いらいらもやもや日記

 某月某日 ズーン、ズシーン、ズーン、ズシーン…、重低音が響いたかと思うと、カンカンカンカンとまるで踏切の遮断機が下りてくるようなやや甲高い音もする。いつの間にかうとうとしてしまったようだが、耳元で鳴っている雑音、騒音で目が覚めた。ただ目を開いてみても、うすぼんやりした影しか見えない。あたりを見渡そうとしても、頭も体も固定されている。裸眼の焦点がようやく定まって、自分がカプセルの中に入っていることに気がつくまで何秒かかかった。そうか、6年ぶりにMRIの検査を受けているのだ。

 1か月くらい前からだろうか、片頭痛がちょくちょくあって、その時は首が回らない(何度も書くが、比喩的な意味で首が回らないのは社会人になってからずっとなので慣れっこだ。悲しいことだが)ことと、肩が異常に硬くなっている、つまり肩こりが原因の頭痛ではないかと思い整骨院に通った。おかげで首回りは楽になり、その結果経済的にも楽になるかと思ったが、やはり慣用句でいう「首が回らない」状態は整骨院で治療しても、当然ではあるが一向に効果はない。まあ、しかし本来の物理的な首回りの痛さは解決した。しかし、頭痛は収まらないのだ。以前、何度か書いたが僕は小さいころからいわゆる「天気頭」で、曇りの日や雨降りの日は頭痛がする。いや、いっそ大雨だとかえって気分爽快なのだが、雨の降る前、つまり低気圧が近づいてくるときに一番頭痛がひどくなる。

 それなのに、ここ最近は晴れた日でも頭が重かった。また両手の痺れ、特に左手が痺れるのが気になった。僕の父はクモ膜下出血、弟は脳梗塞でそれぞれ寿命を縮めたので、血管関係は気をつけないといけない。これは一度専門医でちゃんと見てもらったほうがいいという結論に至った。それで6年ぶりに脳外科にかかろうと思い病院の会員証というか、ポイントカードみたいなやつ、あ、診察券か、あれを探してみた。以前に安くで検査してもらった脳外科のそれがどこかにしまいこんであるはずだ。病院の診察券やGSのカード、レンタルショップやスーパーなどのカードは、あれは油断しているといつの間にかたまってきて、財布がパンパンに脹れる原因になる。何かの支払いの時に、丸々と膨らんだ財布から万札をさっと抜いて支払うのはカッコいいが、カードやクリーニングの交換券、さまざまなレシート類をかいくぐってなけなしの札を払うのは大変悲しいものがある。そういう悲しい目に合わないためにも、財布にたまったカード類は別の場所にしまうのが整理整頓というものだ。

 しかし、整理整頓はどこに何をしまったかをしっかり記憶しておくか、どこかにメモをしておくことが肝心であり、どこかにしまったはずだがいったいどこにやったかなどと探し始めるようでは本末転倒である。それでもかすかな記憶を頼りに、本棚の後ろに隠れていた書類入れの中から以前診てもらった脳外科の診察券を見つけだし、仕事を休んで検査に行ったのは先日のことだった。そして、受付の人に症状を話して、検査室で血圧を測り先生の問診の結果、じゃ念のため今日MRIを撮って調べましょうという結論に至り、その日の午後に再度出直して、身に付けた金属類は全てロッカーに入れてMRIのカプセルに入っていき、拙エントリーの冒頭部分に戻るのだった。

 生まれて初めてMRIを撮った時は緊張していたのを良く覚えいてる。確か技士の人が音がうるさいからといって耳栓をくれた。そしてカプセルの中に体と頭を固定して送り込まれるのだが、今、この瞬間地震が来たらどうなるかとか突然大停電が起こって手動でカプセルが外せなくなったら、ずっとこのまま、つまりさなぎのような状態で過ごさないといけないのかとか、そういえば初期の筒井作品に反抗的な若者再教育のシステムとして「さなぎ」というのがあったな、などと妄想しているうちに検査が終わっていた。別にどこも痛い思いはせず、あ、その後支払いの時に身を削るような痛い思いをしたが、あれはあくまでメンタルな痛みであってどこかをぶつけたとか叩かれたとかいう痛みとは異なる。その時の検査では異常なしだったが、今回は何か出てくるのではないか。場合によってはそのまま入院などになったらどうしようかとか、検査前はいろいろ考えたが、カプセルに入れられたらまな板の上の鯉で、どうにでもなれとさあ殺せといったのは何処のどなた様~などと「やけっぱちのルンバ」の歌詞を思い出しているうちに寝てしまった。

 目が覚めたのは多分検査も終盤に近づいたころだと思う。冒頭のような金属音が何度も繰り返され、そうそう、途中でチューニングの狂ったエレキベースの単音が何度も繰り返され、非常階段か螺旋階段か、などと70年代末から80年代にかけて活躍した関西のノイズグループの出す音みたいな、ええと、すまん、オレにとっては騒音以外の何ものでもない音が鳴り響いたりして、かなり気分は落ちこんだ。それでも明けない夜は無いわけで、一瞬全ての音が止まったと思ったら、技士の人の「お疲れ様でした、終わりました」のアナウンスと共にカプセルから下の寝台部分が動きだし、晴れて娑婆に復帰した。

 検査が終わり、のどが渇いていることに気がついて自動販売機で缶コーヒーを買って飲んでいたら、先生が僕の名前を読んでいるのが聴こえた。さっき検査したばかりなのに、もう結果が分かったんだろうか、ちょっと緊張しながら診察室に入った。先生は、何も言わずに大きな紙袋からフィルムを取り出す。机と垂直に設定されているボードというのか、レントゲン写真をはさんで説明するところに今撮影したばかりの僕の脳の断面写真が貼られた。「うーん」と先生は言ったきりで、何秒か沈黙が続いた。おもむろに口を開いて出たのは「こっちは6年前に撮った写真で、この時は何にもなかった」。え、この時は?というと、今回はと緊張しながら言葉を待った。「今回も何にもないんですよね~。どうなってるのかな~」。「この点線部分からずっとあなたの頭の断面図を撮っていったんだけど、実に何もない、綺麗なもんだ」。「念のため血管も全部調べたけど、何もないんだよね、なんにも」。と、まるで僕が仮病を使って仕事をさぼってきたような言い方をする。

 「頭のどのあたりが痛いの」「えーと、この辺です(と左側側頭部を指で指した)」。「ふーん、で、手のしびれはどっち」「両方共ですが、左手が特に強いです」「ふーん、でも何にもないんだよね。そうそう、6年前はボルタレンという痛み止めを出したけど、あれは効いた」「あ、少し効きました」「じゃまた処方しようか」「お願いします」。ということで、いったい僕の頭痛や手のしびれは何が原因だったのか解明されないまま。とりあえず頭の中や血管関連は異常がないわけだから、その日は胸を張って呑み会に行き浴びるほど飲んでしまい、本来は野獣と化して若いおねいさんたちを食べ尽くす予定だったが、それも果たせず帰って寝たのだった。

 某月某日 以前から見たかったテレビドラマ『命のあしあと』をとうとう見ることが出来た。2010年に宮崎で発生した口蹄疫の始まりから終息までのドラマである。主演は陣内孝則、あのロッカーズのリーダーというか、パンク映画『爆裂都市(バーストシティ)』の主役というか、博多出身の役者である。そういえば泉谷しげるも悪役で『爆裂都市』には出ていたっけ。ストーリーは非常にシンプルで、児湯町(架空の町、軽トラ市のエピソードがあったので、口蹄疫で一番被害を受けた児湯郡川南町がモデルだろう)で親子三代にわたって牛養い(うしやしない、牛飼いともちょっとニュアンスが違うかな。要するに畜産農家)をしてきた陣内一家の周囲で口蹄疫が発生。懸命の防疫体制を引くが、行政の判断でまだ発症していない牛にもワクチンを接種し、殺処分を行う。翌日が殺処分という夜に、1頭の牛が出産。などとストーリーを書いているだけでも、少しうるうる来てしまう。



 ドラマの中で、泉谷が経営する居酒屋で飲んでいた地元農家の若い二人が風評被害で収入が全くなくなってしまった、それに比べて(口蹄疫の原因を作った)畜産農家は国から見舞金が入っていい身分だという嫌味を言う場面があった。聴いていた陣内が立ち上がろうとすると、泉谷が止めて代わりに何故この困難に町が一つになって戦おうとしないのかと叫ぶ。そうなんだよな、畜産農家だけが大変だったんじゃない。周囲の米や野菜を作っている農家も被害者だったし、町の小さなお店や飲食店も全て被害者だった。ドラマの中で当時の政権政党の口蹄疫に対する認識の甘さや、県と国との交渉とかそのあたりはどう描かれているか気になったが、そのあたりは一切登場しなかった。結果的に、それは大正解だと思う。政治が出てくるのは温水演じる町の役場の関連だけ、それも非常に淡白に描かれていた。

 1時間のドラマだが、当時のいろいろなことが思い出されて、やはり泣いてしまった。牛の話しか出てこなかったが豚も相当数殺された。拙blogでも地元紙に掲載された豚の市街の記事をアップしたことがあった。しかし、ドラマを見てちょっと驚いたのは、このパンデミックが実はたった3年前のことだという点。口蹄疫で畜産を止めてしまった農家も多かったと思う。ドラマの中でも陣内の尊敬する牛養いが、殺処分のため精神に異常を来たし、認知症と診断される。そのようなさまざまな悲劇を乗り越えて、昨年宮崎牛は日本一になった。それはとても素晴らしいことで、僕も誇らしく思ったのは「どうだ、復興したぞ」という表現は当事者の誰からも出ず「全国の皆さんの支援のお蔭」という謙虚な表現をしていたことだ。僕を見ていると嘘だと思われるかもしれないが、南九州の人間は謙虚なんだよ。

 さてドラマを見終わって現実に戻ると、「ぶれない」とか「日本をトリコモナス」とか「TPP断固反対」とか言ってたはずの現政権政党のアベチャンが、聖域が確認できたからTPP交渉参加すると胸を張って宣言した。農業は3兆円ほどの被害を受けると試算しているにも関わらず、そのほかで儲かるからエイントチャウとか言うのだ。いや、ことは農業だけじゃなくて国民皆保険制度や郵政システム、全ての我がポンニチの存在に関わるものじゃないのか。だいたいTPPなんつっても、相手はあのアメリカ様だろうが、宗主国ですよ。勝てっこないだろ。地元選出の国会議員は全員TPP反対を公約として当選した。口蹄疫の時に一生懸命当時の政権政党に交渉や批判をして男をあげた江藤議員も先日の新聞では、交渉の実を如何に有利にするかという、条件闘争にシフトした。だいたい、中韓が参加していないことみても、TPPの胡散臭さは分かるんじゃないか。

 うーん、このところの頭痛の原因はこんなところにもあるんじゃないかと考えてしまうここ数日でした。

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コメント

ああはいはい

脳ドックは必要ですよね。昔は血管に造影剤入れたり大変でしたけど、核磁気共鳴による断層写真とか半減期の短い放射線マーカーを入れて糖代謝をみたりすることで、大部詳細なデータをとることができるようになりました。ただ、費用面でまだ高かったり、保険の適用がなかったりしますが、そちらさまは、持病があるので保険適用される範囲で、必ず定期的に断層写真を撮ることをお薦めしますw

ありがとうございます

振り返ってみると、実に6年ぶりの検査でした。まあ健康診断はとりあえず受けていますが、頭の中はよほどの自覚症状でもない限り、ついついそのままにしてます。しかし、よくよく考えてみると何かあったらアウトというか、症状が出てしまったら仮に命が助かっても、重い後遺症が残ってしまったりとか意思表示が出来ない状況になることもあるわけですから、転ばぬ先の杖で定期的に検査を受けるようにします。
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