We are open tonite for fun



およそ1か月ぶりのロックバーでの店番。開店前にセレクトしたのは、ウィングスのラストアルバム。大学5回生の頃だから、79年に購入した。翌年、ジョンが暗殺され、いやその前からもそうだったけど、元ビートルズで一番人気はジョンだった。少なくとも僕の周囲は。ジョンは哲学者で反戦活動家で、愛と平和の人で、とにかくすごい。

それに引き換えポールは千年一日が如く、くだらないラブソングばかり歌う能天気野郎と小馬鹿にされていた。僕はジョンも好きだったが、ポールも大好きだった。メロディメイカーとしては、ジョンを凌ぐと思っていたし、結構前衛好きというか、新しい事に取り組むのが好きだけど、それをポールの色に染めてしまうので、なかなか回りに理解されないところがある。

それはさておき、このアルバムの目玉は、ロックバンドでオーケストラをやる、ロケストラの演奏だが、それ以上にポールのメロディメイカーの才能が際立っている。今日のエントリーのタイトルも、このアルバムの収録曲からいただいた。今晩、営業してるよ、という意味。

前に書いたが、この頃、祇園のクラブでバイトしてた。同じサークルの先輩と後輩の3人でバイトしていて、開店前の楽しみは有線にリクエストすることだった。ある日、まだ有線に誰もリクエストしていない時に、ふと僕の口からsay you don't love himというフレーズが出た。このアルバムの中のゲッティング・クローザーという唯一のシングルの歌い出しだ。すると、その直後にジャーンというイントロとともにゲッティング・クローザーがかかった。あのときは驚いたが、のちにdrac-obは有線の姉ちゃんとデキてるというデマを飛ばされた。もちろん、そんな事を言うのは元ボーリョク学生のT原さん以外いない(笑)。





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レコードコンサートも企画は大変だという話

 勤労感謝の本日は、市立図書館で行われたレコード・コンサートに行ってきた。レコード・コンサートとはずいぶんレトロな名前のイベントだが、これを主催しているのが宮崎真空管アンプ愛好会という団体。そこがボランティアで毎月市立図書館で様々な企画を行っている。このイベントに初めて参加したのは今年の2月11日。その時は、ジャズの名演奏聴き比べ的なメニューで、ビッグバンドからフリーまで幅広く聴けて、特に感動したのはフィル・ウッズのファイブ・スポットのライブ。なんとピアノは大好きなデューク・ジョーダンで演奏はゴリゴリのハード・バップ。しかも真空管アンプも複数あって音の比較もできたし、レコードがモノラルかステレオかでカートリッジを交換するという丁寧さ。2時間あっという間でした。これで味を占めて次のトランペット特集にも参加したが、こちらはしんどかった。トランペットのリーダー作を2時間続けて聴くのはちょっとした苦行。最後にドン・チェリーをかけるはずだったが、聴いてるお客さんの疲労度を見て中止したのはまさしく英断だった。

 ま、そういうことがあったので今月、図書館の掲示板に「JAZZスタンダードナンバー聴き比べシリーズ第3弾 アランフェス」というリーフを見たときも、少し考えたが参加はあまり気乗りがしなかった。しかし、昨日、エントリーにもアップしたが地元の公立大の学長が突然亡くなり、そのことを関係者に連絡していたのだが、その中の一人であるY尾君から電話があり、一通り林学長と一緒に参加した「ジャズとアメリカ文学入門」の市民講座の話をしている途中で「ところで明日、図書館でアランフェスの聴き比べがあるから行こう」と誘われ、勢いで行くといってしまった。こういう場合は突然のハライタによるゲルニなどの対応もあるのだが、まあものは試しというし、前回のラッパ大会のようなことはないだろうと最終的には行くことにした。実は別の目的もあったのだが、それはまだマル秘企画なのでここにはかけない。

 ということで、13時30分開演のレコードコンサートに15分前に到着。入り口ドアに数名人がいる。意外と今回は参加者が多いかもしれんと焦って会場に入ったら、100人ほどの席に10数人くらいの入り。真ん中より少し後ろの中央席を確保。もらったプログラムを見ると下記の通りだった。

 1曲目はDorothy Ashbyというジャズハープ奏者のアランフェス協奏曲。音源はLPレコード。ジャズのハープシコードプレイヤーというのはアリス・コルトレーンくらいしかいないと、これはこのレコードコンサートのMCの言葉だったが、確かにジャズでハープ奏者というのは聴かない。1曲目の演奏でこちらも体力気力が充実していたので、非常にすんなり聴けた。家に帰ってYOU TUBEで検索したら、かなりアップされていて本日聴いた演奏もあった。録音は83年で日本企画盤だ。ま、いかにもアランフェスという感じの演奏。しかし、この曲のイントロ聴くと反射的にチック・コリアの「スペイン」を連想してしまう。



 2番目にかかったのはローゼンバーグ・トリオというジプシー・ギター・トリオ。音源はCDで、ジャンゴ・ラインハルト直系もギター・トリオ。リズム・ギターとベースが兄弟で、リード・ギターが従兄弟という血の濃いトリオだ。どこかで聞いたようなバンド構成だなと思ったが。なんだビーチ・ボーイズみたいじゃん。しかし、ジプシーというのは今はサベツ用語になっているのでロマというのは有名だが、じゃなんでジプシーがあかんかというと、要するにヨーロッパ中を移動、定住を拒否し歌舞音曲で生活費を稼ぐ。宗教はキリスト教ではないし子供はかっぱらいをするし、というわけでパツヨロの良識ある連中からは胡散臭く思われていて、その非定住の団体はエジプトから来ていると思われていた。エジプト人だからエジプシャン、しかし最初のEは発音しないのでジプシャン、ジプシーと呼ばれるようになった。ジプシーというのは英語の呼び方で、フランスではタバコで有名なジタンとかボヘミアン、ドイツではチゴイネル、そうチゴイネル・ワイゼンのチゴイネルだ。しかし、それらの呼び名は外部の人間が勝手につけたものであり、当人たちはオレたちゃロマだと主張し、今に至っている。この間、シュリンプとかいうマッチョ思考の男が世間を騒がせたアメリカの、本来の原住民を後から来た連中が自分たちはインドに到着したと勘違いして彼らをインディアンと読んだようなもんだな。などと偉そうに書いたが、これは今日の司会者の受け売り。演奏はあんまりジプシージャズという感じではなかった。

 3番目はお待たせしました。本日の目玉の一つ、ジム・ホールの「コンチェルト」。75年に録音された名盤ですな。なんと音源はハイレゾ。確かに奥行きのあるいい音でした。しかし、このアルバムはクリード・テイラーがプロデュースした作品で一番有名なんじゃないだろうか。アルトにポール・デズモンド、ラッパがチェット・ベイカー。ローランド・ハナのピアノにベースはロン・ウッド。ドラムは若き日のスティーブ・ガッド。なんていうか、オール・スターですな。およそ20分の演奏だが長さを感じない。テーマを弾いた後に、各自が取るアドリブの素晴らしさ。名曲アランフェス協奏曲のジム・ホール的解釈。ジャズとクラシックの融合ではなく、クラシック素材をオレが弾いたらこうなるという自信にあふれている。



 4曲目はAmalia Rodoriguesの「わが心のアランフェス」という歌もの。音源はLPレコード。残念ながら僕は幸運時間だったので聴き逃した。幸運時間とは何か、関西の方には猪木ピンチ・タイムといえばお分かりだろう。何、分からない?そうか、いまどきのお子達はBI砲を知らんから。その昔、プロレス全盛期に日本最強タッグがBI砲、つまりジャイアント馬場とアントニオ猪木のタッグだった。タッグの試合は最初は年下の奴が出ることが多く、BI砲の場合は猪木が最初に出て暴れることが多かった。しかし敵陣に深入りし、卑怯な外人チームはレフリーが見ていない間に凶器を使ったり、急所攻撃したりしていよいよ猪木がアブナイ、つまりピンチになる。しかし一瞬のスキをついて馬場にタッチ。ついに馬場が出る。つまり猪木がピンチになれば馬場が出るのだ。なにまだわからん。あとはググれカス。

 5曲目はベースの藤原清登がリーダーのトリオで「アランフェス協奏曲」を演奏。ウッドベースをアルコで弾いて、もうほとんどクラシックと変わらない。音源はCD。このあたりからだんだんアランフェスのあの哀愁あるメロディが苦痛に感じ始める。

 6曲目は坂元輝という立派なポンニチ名がありながら、何故かTerry Hermanなどと名乗ってピアノトリオで「ブルー・アランフェス」。輝がTerryに、坂元はハンモトとも読めるのでHermanと名乗ったと司会の人が言うが、笑う気力もあまりない。また丸丸クラシックと変わらない演奏。こいつらみんなクラコンじゃ。音源はLPレコード。

 7曲目は男性ボーカルでアランフェスというわけで、イケメン男性ボーカルカルテット、イル・ディーボである。音源はCD。歌姫はディーバ、男はディーボになる。マリアだと女の名前、男だとマリオになると説明を聞いたが、イル・ディーボよりテクノのDEVOが聴きたい。イル・ディーボよりうぃあーでぃーぼ、ディーイーヴィーオー!!!



 8曲目、今度はコラボでアランフェス。MJQがブラジルのミュージシャンと共同制作(コラボレーション)した演奏。LP音源だが、レコーディングのレベルの関係だろうか、音がこもっている箇所とクリアな箇所があり、なんだか良く分からなかった。しかし、ギターでやろうがピアノだろうが、ベースでもサックスでもラッパでもましてやビブラフォンで演奏してもアランフェスはアランフェスだという結論に達していた。

 9曲目で怒りは頂点に達した。塩田美奈子とかいう国立音大出の女性シンガーがなんと「恋のアランフェス」というタイトルでラブソングにしてしまった。それもアニメの挿入曲みたいにゲロつまらん。アランフェスはスペイン内戦で被害を受けた故郷を思って作られた名作だというのに、なんだこのつまらん歌は。スペイン内戦に参加したすべての反ファシスト市民に謝れ。ヘミングウェイに謝れ、ジョージ・オーウェルに謝れ。ついでにクラッシュにも謝れと激怒するが、疲れて声も出ない。音源はCD。

 10曲目、いよいよオーラス。マイルスとギル・エバンスオーケストラの「スケッチ・オブ・スペイン」である。音源はLPレコード。マイルスがこの作品を出したことでアランフェスに注目するジャズミュージシャンが増えたらしい。スコア通りに演奏するオーケストラの間隙をぬってモード奏法のマイルスがゆっくり吹く。ポール・チェンバースのベースもジミー・コブのドラムも後年ポンニチの若手ジャズメンに大きな影響を与えるエルヴィン・ジョーンズのパーカッションも流石である。やはりマイルスはすごい。君には参るす。などと昔のギャグを入れたが、やはり最初に思った通り、今回はマイルスとジム・ホールだけがジャズの矜持を示してくれた。しかし、当面アランフェスはいいや。


突然の訃報



今年、何十年ぶりかの講義を受講した。宮崎公立大で行われた「ジャズとアメリカ文学入門」。全10回の内容の濃い市民講座だった。その主催者であった学長の林先生が突然亡くなられた。

今日はバタバタしていて、新聞を読んでおらず、仕事を終えて家に帰ってテレビで知った。驚いて宮崎国際ジャズデイのM原さんに電話したら、既にご存知だった。企画力と行動力のある学長だったことを聞いた。公立大であるイベントを学長として企画したが予算が無いと事務方が反対。200万の予算組みが出来ないと言われたが、じゃ集めると宣言して、実際それだけの金額を集めて、無事イベントを成立させたらしい。

一昨日の西藤ヒロノブのイベントにも参加する筈だったが、当日風邪をこじらせたので欠席する旨をユーモアあふれるコメントで頂いた。レスを書いたが何の反応も無かったので、風邪がきついとばかり思っていた。

ロックバーにも団体で来てくれたことがあった。市民講座を聴講してますと話すと名刺をくれた。僕は名刺を持って無かったので、コースターに名前を書いて渡した。翌週の講義の時に名刺を持って行ったら、コースターの方がインパクトがあると言われた。

連赤の永田洋子の話を、ある時、講義でされた。ちょっと意外な視点での話だったので新鮮だった。

しかし、今朝は起きたら福島の地震と津波、フクシマの原発のトラブルと散々だったが最後にこれだよ。取り急ぎ合掌。





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本日は、西藤ヒロノブのライブ



これまでは、お客さんとして参加して来たライブだが、今回はスタッフとして参加。したがって開場時間の16時半より早目の登場。会場整備が担当なので、まあ気楽てはあるが、時期的に学生時代のEVEのイベントを思い出す。72時間自主管理自主運営の日々が蘇る気がする。雨が降らなければいいな。

※11/21 追記~見てる方が絶対に良い。スタッフなんてしんどいだけ。今回は新曲を何曲か演奏したけど、じっくり聴けず。印象としては前作よりも若干ハードな仕上がりかな、てなくらい。ゆっくり話す時間もなく、ボジョレもパーティ会場に行ってみたら空樽だけ。豚シャブは野菜が全然残って無く、大なべの中の肉を掬ってもらい何とか腹を持たせた。しかし、イベント屋さんって大変な仕事だと再認識。




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本編:中山うりのライブと新作について考える 第1部

中山うり Live at DEJILL

 その日の待ち合わせの場所は、初めての居酒屋だった。先々月の同窓会で、「だれやみセット(標準語に直すと晩酌セット)」の無料チケットを福引で当てたとY尾君が自慢気に言うので、そこで待ち合わせしたのだが、話を良く聞いてみると当たったのは同じテーブルにいた別の人。その人がお酒をあまり飲まないのでタダで譲ってもらったというのが真相だった。他人の幸運をいかにも自分の手柄のように言うのは流石である。僕も大いに見習いたいものだ。ところで、待ち合わせの時間は18時に設定していた。以前住んでいたところだったら、仕事が終わって服を着替えてからでも十分間に合うのだが、今住んでいるところからは絶対に無理だと分かっていたので、当日は3時間早く仕事を上がった。有給休暇の時間休を利用したのだ。何の話か見えない?うん、前回予告した通り10月26日の中山うりのマホロバツアーat宮崎DE JILLの話だ。

 さて、仕事を早く上がったので自宅でゆっくり着替えて自転車に乗って(by 高田渡)自宅を出た。空模様が怪しかったので、ショルダーバッグの中にフード付きのウィンドブレイカーを入れ、さらに先日密林経由で入手したうりちゃんの最新作『マホロバ』も入れた。もちろん、ライブの後でCDにサインを貰うつもりだ。自宅から出てライブハウスに向けてペダルをこぎ始めてすぐに空から雨が降ってきた。『雨が空から降ればオモイデは地面にしみこむ、雨がシトシト降ればオモイデはシトシトにじむ(by 小室等)』などと気取っている場合ではない。ましてや、『しょうがない、雨の日はしょうがない、』などと悟っている場合でもない。雨足もやや強くなり今からウィンドブレイカーを羽織っても、下半身が濡れてしまう。どうしようと迷ったときにJRの駅が目に入った。そうだ、この時間だったら宮崎駅行きの電車がある。自転車を濡れないように駅の所定の場所において改札に向かうと、丁度各駅停車の上り電車が出発の3分前だった。駆け足でプラットホームを通過し、ガラガラの電車に乗った。がたんごとんと電車は走り出し、大きな橋を渡ったらすぐに目的の駅に着いた。その直前にY尾君から電話があり、すでに居酒屋に向かっているという。こちらも5分以内には着くと答え、電車を降りて改札を抜け駅構内から街に向かった。

 目的の店はすぐに分かった。縄のれん越しに店内が見えて、手前のテーブルにY尾君がいた。早速合流し今回のライブについての話をする。去年のうりちゃんの初宮崎ライブも一緒に行ったのだが、その時の僕は訳アリのおねいさいんと一緒だったので、彼とあまり込み入った話はできなかったのだ。ほとんど予備知識のないままにライブに参戦したY尾君だったが、うりちゃんのルックスとファッションにやられてしまい一発でファンになった。しかし、そういうこと(人間は外見ではないのだよ、問題は中身。もっとも外見もいいほうがいいが)ではいかんので、今回のライブの前に彼に予習用として2枚の編集CDを渡しておいた。昨年僕がアップしたエントリーからスローサイドオブ中山うりファーストサイドオブ中山うりというテーマで作った編集CDだ。ちゃんとCDを聴いて文章も読んだか確認したら、大丈夫だという。特にうりちゃんの歌詞はいいとやたら気合が入っている。合流したのは18時ちょっと過ぎで、今日のライブは20時開場、20時半開演と比較的時間の余裕はあるが、そこは大人気の中山うりだし、僕たちは歳は取っていても熱烈なファンであることをアピールするためにも最前列の席を取らねばならない。よって開場時間の20時では遅い。19時半にはライブハウスに並ぼうと決めた。それでも1時間半ほど燃料摂取(ま、お酒とサカナの摂取時間ね)が出来る。居酒屋を出るときは結構いい感じで出来上がりつつあった。

DE JILL

 DE JILLは、居酒屋から歩いてすぐのところにあった。ビルの2階で1階の階段のところに案内が出ている。一番乗りだと思っていたら、先客が複数いた。僕たちの前にいたのは女性の3人組。1人は多分50代のちょっと大竹しのぶ似のおねいさんとその連れは多分10代の女子2人。一人はお子さんで、もう一人はその友達かと思ったが、3人の会話を聞いていても人間関係がどうも良く分からない。初対面の女性に対して全く警戒心がないというか、まあ取りようによっては節操がないといわれても仕方のないY尾君が早速おねいさんのほうと世間話をしている。こういう性格はうらやましい。僕は人見知りするし、男は日に三言という教育を受けてきたので面識があればまだ何とかなるが、初対面の人、とりわけ女性とは全く話が出来ない。あ、リア友の諸君はこの部分はさらっと読み流すように。こういうコントラストのほうが話が面白いやないか(笑)。

 去年のライブハウスは一番乗りで、今回は残念ながらそうならなかったがかなり早めに並べたので最前列の席は確保できそうだ。階段を上って入り口のドア近くで待っていると、お店のスタッフが出てきてチケットやお釣りの準備をしている。Y尾君は、この店には知人のライブを見に何度も来ているので、スタッフと親しげに話をしている。外が暗くなり客も増えてきて開場時間になった。入り口の受付で名前を言ってお金を払い中に入った。Y尾君から話は聞いていたが、店内は想像以上に狭い。入ってすぐにカウンターがあり、左に向かって部屋が広がり奥に小さな演奏スペースがある。演奏スペースは一段上がったステージになっておらずお店の床とフラットになっている。ダッシュで奥に行き、最前列で背もたれのある座席を確保。次々とお客さんが入ってくる。圧倒的に若い女性が多い。キャパはどんなもんだろう。3~40人くらいでフルハウスではないか。カウンターに近い席に縞のトレーナーを着た女の子がいた。Y尾君が「去年、うりちゃんのオープニング・アクトした彼女だ」という。よくみると確かにYギナツキさんだった。去年の9月のうりちゃんのライブの前に何曲かオリジナルを歌い、会場の雰囲気を和らげてくれた。FBの彼女のウォールにそのことを書いたら、去年の11月にCDを制作したこととライブのお知らせのメッセージを送ってくれたのだが、何故かフィルターがかかってしまい、気が付いたのは今年の6月。慌ててお詫びのメールをして友リクもさせてもらった。

 とりあえず挨拶をして、そのままトイレに向かったら入り口に見たことのある男性がいた。今年の6月から7月にかけて宮崎公立大で「ジャズとアメリカ文学入門」という10回連続の市民講座に参加したのだが、その8回目にスコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』の講座を担当したO山先生だ。『その節は大変お世話になりました。おかげさまでブライアン・フェリーの「ラブ・イズ・ア・ドラッグ」のオーケストラ・バージョンが聴けました(ディカプリオ主演の映画のサントラを講座の前にO山先生が流していて、そこでフェリーの変態的なボーカルが聞こえてきた時の驚きはなかった)』と挨拶したところ、気さくに返事をしてくれた。中山うりは全く知らなかったが知人に絶対いいからと勧められて今回来たとのこと。僕たちの前の席が空いていたので、そちらを案内しライブが始まる前に少し話をさせてもらった。その市民講座にくじで漏れたY尾君は宮崎国際ジャズデイのH高社長の配慮でスタッフとして途中から講座に参加できたのだが、本人はその講座を受講するためにヘミングウェイやサリンジャーを読み直したとアピール。それなのにくじに外れてしまった。それにひきかえ大学時代は英文科でありながら全く授業に出ず、学園で暴れてばかりいたこいつがくじに当たるとは世の中おかしいと言っていたか、言ってなかったか、定かではないが、とにかく予想してなかった話し相手が出来たのは良かった。そこで話をやめておけばいいのに、ワタクシの悪い癖でいかに中山うりが素晴らしいシンガーであり、作曲家であり演奏者であり、そして詩人であるかということを延々としゃべっていたら、ギターのチューニングの音とともに店内に一瞬のしじまが訪れた。見るとステージにうりちゃんのバンドメンバーが登場していた。

 メンバーの最後にうりちゃんがアコーディオンを抱えて席に着いた。いきなり歌と演奏が始まる。新作『マホロバ』収録曲の「ダンスダンスダンス」だ。♪あなたは、いつしか、ダンスをするだろう~という不思議な歌いだしで始まる曲だ。歌詞とメロディから別れの歌だということは分かる。紙テープや汽笛という単語から海の歌だと思うが、とにかく不思議なフレーズとシチュエーション。最初から中山うりの魔法にかかってしまう。「ありがとうございます。中山うりです。宮崎、2回目になりました(拍手)。前回も一緒に来てくれましたギター、福澤和也、ベース、南勇介、そしてドラムは宮川剛」とメンバー紹介し、そのまま軽快なメロディーを持つ「寝ても覚めても」が始まる。この曲は前作、いや正確には前々作の名盤『鰻』に入っている歌だ。ドラムが元気がいい。うりちゃんのボーカルはまだエンジンがかかっていない感じだが、その分アコーディオンが要所を締めている感じ。全体のコーラスとアンサンブルは流石。



 ドラムのカウントとともに始まったのは「まっしろけ」。これも『マホロバ』の曲。去年のライブでも「台風の歌です」とコメントして演奏してくれた。うーん、やっぱりうりちゃんの声が少し疲れている気がするが、オレの単なる思い過ごしか。しかし間奏部分でドラムとアコーディオンの掛け合い、途中から絡んでくるギター。スタジオ録音より、やはりライブがいい。ハレルヤとサヨナラという単語が交互に出てくるが全く違和感がない。このあたりの言語感覚は、さすがはうりちゃんである。後半のギターとドラムにアコーディオンが絡んでちょっと長めの演奏が終わる。



 「ありがとうございます。九州ツアー4日目です、残すところあと半分、4公演。ぶっ続けで昨日から6日間連続ライブということで、九州ツアー駆け抜けていく予定です。」。そうか、連日のライブで声に少し元気がないのか。ま、でもまだライブは始まったばかりだし、これからエンジンがかかってくるだろう。うりちゃんのMCは続いた。「前に宮崎に来たときは、違うお店でやらせてもらったんですけど、(今日も)始まる前にちょっと時間があったので、この近くを歩いていたら、結構この辺も野良猫が多いことが判明して、私の住んでる東京の下町も凄く細い路地が沢山入り組んでいるところなので、猫すごく多いんですけども、次の曲はこれからの冬を乗り越える野良猫たちの応援歌みたいなものです」というユーモラスなMCに続いて歌いだしたのは、これも新作『マホロバ』収録曲の「路地裏のタンゴ」。うーん、野良猫にタンゴというと昭和世代の元ヤングは「黒猫のタンゴ」を連想してしまう。♪クロネコのタンゴ、タンゴ、僕の恋人は黒い猫ってやつだ。間違ってもジェフ・ベックの「黒猫の叫び」ではない。もっともうりちゃんの曲に、インストナンバーだが「黒猫・白猫」という、あれはタンゴというよりスゥイングか、まあ、そういう曲もあるので「黒猫のタンゴ」の連想もあながち間違いではないと正当化しておく。演奏最後のほうで、うりちゃんのトランペットのソロが響く。

 「ワン、ツー、ワン、ツー、さん、はい」といううりちゃんのカウントで始まった5曲目は「わたしの真っ赤な自転車」。こちらも『マホロバ』収録曲で、やはり去年のライブでも歌ってくれた。子供のころの買ってもらったお気に入りの真っ赤な自転車。夏休みに一生懸命練習して、やっと乗れるようになった自転車。あれから長い時が経ち、いつの間にか君は小さくなったのでお別れだという、これもうりちゃんの得意な世界。これまで大事にしてきたのに時の経過とともに別れなければならない定め。「楽しいときっていつか終わりが来ますよね」っていううりちゃんのMCは去年聞いたのか今年だったか。仏教用語でいえば諸行無常の世界をアコーディオンと一緒に歌っているのがうりちゃんだな。そういえば、『ホロホロ』にも「恋する自転車」という歌があったけど、それも「真っ赤な自転車」だったのだろうか。演奏後半に珍しくうりちゃんのスキャットが入るが、これがなかなかいい。ジャズのスキャットとも違う、素直なスキャット。しいて言えばボサノバチック。

 「ニュー・アルバムの曲をたくさんやってますが、次の曲はアルバム・タイトルにもなった『よいよいまほろば』って曲です。これは新潟のお祭り、花火大会を見に行ったときの思い出の歌です。」と言いながらアコーディオンが奏でられ歌い始めたのが「よいよいまほろば」。「かえろかな、かえろうよ」というフレーズが繰り返され耳に残る。そして最後の歌詞では「いかないで、いかないで」と歌われる。新潟の、いや日本中どこでもいいが花火大会、夏祭りの始まりから終わりまでの情景。ここでも楽しさと寂しさという矛盾した感情が、素直に同居している、これなんだよな、中山うりの真骨頂は。二律背反するものをアウフヘーベンする詩的構成力、それを自然な感情として聴いているものに、そういう体験はしていないかもしれないが、いや間違いなくそういうことがあったと思わせる、既視感を自然に作り上げ共鳴させる能力が彼女の才能だ。あ、痛い、慣れねーこと言ったもんで舌をかんでしまった。その手の批評は専門家に任せておけばいいか。オレたちゃ聴き手のプロであって、決して評論家じゃないんだ。「極楽も天国もどこにもないよ。だけどもう一度うまれるなら、この世がいいな」、泣かせるフレーズだ。

 「では新曲です。『さらば、すばらしき世界』という曲です」。え、ちょっと待って、オルダス・ハックスレーの小説のタイトルちゃうか。と、一瞬パニくったが、まさかうりちゃんがディストピア小説である『素晴らしき新世界』の歌を作るとは思えない。ま、タイトルは似てるけど別人28号だと思う。ドラムのカウントから入るミディアム・テンポの曲でちょっと小粋なシャンソンぽい感じの歌。ドラムもちょっと不思議な叩き方をしていたし、うりちゃんのアコーディオンはいつもと同じなんだけど、ギターがボトルネックを弾いてなんというか郷愁を誘う。うむ、中山うりの新境地ではないか。歌詞に「人生がもう一度あれば」とか、気になるフレーズがいくつかあったが、サビの「さらばすばらしき世界よ」のメロディが心に染みた。

 「次の曲で少し休憩を挟みたいと思います。1部最後の曲は『モシモシーソー』という曲なんですけど、少し前まで朝、教育テレビで流れていた曲で、まあ、何でも比べてみようよという不思議な歌なんですけど。えー、行きましょう」。そういえば、うりちゃんの歌は前もNHKの番組で使われていたっけ。去年も『ブラタモリ』が終わったと思ったら突然、うりちゃんの「まさかさかさか」が流れてきて驚いたことがあった。今回の曲はEテレが平日の朝7時から放送している番組で子供たちをシャキーンと目覚めさせて楽しい1日のスタートを切らせる目的で作られている番組の5月のテーマだった。その教養娯楽番組名は『シャキーン!』。ま、子供は目ざめの音に聞こえるかもしれんが、汚濁にまみれた中高年パンク(オレだよ、オレ)には『借金』としか聞こえない番組名だが、うりちゃんの歌を選んだのはエライ。Facebookでもうりちゃんが、この曲がテレビで流れるとアナウンスしていたが、朝のその時間は布団でぐずぐずしているので結局リアルタイムで聴けなかった。そういう意味では僕にとっての新曲でもある。この曲も、しかし、今までのうりちゃんとちょっと違うイメージがある。うん、中山うり、いよいよ次のアルバムで新境地を開拓するな、と確信したところで第一部のライブは終了したのであった。第二部もカミング・スーンであることを心ある中山うりファンの皆様に約束します。

予告編:中山うりのライブと新作について考える

 ツアーの名前がマホロバだから、新作からの曲が多いのも当然といえば当然だ。先日のうりちゃんのライブを見て最初に頭に浮かんだ感想はそれだった。いったい何を書いているかというと、およそ1年ぶりに地元宮崎で行われた中山うりのライブの報告と合わせて新作『マホロバ』について、例によって好き勝手にほざいているのだ。10月26日にDE JILLというライブハウスで中山うりのライブがあると知ったのは、うりちゃんのFBでの告知だったと思う。去年初めて宮崎で彼女のライブがあったが、その時は別のライブハウスだった。今回は、ジャズミュージシャンのライブが多いDE JILLというハコで、さらに僕はまだ行ったことがないところだったので大いに期待していた。そして、彼女のニューアルバムが8月3日に発売になっていたことは知っていたが、ライブの時に買ってサインをもらえばいいかと最初は考えていた。しかし、年に1度あるかどうかの中山うりのライブである。せっかく参戦するのに、新しいアルバムの曲も予習して当たり前だと考えを変えて、密林経由で取り寄せたのは10月9日。届いてすぐにショート・エントリーをアップし、深夜になるのを待って聴いた。いい。確かにいいが、なんというか次のアルバムが勝負だという印象が強い。間違いなく素晴らしいアルバムではあるが、中山うりの新地平を切り開くのは次のアルバムだと直感した。

 何故、そう感じたのか考えてみた。デビュー以来、彼女の作品は全て文句のつけようがなく素晴らしいのだが、特に『VIVA』から『ホロホロ』、そして『鰻』という2011年から2014年までのフル・アルバム発表ごとの充実度、楽曲のバリエーション、ボーカルとインストの絶妙な絡みなどどれをとっても進化、進化、進化の怒涛の時代だった。そして、突然アコギ1本で作った2015年のソロ・アルバム『ぼっち』。これはダメ押しだった。彼女の初期の曲から新作までを全く新しい表現で歌いあげた名作。ライブハウスのみでの販売という形態も手作り感満載でいい(のちに通販でも買えるようになり、おかげで昨年のうりちゃんのライブの前に購入し、しっかり予習できた)。

 それらのアルバムと比較して、今回の『マホロバ』は決してひけを取らないのだが、なんというか既視感ではなく既聴感があるといえばいいのか、どこかで聴いたようなというのが第一印象だった。これはすぐに分かった。それまでの彼女のアルバムは、僕にとって全てが新曲だった。当然だ。彼女のライブを見ることが出来なかったので、うりちゃんの新曲情報はアルバムを入手するか、たまに本人がアップする動画でしか入ってこない。したがってアルバムを手に入れるたびに新鮮な驚きにいつも出会っていた。特に、『鰻』はその収録曲に名曲が多いことと、自分で買ったのではなく大宰府在住の畏友、黒木燐さんがわざわざうりちゃんのライブに行き、さらに僕のためにサインを貰ってくれて、それを郵便で送ってくれたので、何も知らなかった僕は手に取ったときに、まさに有頂天になってしまった。早速針を落とすと、いやウソです。CDだからターンテーブルに乗せても再生できないっちゅうの。早速聴いてみると、ついこの前最高傑作と断言していた(いや、僕が勝手にね)『ホロホロ』をはるかにしのぐ。特にアルバムラストの「石神井川であいましょう」は何度も聴いて涙を流した。僕にとっての「夢で逢いましょう」的名曲だった。このあたりのことは、以前エントリーに書いたので繰り返さない。

 振り返って今回のアルバムは、昨年の宮崎ライブで聴いた曲が結構あった。アルバムに収録されているのは全部で10曲。その中の5曲は、昨年のライブで演奏されていた。「よいよいまほろば」、「わたしの真っ赤な自転車」、「青春おじいさん」、「まっしろけ」、「ふらふらここ」の5曲だ。どの曲も完成度は高いし、中山うりワールド全開の曲である。去年のライブで聴いたときも、中山うりが大きく変わりつつあると感じた。それまでS-KENプロデュースだったが、セルフ・プロデュースに変わっていったことも原因のひとつかもしれない。何度も書くが、素晴らしいニュー・アルバムであることは間違いない。このアルバムを初めて聴いてうりちゃんのファンになる人もいるだろう。いや、いるに違いない。ただ、なんていうか、オレのうりちゃんはこんなもんじゃないんだよ。もっと聴き手の想像を超える人なんだよ。写真より実物のほうが可愛いんだよ、と最後はどさくさまぎれで愛の告白であるが、まあ、そんな感じでライブ当日を迎えた。が、しかし、やはり中山うりは中山うりであった。どういうことか。虫刺されやめまい、耳鳴りでドツボにはまっている中高年パンクのワタクシのはるかに予想を超えたライブを展開したのだ。

 という、イントロで前回の中山うりのライブ・レポートを書くつもりだったが、毎度毎度、長文だらだらエントリーはいかがなものか。豊洲の盛り土みたいに、あるはずの中身がないみたいなことにならないか。いったん反省を込めて振り返ってみる。続きは近日中にアップすることを、すべての心ある中山うりファンの皆さんに約束する。ワタシはウソは申しませんっ!!!っって選挙民にウソついて大臣首になった人いたな。いつの時代の話だっての(笑)。



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