ジャズナイトな夜 その1

 昨年、久しぶりに見たジャズナイトが今年も開催された。今回のテーマは「classic is new style」。偉そうに書いたが、実は先ほどジャズナイトのホームページを見ていたら書いてあった。なるほど、それでメインはナベサダとヒノテルという両巨頭だったのか。この手のイベントというかライブには必ず参戦するY尾君と、前の週にROCK BARでじっくり傾向と対策を練って迎えた今回の野外コンサートだが、いつもと違ってメンバーも増えて旧交を温めながらの楽しいイベントであった。というのも、ROK BARのマスターから同級生のS尾君が転勤で宮崎に帰ってきていることを教わり、その場から電話して一緒にライブを見ないかと誘ったら、ちょうど彼も知り合いのジャズピアニストが出るので見に行く予定だったと二つ返事でOK。さらに前回一緒に遠藤ミチロウを見たS藤君にもメールで誘ったら、確定ではないが行けたら行くとの返信があった。

 去年は18時ちょうどに会場に着いた途端、阿川泰子の「A列車」が流れてきた記憶があったので、今年もそれくらいの時間に行けばいいかと思ったが、何しろナベサダとヒノテルという我が国のジャズ界を代表する両巨頭が出るイベントなので、推定3万人くらいの観客が予想され開演時間の18時に行くと立錐の余地もないのではないか、とこれは普段から心配性な僕の予想。もっともその可能性は無くは無いと判断したY尾君と、それじゃ当日は16時にバスターミナル兼ダ○エー、まあ地元の人には宮交シティといえばわかる場所で待ち合わせをした。そこで飲み物と食べ物を買って、土曜の夕方から半日じっくりジャズを聴こうという算段である。ところが、この毎度毎度色気のない野郎ばかりの集まりに、ちょっとした浮いた話が飛びこんだ。先述したS尾君はメディア関係で働いているのだが、なんと当日仕事仲間の女性を連れてくるというのだ。名前を聞いて僕は驚いた。え、ウソ、あの人が来るなら、いや、ちょっと服装も考えないと、食べるものや呑むものをいつもの発泡酒とかカップの霧島なんかじゃバイヤーだろう、せめてスパークリング・ワインとか、あ、ハイボールなんか壱岐対馬地方、いやいや粋でいいんじゃない、などと妄想していたら、何のことは無い。当日、S尾君から電話があって、「ちょっと相手の都合が悪くなったからオレだけ参加する、だから飲み物とか買いすぎなくてもいい」などと、まあご本人はほとんど下戸だからいいんだけど、そういうことで好事魔多しというか、取らぬ狸の皮算用というか、下心行動委員会は不発であった。

 それでもこういうイベントの準備というのは楽しくて、随分昔に業務用で買い込んでいてブルーシート(3.6m×5.4mだからおよそ12畳の広さ)とタオルや保冷剤などをリュックに詰め込み、ついでに飲み物はダ○エーで買うより近所のドラッグストアの方が安いと思い、缶ビール半ダース、黒霧島5合、ノンアルコール飲料2本、ミネラルウォーター1.8リットル、乾きもののおつまみなどなどを買い込んで準備に怠りなかった。そうこうしているうちに約束の時間になり、Y尾君から催促の電話は入るし、S藤君からも少し遅くなるが行けそうだというメールは届くし、そうそうS尾君からは先に車で行くので17:30くらいには現地で待っていると電話が来た。

 リュックを背負い、手には保冷バッグに入れたビールなどを持ちながら、待ち合わせのバスターミナルに向かって歩いた。おかしい、普段なら5分もかからない距離なのに、歩いても歩いても小舟のように 私はゆれて、ゆれてあなたの腕の中に入ってしまうとブルーライト・ヨコハマであるが、変だ、15分歩いてもまだたどり着かない。ようやくバスターミナルが視界に入った時に気がついた。普段は自転車で行くことが多いので、自転車の移動時間で計算していたのだ。待ち合わせの時間に20分も大遅刻をしてしまい、ひたすら謝りながらY尾君に合流。バスは16時30分と次が17時17分と2本あるらしい。もっとも僕が遅刻したために、まだ食料品の購入が出来ていない。そのため不本意であるが17時17分のバスで行くことにした。ということは到着時間は昨年と同じく18時前後になりそうだ。とりあえずS尾君に電話して、そちらが先に着くはずなので4人がゆっくり座れるよう場所取りしてくれと頼む。それを聞いていたY尾君が、一人で4人分の場所取りをさせるのはかわいそうだと言っていたが、何、S尾君は昔から押しの効くタイプというか、この手のことは苦にしない奴だから大丈夫だと無責任に答えるのはワタクシであった。

 ダ○エーの総菜コーナーでフライドチキンにメンチカツなどの揚げ物やキュウリの漬物やオクラの丸ごと1本の酢の物など、いかにもオジサン好みのつまみを買って、さらに焼酎のロック用に氷を買おうとしたが、氷は溶ける。これはバスの時間ぎりぎりに買おうと相談し、とりあえず買い物客がスナックやファーストフードを食べたり休憩したりするスペースに座っていたら、Y尾君がにこにこしながらつべたい缶を手渡してくれた。缶入りチューハイである。こりゃ喉の渇きにイイネ、なんていいながら呑んでみると結構きつい。胃にごつごつ来る感じ。いや、これはライブの前に出来上がるなどと喚きながら呑み干し、時間も来たので氷を買って大急ぎでバスに向かった。

 僕の予想では、このコンサート会場に向かうバスには長蛇の列が並んでいるはずだったのだが、定刻に登場したバスに乗り込んだのは僕とY尾君の二人だけであった。そうか、他の人たちはそれぞれのバス停から乗り込んでくるわけか、あれ、バス停をいくつか通過したけど地元のお年寄りとか高校生とかしか乗ってこない。あ、パイプ椅子を持ったカップルが乗って来た、この人たちはジャズナイトに行くんだろうな、お、また中年カップル発見、こりゃ不倫だわ、うん、間違いない。こういう時男は意外と小心で女の方が堂々としてるな、職場の上司と部下なんて関係ですかね、それとも、などとまたもや妄想しているうちにバスはどんどん目的地に向かう。しかし、バスが満員になることもなく乗る客あれば降りる客ありで、会場に着いたとき降りてきたのは十数人だった。

 去年も感じたのだが、このイベント会場、バス停からかなり歩かないといけない。5分以上は優に歩く。会場が松林の中だから仕方がないかと思っていたが、よく見ると会場に入り口直ぐ近くに駐車場がありバスの乗り入れも可能である。ま、いいんだけどホテルの駐車場や通路を歩いて会場に向かうのはあんまり風情があるものではない。関係者各位はこのあたりの改善を図ってはどうだろうか、え、歩いてる途中で南国宮崎の暑さにヤラレテ、爺様や婆様が倒れたらどうするのだ、などと八つ当たりをしているうちにやっと入り口テントを発見。サービスのスポーツドリンクを1本手渡してもらいながら、チケットをもぎりのおねいさんに渡す。そこからステージ横まで歩いて、S尾君にメールしたら前から5列目くらいのかなりいい場所を体一つで確保してくれていた。さっそくミニパイプ椅子を組み立てようとしたら、この場所は椅子はダメ、地面に直接座ってみないといけないとS尾君が仕切る。まあ場所取りしてもらってるので、素直に従いブルーシートを広げて男3人、食べ物と飲み物を広げてステージを見た。

 オープニングはJABBERLOOPというメンバーの一人が地元出身のクラブジャズのバンドだったが、そちらは17:30スタートだったので見ていない。僕が見た最初のグループはギラ・ジルカと矢幅歩という男女のボーカルをメインとしたユニットだった。ステージに出てきたギラ・ジルカを見てクリビツテンギョウ。パイオツのカイデツなこと、まるでロンメかカイスである。いや、その、嫌らしいとかスケべとかそういう不謹慎な視線ではなく、なんというか純粋にですね、いや、その、とにかく前かがみになったら会場の男性陣から「オーッ」という声ならぬ声が聞こえてきたのは間違いない。1曲目のイントロが軽快に流れてきた。♪Raindrops on roses and whiskers on kittens~、おっと、「マイ・フェイバリット・シングズ」ではないか。その昔、五木寛之のエッセイに「わたしの好きなもの」みたいなテーマの話があって、レモンの切り口とか洗ったばかりのブルージーンズが好きという女の子に会ってみたいなんて書いてあったが、まあ、異議なしである。そんなことはどうでもいいか。



 去年は最初から最後まで女性ボーカルのユニットだけのコンサートだったので、楽しい反面やや食傷気味なところもあったが、まだ青空が残っている海沿いのサッカー場で聴くジャズのボーカルはなかなか良かった。S尾君にも「オープニングはこんな感じでゆったり始まるのがいいな」などと話していたら、先ほどのチューハイでやや酔いが回ったY尾君が「いや、ボーカルはもっと暗くなって回りが見えなくなってからの方がいい」などと言い始める。まあこちらも軽快にビールを飲んでいたので、適当に話を合わせていたら、前の席にいた人から突然「どういう順番がいいんですか」などと話しかけられてきてちょっと焦った。その圧倒的な胸で、会場の半数である男性ファンの心をしっかりとらえたギラ・ジルカと、あ、お前もおったんか的存在では決してなかった矢幅歩のラストは「スペイン」で決めてくれた。まるで早口言葉みたいな歌詞と切れのいいリズムの歌で会場を大いに沸かせた。

 最初のグループが終わり、ビールを大量摂取した結果引き起こされる余剰水分を体外から排出するために、しかるべき場所へ移動しようとしていたら地元のテレビ局のアナウンサーが「次はこのコンサートのための特別ユニット、土神です」などと紹介している。何、いきなり2番目に土神の登場かと大急ぎでトイレを済ませて席に戻った。用意してきたプラスチックのコップに氷を目いっぱい入れて黒霧島をトクトクトクと注ぐ。準備はOKである。臨戦態勢十分である。

 何の挨拶もなくメンバーが出てきた。サックスの林栄一は何度かライフタイムで見ている。ドラムの本田珠也はZEK3として宮崎に登場して以来、ライブは1度も欠かしたことが無い。そしてピアノのスガダイローだが、この人は全然知らなかった。中国人みたいな服を着て(それも金ぴかの)、ピアノに座ってから演奏が全て終わるまでの小一時間、手は一時も休まず額から汗を滴らせながら弾きまくった姿に会場中が注目した。もともと林栄一もタマヤさんも愛想のいいほうではないので、MCに期待はしていなかったが、いやもう挨拶なしでブッ飛ばすこと甚だしい。3人が3人とも個性を発揮して圧倒的な演奏であった。オレの脳髄にヒイヒイと響いてきたこの3人組をオレは一生忘れないだろうと殿山泰司が生きていたら間違いなく断定しただろう。



 実は、この土神はジャムナイトの前の水曜日にライフタイムでライブを行っていた。S尾君の職場の人が見に行ったらしくて、「凄く良かったですよ、見逃したのはもったいない」と散々言われたらしい。いや、僕もそのライブに行きたいと思っていたが、なにせシホン主義の国に住んでいるために働く能力はあっても収入に格差があり、いや競争の自由はあるがライブを見る自由は束縛されている、早い話がお小遣いが足りないしどうせジャズナイトで見られるからいいとパスしたのが不幸の始まり。こんなことなら借金してでも見に行くべきだった。とトラタヌを数えて涙を浮かべていました。しかし、このユニット、この時期だけの限定ってのはモッタイナイ。ぜひともZEK3と一緒にまた来てくれと切に願うのだった。もうね、この演奏のすさまじさは筆舌に尽くしがたい。このライブ見られた人は本当に幸せ者です。いつものライブならこっそりデジカメで録画したりするんだけど、この日はそういう姑息な策動も出来ず、というかあまりの物凄さに一点凝視でまるで地蔵のように固まって見ていた。実際、彼らの演奏が終わった時に地響きのような拍手と歓声が上がった。これは決して誇張じゃない。何しろ特別ユニットなのでYOU TUBEにも動画が無かったので、林栄一のソロを貼っておく。先ほどの2人の演奏にこのサックスが絡んだものを想像、出来ないか。1+1+1が∞に変化したユニットだからな。こういう例えをして土神の3人には大変申し訳ないのだが、70年代の山下トリオをちょっと連想してしまったことを正直に書いておく。



この次に演奏するグループはやりにくいだろうなと話していたら、中学生ドラマーの大我のユニットが登場してきた。うん、上手いんだけどね。さっきの土神のような人の生き様というか、思念というか魂というか、そういうものが感じられないのだ。もちろん、まだ中学生なのにスーパーテクニシャンだというのは分かるんだけど、オレの魂をヒイヒイ言わせるような演奏するにはウン十年早いで~とタイちゃんが乗り移った僕は叫ぶのだった。その昔、まだフェニックス・ジャズインといってオールナイトのコンサートだったときに見た渡辺カズミの演奏と同じ感想を呟いた僕は成長が無いのだろうか。という問題提起をして第一部を終了する。あ、大我君もそれなりに良かったんだよ、ただその前に化け物ユニットがいたのがちょっと可哀想だったというお話。




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コメント

JAZZ Fes

ナベサダのバックのBas,納さんだったんだ!
今月末、岐阜でセッションLIVEが2日間あるから、会いますよ!
たぶん終ったら、ういの店に飲みにきてくれると思いますよ!!

Face Book もいろんな方からお誘いありますが、保留です。(笑)

THIS BOYさん、お久しぶりです!

今ちょうど、この話の続きを(長期間ほったらかしにしていたけど)下書きしていたところでした。いやー、ナベサダグループ、もう凄かったですよ。その前のヒノテルがちょっと小難しい感じというか、DJホンダとかを起用して、クラブというかその手の演奏だったので、やや不完全燃焼していたけど、ナベサダグループのグルーヴで一気に盛り上がりました。そして、アンコールは、なんつったってああた、ナベサダとヒノテルという両巨匠の2ホーンですよ。もう、自然に全員総立ち。サイコーでした。

>Face Book もいろんな方からお誘いありますが、保留です

うん、良し悪しあるけど、機能はいろいろありますね。でもmixiもやってFBもやってとなると整理が大変。そういえば、以前は毎日のようにmixi更新していたのに、最近はおとなしいですな。そうそう、今週末に25年ぶりくらいに京都に行きます。レポートアップしますので乞うご期待。
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