も演奏も最高なのだが、ライブにはそれ以上の発見がある。やはり音楽は生き物(ライブ)なんだとつくづく思った。さあ、君の町にも告井軍曹がやってkるはずだ。見逃すな、聴き逃すな、Life is very short and there's no time For fussing and fighthing my friends!!

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コメント

Wiki

告井さん個人の項目のページを見ましたら、
「元リーダー」
「2013年センチメンタル・シティ・ロマンスを脱退。」
とありますね。
なんでそれがバンドの項目ページに反映されないか。誰も修正しないからだよ(笑)。
Wikipedia読んでてここは間違いだろってのがあったらどんどん直しましょう。それがみんなのためです。

p.s.
坂崎幸之助のラジオ番組てのはわたしがご紹介したやつでしょうか。

そうです、そうです

すいません、エントリーの中にかくたさんの紹介というクレジットを入れておくべきでした。あの坂崎のラジオをずっと聴いていて、へえ、年間100本もやっていたのか、センチのころもそこまではしてなかっただろうなと妙な感想を持ちました。

暴走中年

最近、私のウォーキングルートで死亡事故でもあったのか、時間帯関わらず(夜の11時でも)現場に花を手向ける集団がいます。見た感じ「やんちゃな青年~中年」。子供を連れている人もいる。かつては「族」の幹部だった人のバイク事故だったのかな?と推察。この地域はかつてはそれなりに暴走族の多い地域だったはず。今でも絶滅危惧種ながらその地を受け継ぐ見た目の本物の少年がいます(大抵暴走事件で検挙されるのは40代以上だが)。ああいう人たちって仲間内の連帯がやたら強い。そんなことを思いながら南無阿弥陀仏とウォーキング(私、東本願寺門徒の子孫ですから、一応本物の念仏?)。

>平和台公園

特攻服の暴走族が暴走して八紘一宇に突っ込んだら・・・変な妄想でした。

>特攻服の暴走族が暴走して八紘一宇に突っ込んだら

それ最高ですね、笑えます。特攻服着て粋がっていた、元珍走団の兄ちゃん姉ちゃんは、ぜひホルムズ海峡で機雷の撤去作業などやっていただくとありがたい。「てめーら、なめてんじゃんーよ」とか「根性見せる」とかいって機雷を素手で殴って爆発させるという、あの『男一匹ガキ大将』の場面を再現してほしい。しかし、あのシーンを見たときに機雷って手で殴ったくらいで爆発するんだから、大しけで船が揺れているとき、誤爆しっぱなしだけど大丈夫だろうかと心配しました(笑)。
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