楽しいバス旅行顛末記

 家に帰ってポストを見たら、何やら透明なビニールの袋に入った封筒があった。配偶者宛の郵便物だと思い、手に取ってみると旅行がどうたらとか書いてある。だいたい郵便ではなくブラックキャットヤマトのメール便だったので、毎度毎度のスパムというかジャンクメール、いわゆるダイレクトメールだと思いゴミ箱に投げ捨てようと思った瞬間「旅行招待券在中」という赤文字が見えた。え、何、招待券、どうせ何かの勧誘じゃないの、と思いながらもスケベ心が勝り封を開けた。そこには「ご当選おめでとうございます」と大きく書いてあり、その下に「平素は××各店をお引き立て賜り誠にありがとうございます。さて、このたびは『2012年お客様大感謝キャンペーン!!』にご応募いただき、誠にありがとうございました。抽選の結果、2等の『日帰りバス旅行』にご当選されましたのでご招待させていただきます…」という文が続いており、ようやくいきさつを思い出した。

 実は、1か月ほど前クリーニング屋に汚れ物を持って行った時に、そこの店のおばちゃんから「今、福岡への1泊旅行が当たるキャンペーンをやってるから応募せんね?」と言われ、まあ、どうせスカだろうと思いながらも福岡へ飛行機で往復、ホテルも付いてるという宣伝文句にひかれ自分の名前を書いた。すると、おばちゃんは「奥さんの名前も書いて入れないよ。いっちゃが、いっちゃが。」などと勧める。ほな、お言葉に甘えさせてもらうわ、と心で呟きながら配偶者の名前でも応募した。どうやら1等は外したらしいが、2等の日帰りバスツアーが当選したらしい。パンフレットを見ると「北原白秋が愛した水郷柳川川下りと熊本きくすい、豪華昼食&ジュエリーの旅(一部省略)」などと謳っている。福岡と熊本の日帰りバスツアーで豪華食事、ええんちゃう、でもこのジュエリーってなんだろう、ま、細かいことはいいか。しかし、オレじゃなくて配偶者が当たったのか、と、やや気落ちしながら読んでいくと、出発地のところに招待者は無料だが同伴者は実費を払えば参加できると書いてある。金額は平日10,290円。うーん。それほど高くは無い。いや、普段の質素な生活からすると、たかがバス旅行に1万両も払うのはいかがなものか。そのように浮かれている間に、北にある挑戦的な国が人工衛星スタイルのミサイル発射したらどうする、などという考えも一瞬浮かんだが、ここしばらく旅行らしい旅行はしていないことに気がついて、ええい、有休も残っているしここは清水の舞台から飛び降りたつもりで、いったれ、この、よっ太っ腹、などとたかが1万円くらいの旅行代金を考えただけで萎えていく自分の貧乏性に蹴りをいれ鼓舞した。

 で、配偶者に「これこれ、当たったぞ。お前、行ったらええわ」とパンフレット渡すと、物事を素直に信じられない敵は、胡散臭げに「何ね、また何か悪いこと考えちょるとね」などと斜に構えている。「とにかく読んでみ」と促すと、だんだん表情が変わってきて、「なに、これ、お金要らんと?タダ?いくいく」などとまあ、手のひらを返したように態度が変わる。「土日は混んでるから平日行かんと無理だろうな」と話すと、「それは休みを取れるからいいけど、一人で行ってもつまらんから」などという。ここがタイミングと思い、「うーん、オレも有休ちょっとあるから、何やったら行ってもええぞ」というと、「あ、行こう行こう。そうだ、お母さんも誘って行ったら。あんた何にも親孝行らしいことしてないし、もうすぐ母の日だから」などと、言い出す。しかし、配偶者の言うことももっともで、よくよく考えると、当方が大学に進学して以降、親は1日たりとも安心した日は無かったのではないか。挙句の果ては大学を6年も行って中退し、就職は訳の分からない会社に入ったと思ったら、やれ関東だ鹿児島だ、熊本だと地元にいた試しは無いし、挙句の果ては倒産して持ち株は全部鼻紙になるわ、やめよう、あまりに悲しくなってきた。ま、それくらい親不孝は貫徹してきたということだ、エヘン。

 まあ、たかだか日帰りバス旅行に連れて行くことが親孝行になるかどうかは別にして、普段は僕の母親と折り合いの悪い配偶者が珍しく一緒に行こうなどというので、渡りに船だと思い、実家に行って話をすることにした。おっと、その前にパンフレットにあった「世界中のジュエリーを取りそろえたジュエリーファクトリー」とか「「世界中のジュエリーを厳選し、製造・展示・販売している」などという文字に敏感に反応した配偶者と仁義なき戦いがあった。「これ、何ね」とそのジュエリーなんたらのところを指さしするので「あ、ジュエリーちゅうくらいやから、宝石やろ」「そんなことは分かってる。で、ここで私にジュエリーを買ってくれるとかいう気持ちは無いと?」「え、なんで?」「なんで(怒)。あんたは今まで私に何か貴金属とか服とかアクセサリーとか買ってくれたことがあったね?」「ない」「少しは自分の嫁にそういうものをプレゼントしてやろうという気持ちは無いのね」ここで正直に「ない」と答えた日には、壮絶なるバトルが予想できたので、しばし考えた。

 「うーん、えーと、その、ご、ごせんえんくらいだったら、うん、五千円だったら買ってやる」と今の僕にできる最大限の譲歩というか提案をしたら、何故か烈火のごとく怒り始めた。「何考えちょっとね、あんたは。あ、五千円で何が買えるね。え、ゼロが二つか三つくらい足りんわ!!!」「え、ちょ、ちょ待てや。おま。おまえ五千円て大金やぞ。ブコフの中古CDやったら10枚買えるぞ。もっと古いやつやったら20枚、うんCDが20枚買える金額や。CDちゅうのは昔のLPレコード2枚分くらいのデータは入るから、たとえば500円のCD10枚分ちゅうのは、昔のレコード20枚分の価値がある。で、昔はLPレコードは1枚2千円、いやその後は2500円になったから、2500かけるの20は、え~と、ご、五十万の価値があるわけや。だから、この五千円をただの五千円と思うな、気持ちの上では五十万の価値のある五千円や」などと、詭弁を弄したが当然怒りは収まらなかったが、毎度毎度のことなので呆れ果ててしまったようだ。

 というわけで、日曜日に配偶者と一緒に実家に行き、母を誘ったらこちらも二つ返事で柳川の川下りが楽しみだとか、今から体調を整えておかないとなどと気の早いことを言う。配偶者も母と一緒になって、あれもしたい、これもしたい、で、やっぱりジュエリーは見るだけだとつまらないから、一緒に見てもしいいものがあったら、などと夢を見ている。その二人の会話の中でちょっと気になる発言があった。パンフレットを見ていた配偶者が「えーと、この旅行を企画しているところは、なになに大阪府知事認可、あ、ハシモトさんが許可している企画だって」などという。ハシモト市長の推薦文でもあるのかと思って見たら「大阪府知事登録旅行業」と書いてある。「アホ、お前、旅行業者というのは本社のある自治体の長の許可がいるわけや、だいたいハシモトはもう知事じゃない、市長だ」と指摘して、そういえばこの旅行会社はどんなところなんだろうと気になった。というのも、以前大手の旅行会社の企画したツアーに参加したことがあるが、とにかくスケジュールはぎゅうぎゅうで、土産物店のバックマージンがあるせいか、くそしょうもない土産屋で時間を取られたり、あまりいい印象がない。それに第一、オレはハシモトは大嫌いだ。あ、これは関係ないか、誤爆だ。

 しかし、ちょっとネットで調べてみようと思い、その旅行会社の名前で検索したら、いろんなblogにヒットして、「楽しかった」とか「得した」とか良さげなことがたくさん書いてある。2つ3つ他のblogをのぞいてみたが、どれも同じ感じだった。ま、大丈夫かなと思いつつも検索していると、ちょっと妙な記事にヒットした。「お一人様無料ご招待の裏側」というものだ。あれ、うちのパターンと、いや、まだツアーに参加してないけど、同じじゃないか。やや、不安感が増して、他にも検索してみた。「宝石見学で90分はきついって」っていう記事もあった。ますます不安になる。さらに2ちゃんでは目一杯スレが立っていた。国民生活センターにも「バスツアーで訪れた展示会場でからだによいと宝石を販売する業者」などと、それ風な相談が来ている。

 この検索結果を配偶者と母に教えたら、二人とも口をそろえて「やっぱり話がうますぎると思った」。「まあ、それでも1人はタダだし、要するにジュエリーなんぞ買わずに無視したらええねん。それか、具合が悪いいうてバスの中で休んでいたらええんちゃうか」と提案したが「それでも、その後お昼をバクバク食べていたら変だと思われる」とか「いや、そんな宝石とか見せられて黙って見ているなんて出来んわ」とかまあ勝手なことをいう。しかし、何故か家族で旅行したいという気分は盛り上がったままで、バカ娘二人は大学があるので留守番させて、たまには親はのんびり旅行でいいじゃないか。そうだ、何年か前に行った長崎がとても良かったから是非もう一度行こうと誘うが、長崎は交通の便が悪いと却下。九州新幹線に乗ってみたいと、普段は犬猿の仲の配偶者と母が何故か同じ意見。んじゃ、鹿児島までバスか電車で行って、そこから新幹線に乗って適当なところ、熊本か福岡で降りて一泊して、帰りは阿蘇の阿蘇ボーイに乗って帰ろうかと、これは予算というものを全く度外視した話も出たが、とりあえず平日に家族で小旅行をする羽目になった。バス代1万ちょい、ジュエリー代5千円ちょい、締めて2万でおつりがくると考えていた僕は、途方に暮れているのだ。ベイビー、途方に暮れてるのさ~。オイラ途方に暮れてるのさ。



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コメント

私も以前、薬屋の懸賞でバス旅行に当たったことがあります。
得てしてそういう企画はお買いものさせるのが目当てで、だいたいそーゆーところが観光コースに必ず入ってます。
まあ、要はいらんもんは一切買わなきゃいいんですよ。
そーゆーのは金持ちに任せて、貧乏人は旨いもん食って温泉・・・はないのか、川下りして目いっぱい観光して帰ったらいいんです。

いや、僕も大人ですから(笑)

業界の内幕バクロなんて気もないけど、ちょっとやり口がいやらしいかなと。クーリングオフの網の目をかいくぐって、旅の興奮冷めやらぬうちに買わせるってのは、変則的なSF商法じゃないかと。本来は、参加して文句垂れるところですが、結局このバス旅行は却下され新たな企画を考えていますが、どうなることやら。あ、燐さん、ストラの話はもう少し待ってね(土下座)。

二回行きました

寄る所が 普通の土産物屋ならともかく 毛皮屋とかで、チープなスーパーの客には合わないだろうに そんなのとセットされてました。二回目が 目的地が三方五湖なのに 出発して高速に乗ったら大渋滞。観光ははしょりまくり それなのに岐阜の毛皮屋は 時間たっぷり。三方五湖に到着したものの すでに夕方、30分弱の滞在で再び帰路へ でした。これで もう行かんぞ となりました。こうした団体は、接客係も分散するからまだましですが、家族で行った海外パッケージツアーでは、毎日 宝石屋が入っていて、店員がはり付いて来て、往生しました。そのうちの一軒は、入った瞬間にシャッターが閉まって…でした。

親孝行できるときにやっぱり!

そんな世界があるんですか。旅行の応募したこともないんで、まぁおれなら軽く引っかかっていたかもです。バスだとはとバスツアーで温泉とかありましたけど、あれは快適ですね。トイレが気になるのが玉にきずですが。
ところでブログ、デザイン変わったんですか。

デューク先輩、そこですよね

大体、安い金額が売りのクリーニング屋を使ってる客なんだから、ジュエリーとか毛皮とか無縁だっちゅうの。せめて、地元の名産品とか旅の記念になるものだったら、多少金額が張っても一か所でまとめ買いできる便利さがあるから利用しないでもないんですけどね。

海外方面の思い出では、グァムだったと思いますが会社の先輩たちと同じタクシーに乗って何やら人里離れたお店に連れていかれました。案内した運転手は店に入るや否や他人のフリ。強欲そうな婆あが何か買わないと出られないと凄みます。しょうがないから、何か買おうと思ったら、どの商品も服を着ていないおねいさんの写真が張ってあります。先輩の一人が「これ国に持ち帰れない」というと、婆あはにっこり笑ってチョコレートの箱を出し、なんとその箱の引き出しに件の雑誌を入れて梱包すると、あーら不思議。どう見てもマカデミアナッツ。これならバレないと大喜びした先輩でしたが、帰りの税関では係員が棒でチョコレートの箱を上から押さえつけて、箱全体がしなる場合は別室に連れて行って没収というパターンでした。当然、会社にもバレて営業成績不良だった社員は見せしめに首になりました(その先輩は説教で終わり)。あ、ワタクシは、そのような雑誌類などは購入しません。トランプを買いました。しかし、一度も使ったことありません。良かったらお譲りしましょうか(笑)。

ズトさん、昔の京都N川の羽毛布団の

CMみたいなこと言わはって(笑)。クソ生意気なガキンチョが「おとうちゃん、お婆ちゃんに京都N川の羽毛布団買うたって。親孝行は生きてるときせなあかんて、いつも言うてるの誰や」っていうやつ。あれは無茶苦茶嫌いでした。と、ここまで書いてYOU TUBEで件のCM探したら見当たらず、代わりにこんなの見つけました。何やら、パチモンで騙されたって感じですかね。意味は分かりませんが、何やら告発するぞという気迫だけは伝わりました。
http://youtu.be/1GaP8FdwoFE

Re: 親孝行できるときにやっぱり!

あ、blogデザインですが、前のやつにFBの機能を付けようとして、HTMLタグをいじっていたらぐちゃぐちゃになったので、以前使ってたデザインに緊急避難です。でも、こっちのほうがすっきりしていいかな、気分転換にもなるので、当面はこのままいきます。つって、すぐにまた変えたりして(笑)。

クビとは キツイね

私も 昔、帰国の税関で引っ掛かりましたよ(笑)。今から30数年前は、海外旅行で 無修正を買うものでしたね。弟に頼まれて、プレーボーイの無修正版を買って帰った女子社員もおりました(笑)。彼女はセーフでしたが。当時は、双方の入国で よくスーツケースを開けられ 没収と税関宛始末書みたいなのを 書かされました。

それが、当時のトレンドでした(笑)

男なら誰しも通る道ですな。猪木も「迷わず行けよ。行けばわかるさ。」と言っております(笑)。

首になったのは、もう本当に営業成績がひどすぎて、ちょっとそのまま会社にいても本人にとってはつらいんじゃないかという配慮(?)もあったようです。結局、転職して良かったと後日聴きました。しかし、その時は社長が「会社は業績の悪い社員の首を切る機会を狙っている」という発言に頭に来て、当時の気の荒い連中と一発事を起こすかという話になりましたが、見事コミッションや外車などで釣られる奴ばかりであっさり崩壊。いやー、経営者ってしたたかだなとつくづく思いました。
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