恐怖のライブ強化月間 総括その2

 というわけで、坂田明である。前回見たのは、ジム・オルークと一緒に「ちかもらち」(「力持ち」じゃないよ)で来た時だったから、もう6年前になる。もっとも、坂田明の存在は学生時代に山下洋輔のエッセイを読む中でおなじみだったし、全冷中のときも、ハナモゲラ誕生の時も楽しく読ませてもらった。もちろん、音楽もといいたいが、70年代の山下トリオを超絶演奏は毎日聴くにはちと辛かった。あれは、やはりオールナイトのジャズ・フェスや紫煙モクモクのライブハウスなどで気合を入れて聴くのが一番で、朝、起き抜けの、さあこれから一日頑張ろうというときに聴いてしまうと、勤労意欲というものがなくなる。ところで、この恐怖のライブ強化月間を乗り越えるために、ライブは熱いコーヒーを飲みながら見る、決してアルコールの補給はしない路線を貫徹していたワタクシであったが、そしてそれは、第1回目の板橋トリオの時には見事成功したのだが、なんと、この坂田明トリオの時には完全に玉砕してしまった。



 そもそも、日程が良くなかった。当日は7月12日の土曜日である。今回も、Y尾君は欠席だがS尾君が参戦、そして京都のおねいさんも参戦予定だったので、まあライブの合間のおしゃべりの相手には事欠かない。また、電車の時刻表を見るとちょうどいい時間帯に2本電車がある。あるが、その時間までにざっと小一時間あるじゃないか。休日の早めの夕方。バブ・クールの入ったぬるめのお風呂に入って、汗をぬぐうと当然のどが渇く。何か飲むものはないかと冷蔵庫を開けたら、週末用に冷やしていた炭酸水がキラキラとした瞳でこちらを見つめている。その昔、早見の優ちゃんが歌っていた「誘惑光線、クラッ」という感じである。思わず手に取って、しばし考える。今回の脱アルコール闘争は、その主題は経費節減、この過酷なひと月を駆け抜けるために無駄な出費を省き、学生時代に戻ってコーヒー一杯で粘るというものだ。が、しかし、今日は休日なので家呑み解禁デーであるし、要はライブハウスでお金を使わなければ済む話だ。早い話が、家呑みして体を温めて、そのテンションでライブハウスに行けばいい。そうだ、なんでこんな簡単な解決策に気が付かなかった、僕って何(by 某芥川賞作家)。

 そうと決まると、ワタクシは行動が速い。お気に入りのアルミのグラスにレモンを絞り、氷を目いっぱいいれて「うちのハイボールは角だから」という革命的菅野美穂主義を実践。ちなみに、今は井川遥が出演していて、それはそれでいいのだが、菅野美穂がCMやってるときは裏ストーリーがあって、父親と一緒に駅の近くの小さなお店でハイボールを作っていたのだが、その父親が亡くなり、もうお店は止めてしまおうと思っていたものの、店を閉めると父親との思い出も忘れてしまいそうなので、なんとかもう一度お店を開き、その準備で店のドアを開けたら一陣の風が通り抜け、まるで父親がそばに今もいるような気がした、って話だったのだ。僕はしっかりサントリーのHPで確認したから間違いない。てなことを思い出しながら、駆けつけ三杯で、あ、別に家にいたからどこかに駆け付けたわけではないが、とりあえず三杯のハイボールを摂取し、いい気持ちで駅まで歩き、そこからローカル線で1駅乗って、いつものライフタイムに着いた。

 店についたら海坊主がマジックを持って何やら作業をしている。良く見ると坂田が、レコードジャケットにサインをしていた。ちょっと声をかけにくい雰囲気だったので、思わず受付で「焼酎ロックで」と頼んでしまった。頼んだ瞬間、あ、まずいと思ったが、何の何の、コーヒーも焼酎のロックも値段は同じ。要するに、この一杯でやめておけばノープロブレム。危険な関係のブルースなのよ。などと自己弁護し、それは当然大きな間違いで結局ライブが終わるまでに確か4杯か5杯お代わりしたはずだ。しかも、おつまみなしでは寂しかったので、ついピーナッツなども頼んでしまったのはプチブル的堕落であった。まあ、それでも先ほど飲んだハイボールでいい感じになっていたし、自宅からライフタイムまで移動する間に汗もかいたので、焼酎のロックも旨く、ぐびぐびやってるとS尾君がやってきた。呑んでる僕を見ても特別何も反応がない。心の中では「やっぱりこいつはアカン、何がコーヒーじゃ」くらいに思っていたのかもしれない。前回の板橋のライブの感想などを話しているうちに、坂田が持ってきたアルバムを見つけてさっそく購入し、サインをもらってきた。LPレコードだ。ジャケットにアメリカのどこかの大学でやったライブと書いてあった。いや、もうその段階で酔っぱらっていたのではっきり覚えていないのだ。



 そのうちに時間が来て、ステージに足の不自由なドラムとちょっとぶっ飛んだ感じのキーボードと背の低い坊主頭の人相の悪い男が登場した。サックスのチューニングで何やらパラパラ吹いたかと思うと、突然、「えー、そのようなことであったわけで」といきなりMCを始める。宮崎は久しぶりだという話から物事は息を吸って吐いている間にすべて起こっている、息を吸って吐かなかったら息を引き取るというなどと聞きようによっては、インド哲学かと思わせるような話を始めた。そしてなんとこのグループはサカタカタツサという名前があり、実は博多のライブまでベーシストがいたらしい。ところが中国での仕事が入り抜けてしまったが、神戸のライブになるとまた合流するという。まあ、最初からベースレスのバンドだったと思えば何も問題はないなどとしゃべる。しかしながら、ドラムに「言わなきゃいいのに言っちゃった」と突っ込まれて、「あ、言っちゃったか」と答え、会場は笑いの渦に包まれた。包まれたその瞬間にバンドが音を出し始めた。圧倒的な自信に満ち溢れた音である。これは音楽か、音楽でないのか、そんなことなどどうでもいいと思わせる自信に満ち溢れた演奏だった。前半のセットはわずか3曲。しかし、時間にし40分以上の強烈な演奏だった。前回も書いたが、この手の音楽を文章にするなんて無意味なので勝手に想像してください。一番いいのはライブハウスに足を運ぶことだ。と、書いて坂田のHPを見たら、今月8日はピットインで鈴木勲、スガダイロー、本田珠也とのカルテットで登場する。いったいどんな音になるのだ。東京近辺の方は是非参戦し、体験してください。

 第二部は一緒に演奏しているミュージシャンの話から始まった。「さっき、この二人をどこから連れてきたのかと聞かれたんだが」と区切って間をあけて、「居たから」と一言。二人ともジャズの人ではなく、さまざまな音楽をやっているらしい。これはライブの後、S尾君がドラムの人に話しかけて確認したから間違いない。ジャズに対する思い入れなど全くなく、ある時はJ-POPの録音やコンサートに出演するし、依頼があればこうやってフリージャズのライブにも出てくる。屈託というものがないのだ。これは板橋トリオのベースとドラムの演奏でも感じたが、いわゆるジャズ命っていうこだわりは若いミュージシャンの間には最早無いのではないか。そして、それは決して悪いことでも何でもなく、音楽のジャンルから解放されて、純音楽的に表現する若手が増えてきているということではないか、などとライブの後でS尾君と話し合って出した結論であった。しかし、この翌日に宮里陽太のニューヨーク録音の新譜が届き、それを聴いて、いやいやジャズに、ハードバップにこだわる若い奴はまだまだいるぞ、しかもそいつは地元の出身だぞと心強く思ったのは、また後日の話。

 前日は熊本のクラブ(尻上りで発音すること)で演奏したくて、坂田本人が直接電話したらお店の人が驚いていたとか、三管のおねーちゃんのフュージョンバンド、キチガイノイズバンド、わけのわからないめちゃくちゃドラムのバンドの後に登場して、その後はパンクバンドが出たりDJが登場したりするイベントだったらしい。見たかったな。そのキチガイノイズバンドの演奏を形容する言葉で「ギョェ~~~」と叫んだのだが、実はそれと同じ音がインドのタクシーのエンジン音だったとか、まあ笑わせる話を5分ほどしてまたもや強烈な演奏が始まった。後半のセットは以前みた「ちかもらち」の時に近いような演奏、東北のおどろおどろしい怨念の演奏もあった。そして、アンコールはなんと「ひまわり」。チェルノブイリの原発があの有名な映画の有名なシーンに映っている話を淡々としてからの演奏はちょっと重かった。クソ、今回は香月保乃ライブの話までは行くつもりだったが、いかんせん腹が減った。続きは、その3で近日中にアップすることをお約束して今日はここまで。そういえば、このライブに京都のおねいさんは仕事の関係で来られなかった。だから僕も寂しかった。などと下心丸出しのことを書くのは自粛すべきだったか(笑い)




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コメント

駅の近くのハイボールの店

菅野美穂のお店にそんないわれがあったのですね。最近のCMの物語性には、下手な小説はかないません。
窓からチラリと見えるのが、中央線各駅の黄色い車体のようで、住んだこともないくせに『上京物語』が暴走@妄想します。
あの色は、御茶ノ水駅だとか、さだまさしの『檸檬』だとか、画材屋レモンだとかとゴッチャです。

いや、本当に良くできたストーリーで

まあ菅野美穂ちゃんが好きだったので、ついついサントリーのHPを見て、それで知ったのだから偉そうには言えません(笑)。しかし、CMのシチュエーションやちょっとした演技の中にストーリーがあるってのは楽しくていいです。ロト6のロト夫木部長はこの後どうなるのか、とか宮本武蔵に武術を学んだ桃太郎は鬼ヶ島でどんな戦いをするのか、そうそうカップヌードルのCMも見逃せません。
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