それどころやなかったんや

 子供が入院した。EBウィルスの感染症らしい。昨年末に、配偶者が原因不明のリンパ系の疾患で入院したが(もっとも医者も驚く回復力で1週間で退院した)、こちらはどうなるか予想がつかない。1か月くらい前から「体がだるい」とか「疲れた」と口にすることが多かったが、最近はやたら「胃が痛い」と言ってよく腹をさすっていた。市販の胃薬を飲ませると、飲んですぐはいいのだが時間が経つとすぐまた胃痛を訴える。素人判断じゃどうにもならないと思い、先週の火曜日に僕が毎月1回通っている病院に連れて行った。その時はまだまだ元気で、「あの先生大丈夫ね。爺ちゃんで頼りなかったが」などと言っていた。胃痛で病院に行ったのだが、その時すでに首のリンパも腫れていて、しかも風邪気味だったのだが先生は本人が言うまで気がつかなかったらしい。診てくれた先生は胃のほうばかり気にしていて「エコーで調べようか」などと言ってくれたらしいが、「お金がかかるなら今度でいい」と流石にルンプロの僕の娘だけあって断った。

 とりあえず胃薬と風邪薬を処方されて帰ってきたが、その夜から元気が無くなり寝込んで部屋から出ようとしない。普段は学生生活とアルバイトと遊びに全力投球の子であるから、部屋にこもりっぱなしなどという状態は初めてである。もともと耳や鼻が弱く、たしか副鼻腔炎で通院したことがあったので、翌日は耳鼻科に連れて行くよう配偶者に指示をした。次の日の午前中に、配偶者が以前診てもらった耳鼻科の病院に行ってみたら、何と廃業。もう一軒のこれまた良くお世話になった耳鼻科は休み。平日に何で休みだと聞いてみたら、学校での検査を請け負っていてそちらが忙しいため病院は臨時休業したらしい。その段階では子供はかなりぐったりしていたし、前日の夜も食欲が無くうどんを二口、三口食べたくらいだったので、家のすぐ近くのホームドクターともいえる内科に連れて行って点滴をしてもらった。そして、ネットで市内の耳鼻科を調べて評判のいい病院を見つけたが配偶者も午後から仕事があったため、上の子にもしこの子がきつそうだったらその耳鼻科に連れて行くよう頼んでおいた。

 仕事中の僕の携帯に上の子供からメールが入った。タクシーで妹を耳鼻科に連れて行ったが検査をたくさんしたので母親から預かったお金ではとても足りない、何とかしてくれ父親だろう、みたいなことが書いてあった。金と力は無いのだが、我が子二人が困っているのに知らん顔は出来ないので、銀行でお金をおろして病院に向かった。下の子は思ったよりは元気そうだったが顔色が冴えず、声にも力が無い。心配していた副鼻腔炎は全く問題ないが、リンパの腫れや鼻水などから診断して漢方の薬を処方してもらっていた。熱も少しあって37度4分だったので頓服の薬も処方してくれていた。これで原因も対処も出来たと思い、薬局の近くに美味しそうな洋菓子屋さんがあったので、子供二人を連れて好きなものを買いなさい。ゼニカネの心配はいらんぞ、あ、お父さんもシュークリームとラスクは食べるから一緒に、え、お母さん、お母さんは甘いものを食べるとブタになるからいらん、いらんというのにむりやり買わされた。まあそれでも、これでなんとか快方に向かうと思っていた。

 家に帰るとそれまで元気そうだった下の子が、やはり疲れたようですぐ部屋で横になった。その時に気がついたのだがテーブルの上に何やら上の子の字で数字が書いてある。かかりつけの先生が点滴を処置してくれた時に、異常を感じたらしく血液検査をしていたのだ。午前中に検査を受けたが、その結果が電話であったらしい。白血球が異常に増えており、リンパや血小板も異常値を出している。何より肝機能の数値が悪すぎる。まるでアル中時代の僕の肝機能の数値だ。さすがにγ-GTPこそ、そこまでなかったがGOTやGPTがかなり高い。こりゃ相当しんどいはずだ。いやな予感がして子供の部屋に入るとぐったりして横になっている。話しかけても返事をしない。せっかく買ってきたショートケーキも食べないという。

 その夜、子供が嘔吐した。頭が痛いというので処方された頓服を飲ませた何分か後だった。嘔吐感は以前からあったらしいのだが、つばやタンを吐くことで誤魔化した来た。今回は薬を飲んだので吐いたらいけないと我慢したそうだが、胃液があがってくる感じが激しくてついに吐いてしまった。こりゃ単なる耳鼻咽喉科の病気じゃないのではという感じがする。その時自宅の電話が鳴った。配偶者が取ると昼間点滴してくれたホームドクターからで、耳鼻科でどんな処方をされたかの確認と今の体調を気にしてわざわざ連絡をしてくれたのだ。飲ませた薬を全部もどしてしまったことを伝えたら、明日もう一度点滴と血液検査に来るよう言われた。

 翌日、仕事から帰ると事態はますます悪化していた。子供は部屋で固まったようになって全く動けない。付き添っていた上の子に聞いたら、スポーツドリンクやお茶などを飲ませるが、すぐに嘔吐してしまうという。嘔吐下痢症みたいな状況だ。かかりつけの先生に電話したが、すでに19時前で緊急の処置をするなら夜間病院に、もし状態が収まるようだったら翌朝紹介状を書くので大手の病院で詳しく検査を受けるよう言われた。そうこうするうちに配偶者が帰ってきた。その間に二回ほど嘔吐している。このままではマズイと話し合い、もう一度かかりつけの先生にお願いして今から受け付けてくれる病院は無いかと相談した。30分ほどして電話があり、家からは遠いが全ての診療科目が揃っている大手病院が入院の準備をすれば受け入れてもいいと言ってくれたらしい。

 オンナコドモというのは、どうしてああいうとき時間がかかるのか。男の僕には分からない。さっさと着替えや身の回りの物を準備して車に乗ればいいのに、やれコンタクトの洗浄液だの、やれ小さなバッグだの、やれメガネ、いやこれじゃなくてあっちの、なんたらかんたらで病院に着いたのは確実に1時間以上経過した後だった。受付にいた事務員にかかりつけの病院からの紹介だというと、既に紹介状がFAXされておりスムーズに受け入れてもらった。もっとも僕もやや動転していて、子供の生年月日を書くときに間違えて配偶者の誕生日を書いていたりした。看護師の方も待機していて、事務処理が終わるや否や血圧だの、尿検査だの、血液検査だのさまざまな検査と担当医の問診があり、すぐにウィルスによる症状だと診断され、そのまま入院。期間は二週間になるか三週間になるか予定は未定である。しかし、その時の医者の話が「これは誰でも持ってるウィルスです。私も持ってる、お父さんも持ってる、お母さんも持ってる。誰でも持ってるんです。そして、ほとんど悪さをしないんですが、あ、いや大抵は小さい時に暴れて、それでも風邪をちょっとこじらせたかなくらいの症状なんですよ。たまに成人近くの人の体内で暴れることがあるんですが、その場合が今回のような症状を引き起こします。とりあえず点滴と安静にすることで自然治癒力を回復させることが一番です。まれに重篤な、あ、いや、ちょっと重くなることもありますが、その時はすぐ連絡します」。いや、連絡よりも治療を優先してくれと言いたかったが黙っていた。

 しかし、今回の入院でつくづく感じたことだが、男親はクソの役にも立たん。というか、いざとなると母親べったりである。あれだけ普段は良くしてやっているのに全然ありがたみを感じていない。オレは何か必要なものがあったら、買いに走るだけ。病院の手付金を払うだけ。え、普段はクソババアとかウザ母などと言ってるくせして、こういうときはママ、ママである。父親ってなんだよ、コノヤロ。と思うことばかり。ま、いいんだけどよ。男は誰もみな無口な兵士だからよ。

 そうそう、今回の入院騒ぎの最中でちょっと不思議なことがあった。配偶者が一日病室で付き添っていた時に本人から聞いた話だ。部屋で苦しんでいた時だから、多分2日目か3日目の夜だと思う。食べることも飲むこともきつくて、とにかく部屋で寝ていたとき、何故か泣きながら「ママ、一緒に寝て」と甘えて来たので配偶者が手をつなぎながら一緒に寝た。その時に夢を見たらしい。その夢に出てきたのが、皆、死んだ人ばかりだったという。僕の亡くなった親父や弟も出て来たという。弟とは面識があるが、親父は上の子が生まれる前に亡くなっているから本人は遺影の写真くらいしか知らないはずだ。それでも楽しく話をしたという。そして僕の弟の話だ。僕の弟は脳梗塞で倒れて、約3年程植物人間状態で入院していた。最初は点滴で栄養を取っていたが、次第にそれでは間に合わなくなり胃ろうを付けたりした。毎週日曜日になると、僕は子供を連れて弟の見舞いに行っていた。もちろん相手は意識が無いので話など出来ない。子供たちはまだ小学生で、遊びたい盛りだったのに文句も言わずついてきた。特に下の子はベッドのブレーキを外して、病院内をベッドと一緒に散歩したりした。

 僕の子供は、夢とはいえやはり違和感があったのだろう。弟に「おじちゃん、ずっと入院してたがね。何回も何回もお見舞いに行ったとよ」「うん。わかっちょったよ。ありがとう」という会話をしたそうだ。さらに驚くのは配偶者の母とも会ったという。配偶者の母は僕も面識がないというか、配偶者と知り合ったときには既に亡くなっていた。何度か法事や墓参をしたことはある程度だ。僕の子供がイメージとして配偶者の母親を連想することはありえない気がする。しかし、その配偶者の母に「お母さんを生んでくれてありがとう。おかげで私も生まれたっちゃが」とお礼をいったらしい。すると相手は「そうね、役に立ったね。良かったね」と返事をしてくれたらしい。

 この話を聞いたとき、不覚にも涙が出てしまった。普段は無神論だ、アナーキーだなどと好き放題言ってるが、やはり見ている人は見ているんだな。というか、いや、そのオカルト話をする気はないし、まあ、こういう不思議なこともあるんだと思えばいいだけのことだが。そうそう、業務連絡しておかねば。リアル社会でワタクシ及び配偶者と接する機会のある方はこのエントリー、もし読まれても一切この話題に触れないで頂きたい。というか、こちらから話をするまで知らぬ顔の半兵衛でいて欲しいのだ。理由は分かるでしょ。今、配偶者と何かと波風が立っておるのだ。まあ、所詮、女子と小人は養い難しという話だが。

 ところで話は全然変わるが、『河原ノ者・非人・秀吉』という本を読んだ。表紙の犬追物の絵と秀吉には子供がいなかったという帯のフレーズが図書館で目に入り、手に取ったら面白い。特に面白かったのはサンカの話で、ページ数は少なかったが気になる部分があった。というのも、サンカという呼び名は九州ではほとんど使われておらず、代わりにカズヤンという呼び名があったという箇所。僕が子供の頃にもカズヤンとミイヤンといういわゆる乞食の人がいた。その時のことを思い出して、連想すると中々に楽しいストーリーが浮かんできた。また秀吉に実子はいなかったという論理展開は非常に興味深く、大阪の陣の不思議さもなんとなくわかるような気がしたが、これはあくまで気がしただけ。

 最後に、このエントリーのタイトルは知る人ぞ知る、F田敏雄君の名フレーズ。首を左右に軽く振りながら、発音してもらうと感じが出ると思う。

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コメント

大変でしたね。
でも、原因がわかって良かったです。少なくともそれに見合った治療が出来ますから。
父親の立場についてですが、昔、『魔法のマコちゃん』という少女アニメで「娘というものは苦しい時は母の名を呼び、危険が迫った時は父の名を呼ぶものだ』みたいなセリフがありました。完全にうろ覚えなので、内容は正確ではないですが、そんな感じの内容でした。子供心になるほどと思いました。
お嬢さんの夢、ホントに不思議です。危なかった時に、亡くなられている身内の方が守ってくれたのかもしれません。なんだかんだいっても、不思議な体験というものはあるみたいですね。
お嬢さんが一日も早く完治されるよう祈っております。

「それどころやなかったんや」の正しい使い方

(1)F田君の専売特許「それどころやなかったんや」は、「鱒を描いてる所を お袋に見つかって、言い訳してたら 出発が遅れた。」とか「見ず知らずの電車の中で、高校の同級生にバッタリ会って、『一緒にご一緒しませんか?』と誘われて そいつの方に行ったから あんたとの待ち合わせには行かなかった。」等、「『それどころやなかったんや』と言うほどの 大変な状況ではない。」時に使うものでした。今回のような シリアスな状況で使ってはいけません。 (2)娘さんと貴ファミリー、大変でしたね。まあ道が見えて来たから、回復に向かって頑張って下さい。40年前、私の母が 私が元の旧制高校である某国立一期校(K大学)に落ちた日の 不合格判明から1時間後位に 倒れました。私は、俺の不合格でガックリ来たか、少し横になってれば落ち着くだろうと気楽に考えてましたが、たまたま家に居た兄が「俺は そんなに簡単なケースではないと思う。」と救急車を呼び それが大正解でした。心臓と脳に血栓が出来ている 意識も無いと えらい状況になりました。今回の次女さんの場合も 医者を変えて 大正解でしたね。ナイス判断でした。(3)その時、母が2日位意識が戻らなくて、戻ってからも10日位喋れなかったかったのですが、会話できるようになって、「臨死状態で 死んだ父母(私の祖父母)と あの世との境目らしき所で『そっちに行きたい』、『ダメだ来るな』、『なんで?』と言うような会話をしていた。」と聞きました。落ち着かれたら 次女さんを守ってくれた 弟さん、お父さん、義母さんの供養、行かれた方がいいかもしれませんね。(4)業務連絡、了解です。実は 馬鹿話で電話しようかと思ったのですが、先日のM原家の例があるし 何か引っかかるなあ・・・と止めておいて正解でしたね。かけてたら 取り込み中にご迷惑をおかけする所でした。しかしながら 25日(土)に電話するかもしれません。付き添い等でご迷惑な時は出なくて結構です。 それではお大事に。

燐さん、お見舞いありがとうございます

今日の夕方、担当医から予想以上に経過は順調と説明がありました。本人は食欲も出て、入院生活に退屈して早く遊びたいようですが、ここでしっかり治療しておかないと一生困るぞと脅かしています。もっとももうこういう手段は通用しないので参ります。夢の話は最初に聴いたときはビックリしました。弟の口調とそっくりだったのが不思議でした。そういうこともあるんだなという感想です。

>見ず知らずの電車の中

いや、これはすっかり忘れていたF田語録でした。久しぶりに見て大笑いしました。見ず知らずの電車、ってどんなんや。それとも普段は良く見ている電車に乗って通学していたんだろうか。F田先生のお言葉は奥が深い(笑)。しかし、ご母堂の件はお兄さんの正確な判断が命を救ったのですね。ちなみに、例の件でもめてらっしゃるお兄さんでしょうか?おっと、イラン話はこれくらいにして。バカ話の件、了解しました。土曜日は子供の経過が順調にいけば、もしかして退院かもしれませんが、油断は出来ません。電話は直ぐ取れないことがあるかもしれませんが、その場合は手が空いたら折り返します。

しかし、久しぶりの長文コメントでしたね(笑9.

ええと解説しますと

まぁ、ちょっと解説しますと、そういう不思議な体験をするのにも、科学的な理由が色々あるわけです。

肝機能が低下すると一般的には、全身がだるくなり、所謂二日酔いと同じ症状を呈しますが、この症状が進行すると敗血症を引き起こしてしまいます。このような場合には、深刻な肝機能の不全に伴いまして、多臓器不全が併発されて、危篤状態になるわけです。

まぁ、娘さんはそこまでの状態では無いものの、ウィルスにより免疫系が反応したわけですが、かなり重篤な肝機能の一時的な低下が引き起こされていたわけです。このような状況では、血液中に有害成分が流されるために、所謂肝性脳症が引き起こされます。つまり、幻覚、幻聴が引き起こされ、脳の記憶野のコントロール機能の低下で、昔の記憶とかが突発的に流れたりするわけです。

まぁ、脳は自分をまもる為に、肝性脳症が起きると関門を絞って血流量をさげますから、そういう幻覚をみるわけです。そういう幻覚を基にして、脳が何らかのストーリを付加して、補完してくるので、そういう一連の「夢」になるわけですね。

まぁ、これ、あたりまえの現象ですからw いや、そちらさまの「信仰」を、どうこう言うつもりはありませんけどねw


追伸
ええと、drac-obさん、わたしのFBも見ると面白いっすよw ロックネタ多数ありますわw

大変でしたね

お見舞い申し上げます。

確かにbarrettさん仰る通りとは思いますが、そういう夢を見てしまうと何か畏怖のような物を感じるのも確かだと思います。
今年は気候が不順でしたのでお大事になさってください。

なるほど、そういうことですか

非常にわかりやすく解説してもらい感謝です。確かに、本人の知らないうちに周りの人から亡くなった人はああだった、こうだったという話を聞いたことがあって、それが脳内再生されて、その話を聞いた周りの人間が逆に驚いてしまうということですな。うん。しかし、うちのバカ娘、国語はほとんど赤点の世界でしたが、人は誰しも「物語」を作る能力があるということですかね(笑)。

あ、FBを始めるきっかけは barrett hutterさんのご招待でしたね。久しぶりにお邪魔してみます。
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