中山うり 新作『カルデラ』全曲解説などというおせっかい

アルバム

 このエントリーを書く前に、過去のうりちゃんのライブレポートを見なおしてクリビツテンギョウ。僕は根気がないし、やったらやりっぱなしな性格であることは百も承知していたが、しかし、まあ、ここまでいい加減、でたらめ、さっさとくたばれ的人間だとは思わなかった。実は中山うりのライブ、2015年に宮崎市で初めてのライブがあって、そのあと2016年、そして昨年2017年はソロ・ライブも見た。昨年は二度宮崎に来たが、都城という島津テリトリーの街だったので、そちらは行けなかったが、まあ過去3回連続で見ている。そして、それぞれのライブレポートを書いて拙blogにアップした気になっていた。ところがどうした。2015年は初のライブだったので、我ながら力の入ったエントリーをアップしたつもりだ。そして2016、11月5日に『本編:中山うりのライブと新作について考える 第1部』としてアップしながら、第2部をアップしていない。ましてや2017年のカレーショップハバネラでのギター一本でのぼっちライブはエントリーすら書いてなかった。

 正確にいうとどちらも途中まで書いて投げだしてしまい、そのままになっているのだ。2006年からblogを始めたが、最初はFC2のサイトに直接エントリーを書いてアップしていたのだが、あるとき書きかけのエントリーが全て消えるという経験をしてから、エントリーは自動バックアップを設定しているWORDにいったん文章を書いて、それをコピペしてアップするというやり方をかれこれ10年やっている。したがって何かのエントリーを書くときは下書き状態のWORDをいったん保存し、日を改めて続きを書くなんてことをして居たのだが、保存する時の名前を文章の書き出しでやったものだから、後日新しく書こうと思うエントリーが見つからないことがある。面倒なので、そのままほったらかしにしているので続編がアップされないというわけだ。だって「いや」とか「うん」とか「このところ」「さて」「というわけで」「終わった」「ドツボは続くよ」とかいうタイトルを見て何の話だこれはってことばかりだったのだ。あ、今思いだしたが何年か前に京都に行ったときの話、「過去への旅路」とか「帰ってきた過去への旅路」、さらには昨年の4月30日の宮崎国際ジャズデイの話も最後まで書いていない。自分で自分が嫌になってしまう。

 まあ、そんな愚痴を書いていても始まらないし、どこかに以前のうりちゃんのライブの話の続きが残っていれば、これは責任もって最後まで書いてアップします。もはや誰も信じてくれないかもしれんが。

 気を取り直して、今回のエントリーなのだが、2016年10月26日にライブ会場でうりちゃんにサインしてもらった、その時点での最新アルバムで『マホロバ』というものがある。もちろんいい作品ではあるのだが、何故かそのアルバムは通過地点というか過渡期というか、なにやらうりちゃんが試行錯誤しているような感じがして、次のアルバムこそが中山うりの新地平を切り開く名作になるに違いないと2016年11月1日に『予告編:中山うりのライブと新作について考える』で書いた。また最新作『カルデラ』が届いたときに写真と一緒にFBにアップし、そこでも同じようなことを書いた。あ、また一つ思いだした。アップしていないエントリーをアップしたつもりになっているのは、ライブの感想や写真をFBやインスタにアップしたせいだ。なんとなく、それで書き終えた気がするから、悪いのは僕ではなくて安易なアップをさせるFBやインスタだ、などとどさくさまぎれに言い訳しまくるのだ。

 さて届いたばかりの『カルデラ』を聴いてみた。アナログな話で申し訳ないが、その昔好きな音楽をレコードで聴いていた時にA面に針を落として一瞬でこれは名作、名盤間違いなしなんて経験をしたことがないやつは以下読まなくていい。要するにアルバムのジャケットと音が一体となって一瞬にしてそのミュージシャンのとりこになったことがない人とは同じ音楽の話をしても共鳴できないというか共通項がないのでかっこでくくれない。例えばボウイの『ジギー・スターダスト』を聴いたとき、評論家やファンには不評だったがキャット・スティーブンスの『異邦人』を聴いたとき、その後、クラッシュの『ロンドン・コーリング』を聴いたときなどなど、アルバム・アートと一発目の音で完全にやられることがある。うりちゃんの音楽はロックとは思わないが、それでもこのアルバム、1曲目のイントロ聴いただけで名盤、間違いなし、オレの読みは狂ってなかった。以下、スケッチ風に。

1.「夢ノイリグチ」
 最初のアコーディオンの音で傑作と確信する。アコーディオンとフィドルの作りだす音がバグパイプ風に聞こえる。夜、布団に入って眠りに入る前の一瞬落ちる様な感じをうたっているのか。中山うりの「鈴懸の径」である。あ、もちろん鈴木章治のバージョンね。最後のトランペットが印象的。

2.「メロンソーダのさくらんぼ」
 軽快なロックンロール・ナンバー。ギターのリフが前のアルバムに入っていた「青春おじいさん」を連想させる。ドラムはチャーリー・ワッツ風(笑)。歌詞に「アイスクリームが溶けていく」というフレーズがあり高田渡を連想する。そういえば、うりちゃんはワタルの「生活の柄」も歌っていたっけ。とても耳になじむ歌で初めて聴いてもすぐに口ずさめる感じがする。

3.「カルデラの子」
 アルバムタイトルの『カルデラ』の子供である。去年見たうりちゃんのソロライブでも歌っていた。最初聴いたときは信じられなかったが、なんと中山うり小4から中3まで反抗期が続いたそうだ。いや反抗期が信じられ無かったのではなく、その当時はへヴィメタが好き、X-Japanが大好きでファンクラブに入りたいと母親に言ったら反対され、それからハンストおこして飯食わなかったらしい。もちろん腹は減るので夜こっそりトマトやキュウリやレタスを冷蔵庫から取り出して食べていた小5の夏、キンチョウの夏、日本の夏。反抗期のことを歌った歌。フィドルがこの曲でも効果的に使われいる。

4.「プーアールママ」
 イントロはあくまでドラマチックでエンディングは突然。プーアールていうとドラゴンボールを思いだすが関係ないか。こちらは中華料理が得意なパタパタママみたいな人。ってかたとえが古いね、オレも(笑)。余談だがパタパタママに対抗できる人物は山上たつひこの『喜劇新思想体系』に出てくる絶倫パパしかいないと思う。高岡大祐のチューバがいい味出してる。

5.「恋する惑星」
 イコライザーの声が印象的。このアルバム最後の曲の「さらば素晴らしき世界」に通じる世界観かな。「夢であいましょう」みたいな曲。あ、そういえば、その曲たしか『セブンカラーズ』で歌ってたな。

6.「カゲロウガール」
 ドラムが大活躍する曲。歌とバックの演奏のアンバランスさがいい。このアルバムでは珍しくシンセを使っている。そして何度か書いているがフィドルとシンセが独特な音楽観を提示している。余談だがこの歌から「カ」を取ると「下郎少女」になる。北杜夫は昔、「ウスバカゲロウ」のことを「薄馬鹿下郎」と思っていたなんてことを思い出した。歌とは関係ないが。

7.「デスメタルラブ」
 このアルバムの問題作といってもいいかな。曲はライブでも聴いていたので知っていたが、女の子が女の子を好きになることはおかしいことかという、ある意味根源的な問題提起。性同一障害とかそのへんのことに興味がある人は研究すべし。以前聴いたときはアコギだけで歌っていたが、このアルバムではスティール・ドラムの存在が大きい。

8.「犬の田中」
 猫好きのうりちゃんには珍しく犬の歌。名前のない犬、ア・ドッグ・ウィズ・ノー・ネーム。もしかしたらこいつが「マドロス横丁」であくびしていた野良犬かもしれん。

9.「南国タクシー」
 インストナンバー。こちらもライブでバンド編成で聴いていたのでなじみがある。架空のタクシー会社のつもりだったが南九州に来たら実在していた。CMソングに使ってくれないだろうか。

10・「ラムネの午後」
 メロンソーダに続いて炭酸系の歌(笑)。ミディアム・テンポの明るい歌で要所要所に入るスティール・ギターがいい。これまでのうりちゃんのバンドと一味違うサウンド。間奏のトランペットとピアノの絡み、バンドとの一体感が心地よい。こういう構成で彼女の歌をライブで聴きたい。

11.「さらば素晴らしき世界」
 アルバム最後の曲は小林創のピアノと2人だけで録音したと去年のぼっちライブの時に話していた。今までのうりちゃんとは一味変わった感じがするし、いや全く変わらない彼女の世界とも言える。とにかく買って聴いてください。

 さて、好き勝手に書いて来たがなんと今年もうりちゃんがやってくる。やってくるのはいいが、またもや都城である。島津領である、途中に関所があるし、通行手形がないといけない。入り鉄砲に出女という厳しい関所なので行けるかどうか今の段階ではなんともい。でも行きたいな、何で宮崎に来ないのか(泣)。

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この恐るべき格差社会



本日は、『進撃の巨人』の発売日である。実は昨日、もしかしたらと思って近くの書店を覗いたが、もちろん発売日は9日なので置いてない。当たり前だのクラッカーである。そして、




本日の昼休みにファミマに行った。無かった。見間違いかもしれ無いと思い、しばらくコミックの背表紙を見続けたが無いものは無い。無い袖は振れない。諦めた。






夕方、セブンイレブンに寄って見た。何と、そこには売るほど置いてあった。いや、よく考えてみたら売っていたんだ、あれは。






結論、コンビニ業界も格差社会である。ファミマにあれば、Tポイントがついたのに、残念。しかし、この小難しいストーリーのマンガを今の子供達は理解しながら読んでいるのだろうか。だとしたら、末恐ろしい。




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情宣貫徹、闘争勝利


などという懐かしいフレーズをエントリーのタイトルにしてしまうワタクシ(笑)。てか、今時、カンテツなんつっても完全徹夜のカンテツと思うやつらがウヨウヨしてる嫌な渡世である。何の話をしているかというと花のサンデーに、しかも花見の宴には遅いが、それでも春を感じる今日この頃に何が悲しゅうてアナログ・レコードを、それもモノラルのズージャのレコードを室内で聴かねばならんのか。夏はサーフィン、冬はゲレンデのアウトサイダーの僕にインドアは似合わない。ん、アウトサイダーってそういう時には使わないか。コリン・ウィルソンなんか今時誰も読まないって。

実は名ばかり実行委員を務めている宮崎国際ジャズデイのプレ・イベントで宮崎真空管アンプ愛好会が主催するレコードコンサートに乱入して来たのだ。このレコードコンサートはY尾君と何度も参戦している。普段はパソコンや車のオーディオで聴いている音楽を真空管アンプで聴くと、もちろんスピーカーから直接の音なのでイアホンでちまちま聴く音楽とは別人28号。楽しい週末の2時間という体験が何度もあった。

しかしながら、本日は客としてレコード聴くだけでは無い。ビラ配布とチケット販売という任務がある。という訳で開始時間の13時より早く会場入り。しかし、客が来ない。ジリジリしながら待っている段々人が入って来たがY尾君は来ない。もしかしたら、この前、一緒にライブを見たI上さんが来るかもと期待したが、世の中そんなに甘かぁねぇ。幾つになっても甘かぁねぇというのはエンケンの名言、名盤である。

で、結論から書くとビラ配布は無事終わり、コンサート最後にチケットも一枚売れた。ま、結果オーライである。本日、聴いて良かったのは、ジミー・ジョーンズトリオ。マイルスもトレーンもパーカーも、そうそうロリンズもイマイチだった。意外な拾い物だったのはベイシーのグループで聴いたサド・ジョーンズ。あ、そうか、ずっとモノラルで聴いて最後にステレオ録音で聴いたから音が良く聴こえてたってのもあるかな。

さ、これからは公共掲示板のポスターを剥ぎに行かねばの娘だ。



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告井軍曹、或いは告井教授の3.14ライブ・レポート その3

 「じゃこれね」と言って弾き始めたのは”In my life”。ビートルズが初期の荒々しいロックン・ロール・バンドから一歩進化したアルバム『ラバー・ソウル』に収録されているジョンの名曲。この曲の間奏部分はちょっとバロック的でお洒落。高校時代の合唱コンクールを思いだす。何故か。ここのちょっとチェンバロっぽいメロディーが課題曲の間奏部分に挿入され、クラスのほとんど全員がいいメロディだと感心した。ということは当時はまだこの曲を知らない人が圧倒的だったのか(笑)。メロディもいいがジョンの歌詞もいい。まだ20代の若者だというのによくも人生を悟ったような歌詞を作れたもんだ。まあ「ヘルプ」の歌詞も「恋を抱きしめよう」の歌詞もそうだが。

告井ライブ

 「それでは初期のビートルズの曲を何曲かやって最後にしたいと思います」。ついに来てしまった。そうなのだ。楽しいライブの時間も終わりが来る。いつまでもショーの時間を楽しんでいたいが、物事には始めがあれば終わりもある、それが人生ってものなのさ、などとニヒルを気取っている余裕はなく、最後の最後までライブを楽しむぞと体は前のめりになる。初期のナンバーと言うとあれはもちろん、これもやるしそれもやるし、いやいやぜってーあの曲は外さないはずとほとんど代名詞だらけになりながら待っていると、「じゃデビュー曲」と言いながら「ラブ・ミー・ドゥ」を弾き始めた。ビートルズには珍しいちょっと黒っぽいサウンド。

 「この曲は1位になれませんでした。アメリカでは後で1位になったけど、イギリスでは最後まで1位になれなかった。この後の曲はほとんど1位です。先ずは初めての1位から」といって始まったのはもちろん「プリーズ・プリーズ・ミー」。前回のライブではこの曲を微分積分してくれた。説得力ある話だったな。立て続けに今度は「フロム・ミー・トゥ・ユー」である。♪ダララー・ララ・ラン・ラン・ラー、ダララー・ララ・ラン・ラン・ラ~ってコーラスが斬新だった。この歌で前置詞の”from”と”to”の使い方を教わった気がする。僕の英語力、そのようななものがあるとしたらビートルズとS&Gとドン・マックリーンのおかげだな。そして次はもちろん「シー・ラブズ・ユー」である。以前のエントリーにも書いたが「アイ・ラブ・ユー」か「アイ・ワズ・ラブド・バイ・ユー」だったポップスを3人称の”She loves you”にすることで、歌に奥行きが出来た。私と貴方だけの世界に彼女や彼がいることを認識させ、2人の世界から全世界を獲得したのがビートルズだった。などと書くとちょっと昔のアジビラっぽくなるか(笑)。そして「抱きしめたい」。”I wanna hold your hand”を「抱きしめたい」と訳すのが的確かどうかは高嶋さんにまかせておけばいいか、今はこの軽快なロックンロール・ナンバーを楽しみたい。



 告井軍曹が突然歌い始めた。” Well, she was just seventeen You know what I mean And the way she looked was way beyond compare. How could I dance with another Oh, when I saw her standing there” ここまで歌って突然止めてしまう。「えー、勢い余って歌ったわけではありません。ここまで演奏(や)りましたが、ここまではベースと歌だけです。ポール・マッカートニーはこの曲をベースを弾きながら歌う。これはなかなか難しいことです。当時、ベースを弾きながらのリード・ボーカルってポール・マッカートニーくらいしかいなかったんじゃないかと思います。珍しいですね、普通はギターを持って歌うものです」。どうやら告井軍曹の、いや告井教授の最終講義が始まったようだ。しっかり聴いておこう。会場のみんながステージに注目した。

 「ドラマーでボーカルってのはいましたが、ベーシストでボーカルというのは当時ほとんどいなかった。こんなめんどくさいことやりながら(と言いながら「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」のベース・ラインを弾く)歌うってのは。ビートルズが好きになった若者たち、僕らはすぐビートルズのコピー・バンドを始めるわけです。で、これがベースを弾きながら歌わなければならない。これが大変なんです。そんならギター弾いてる人、ギターはこういうフレーズなので(といってちょっと弾く)、簡単だからギター弾いてる人が歌えばいいじゃないか。と、なりそうなものですが、それはダメなんです。ビートルズのコピーバンドって言うのはギタリストとかドラマーとかベーシストっていう、そういう役割はないんです。担当楽器はないんです、ビートルズのコピーバンドには。あるのは担当人物。」、ここで会場に笑いが起こる。担当人物、なんだそれという空気。

 「例えばビートルズのコピーバンドやってる人に聞いてみてください。『何やってるの』っていうと相手は『うん、ジョン』」。一同大爆笑。「ギターじゃないんだ。ジョンなんだ」という声が上がる。「そういうことなんです。そうでなければビートルズのコピーバンドではないんです。ビートルズと同じことをやって、人前で演奏するとなんとなくビートルズになった気分になる。これがビートルズのコピーバンドの本質です。ただビートルズの曲を演奏(やって)るだけじゃ、ビートルズのコピーバンドとは言えないんです。それほどまでにあのお兄さんたちになってみたいと。ビートルズのコピーバンドってのはビートルズごっこなんです。なんかどっかでビートルズになった気になる。それが楽しいんです。さあ、それでは最後の曲。ロックンロールの名曲です。これを4人揃ってやってみたいと思います」。1-2-3-4の掛け声とともに「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」が始まった。ポールのベースに、生涯一リズム・ギターのジョン、そして途中で「カモン・ジョージ」の掛け声とともにジョージのリードも同時に弾きまくる。圧巻のサウンドに会場は大興奮。そして演奏が終わり「” I saw her standing there”。お疲れ様でした~」といって告井軍曹はステージを降りた。



 ステージを降りてすぐにアンコールの拍手にこたえて再登場。「さて、ちょっと面白いことやってみようか。”And I love her”って曲あるけど、あれは途中で半音上がるんですよ。ギター1本でやるときに半音上がるととっても大変なんですよ。ギターで半音上がると大変で、コードがこういう風に(とやってみせて)、さ、そこをどういうふうにやるかよく見ていてください」というアナウンスに続いて、ちょっと切ない「アンド・アイ・ラブ・ハー」を弾き始める。そして半音上がるところは、なんだこれは、ああなるほど、コロンブスの卵だ!!!で、ここは種明かししない。いったい告井軍曹はどうやって半音上げたのか、あなたの街の近くのライブハウスで是非自分の目で確認してほしい。「ではもう1曲」と言ってギターのフィード・バック音がした。そう、「アイ・フィール・ファイン」である。エレキギターでないと表現出来ないと思いこんでいた音をアコギでいとも簡単にやってしまう。これは一種の魔法だ。

 「ありがとうございました。お疲れ様でした」といって告井軍曹はステージを降りた。最初7人の客で始まったライブは、そのあと3人ほど増えて、それでも10人。たった10人の客に対して一切手を抜かず、たっぷり2時間、ビートルズナンバーを聴かせてくれた。そして我ながら呆れてしまったのだが、全曲、僕はライブの間、口ずさんでいた。歌詞を全く忘れて居た曲もあったが正確なギターの音色であっという間に思いだすことが出来た。ああ、オレ、やっぱりビートルズ好きなんだと実感。そうそう、ライブの帰りにソファでくつろいでいた告井さんに話しかけた。その時に実は今日はセンチがはっぴいえんどの曲をカバーしたレコードを持ってきてサインを貰うつもりだったと話したら、告井さんが「あれはいいだろ」と力強く答えてくれた。さらに横にいたスタッフも「あれは最高ですよね。僕も持っています」と言ったので固く握手。告井さんには次回もライブ楽しみにしていますといって分かれた。

 エレベータを降りて、今見たライブの話をしながら帰り道についた。そうそう、I上さんとはFacebookでお友達になり、今後は何かあればメッセンジャーで連絡しますといって分かれた。それ以来、何ら音沙汰もないしメッセージを送っても反応がない。ブロックされているような気がするが、気にせず我が道を行くのが僕のエライところである、シクシク。

告井軍曹、或いは告井教授の3.14ライブ・レポート その2


 「じゃ10分か15分くらい休憩します。あ、それから後ろのほうにCD持ってきてます。今日、演奏(や)った曲も入っているし、どんな曲を演奏しているか見るだけでも楽しいですよ」という挨拶をして告井軍曹は奥のボックスに行った。休憩時間、インターミッションである。僕はこの時間帯を利用してI上さんに告井延隆がいかに素晴らしいミュージシャンで日本のロックに偉大な足跡を残した人か延々と話しを、なんてパターンで行くと、当然若いおねいさんには嫌がられて今後2度と一緒にライブに行く機会が無くなることを重々承知していたので、まずはファースト・セットの感想を話そうとした。そのこちらの意図を、まあはっきり言うと下心行動委員会の緊急問題提起を軽くダッキングして、彼女は告井さんのところにCDを買いに行った。普段、この手のライブではCDを買わないし、以前は「オレの自慢はビートルズのアルバムは1枚も持っていないことだ」などと豪語していたY尾君まで、いそいそとI上さんと一緒にCDを買いに行ってサインを貰っている。僕は自分の持っているアナログ・レコードかセンチのCDにサインして貰うつもりだったが、アナログは実家に置いたままだし、センチのファーストのCDは押し入れの中の段ボールのどこを探しても出てこない。仕方ないので春一番の4枚組の中でセンチの演奏が入っているCDを持参していた。告井さんにおそるおそる、「昔のCD持ってきたんですけど、サインしてもらえますか」と聞いたら「もちろん、いいよ」と気さくに答えてくれた。

春一番にサイン

 3人で再度テーブルに戻り、それぞれのサインを貰ったCDを確認したらI上さんとY尾君はどちらも同じ告井軍曹のサード、初期ビートルズの曲をメインにしているアルバムを買っている。僕がY尾君なら当然I上さんとは別のアルバムを買って、それを貸しあいすることでより親密になるという大原則パターンで行くのに、アホやなこいつはなどと内心考えていたら、急にY尾君が、「おい、このCD貸してくれ。代わりにこのCD貸すから」と言ってきた。実はY尾君は昔から中山ラビとか山崎ハコとか、あの手の暗い女性シンガーが好きだったのだが、僕の持ってきた春一番のライブにはセンチはもちろん、中山ラビやはちみつぱい、ごまのはえ、さらにザ・ディランに今は亡きエンケンの演奏が収録されていたのだ。もちろん異議なしなので、その場でCDを交換。さてお代わりのジン・トニックも用意して、I上さんにアプローチするかと思っていたら、セカンド・セットがスタートした。告井軍曹、もう少しゆっくりでええんやけど、ほんまに、などと内心ぶつぶつ。

 チューニングを少しやってから演奏し始めたのはオリジナルではシタールの音色が印象的な「ノーウェジアン・ウッド」。演奏が終わり、告井教授の話が始まった。「"Norwegian Wood“、この曲を先ほどの高嶋さんは「ノルウェーの森」と訳しましたが、これは今では誤訳ということになっています。森だったら"Norwegian Woods”だろうと(つまり複数形というわけだ、ま、こんな説明は無用か)。でもこの曲は"Norwegian Wood”。Woodだから木でしょう。こういう(ステージの下を指さして)床なのかテーブルなのか分かりませんが、実はそんなことはどうでもいいみたいです。つまりどういうことかというと、この曲の詞の内容は、あるときナンパした女の子の家に行って明け方まで意気投合していろんな話をして、いざこれからというところで『私、明日早いの、もう寝るわ』と言って寝ちゃった、と」ここまで説明したときに誰かが「それはないわ、そこまでいってそれはない」という大きな声で叫んだ。誰だ、一体と思ってよくみたらオレだった。「うん、それはないわ。だけど置いていかれちゃった、その彼はしょうがないのでバスタブで寝たと。で、朝起きたらやっぱり彼女はいなかった、と。」、ここまで聞いたとき今度は”She’s gone”と切実につぶやいた奴がいた。実感こもってるな、誰やと思ったら、またオレだった。大丈夫かオレ。「ええ、シーズ・ゴーンなんです。それで火つけてやったと。ホントなんですよ、こういう詞なんですよ。だからむちゃくちゃな歌なんですが、この詞の中で” Isn't it good, Norwegian wood”ってフレーズが出てきます。この” Isn't it good,”ってのは『いいじゃん』って意味ですね。ご機嫌じゃないですか、いいじゃんって意味です。ノルウェーの木はいいじゃん、ご機嫌じゃんってこれ意味わからないでしょう(I上さんも「分からない」と首を振っていた、カワイイ、ま、それは置いといて)。これ、もともと” Norwegian wood”では無かったという話なんです。もともとはですね”Isn't it good”=ご機嫌じゃん、”knowing she would”だったらしいんですね。この”knowing she would”の意味は”knowing”、つまり『分かる』ということ、分かる、分かるよ、”she would”であることが分かるよという意味。『シー・ウッド』であることが分かるのがご機嫌じゃないか、って意味です。では『シー・ウッド』ってのは何か」。ここまで聴いた僕は「なるほど」と力強く頷いた。伊達に英文科に6年いたわけじゃ無い、シェークスピアやミルトンは分からないが、もちろんディケンズもオスカー・ワイルドもちんぷんかんぷんだが、この手のエーゴは分かる。分かるんだよ、オレはと思わず絶叫したかったが、そんなことをしたらオレの人格が否定される。誰だ、既に否定されているなどというやつは。



 「英語圏の人たちは”she would”って言うだけでニコっと笑います。で、どういうことかというと、『あの娘、どうなんだよ』って聞いたときに”Yes,she would!!”って言うと『あの娘もその気』って意味になる。だから『あの娘もその気である』ってことが分かる、それが”knowing she would”の意味らしいんです。ところが若干エッチな意味があるので『これはいかがなものか。ジョン、ラジオでかからないかもしれない』、一応向うも放送倫理規定みたいなものがあるので、『ここだけは歌詞を変えてよと、あまりにも直接的過ぎるので』とジョンが言われ、『あ、そう。それだったら♪ノーイング・シー・ウッド、ノーイング・シー・ウッド、ノーウェジアン・ウッド、あれ?これでいいやこれで行こうノーウェジアン・ウッドで』という感じだったらしいです。意味なんかない、単なる語呂合わせだったみたいです。それでノーウェジアン・ウッドになったと。で、もともとこの曲は” This Bird Has Flown”ていう曲だったんです。ジス・バード・ハズ・フローンという歌詞も出てきます。昔はちゃんと曲名の後にカッコして”This Bird Has Flown”と書いてあったんです、今はどうか知りませんけど。だけど歌詞がノーウェジアン・ウッドに変わったことによって意味不明です。でもこの意味不明なところがいいじゃないか、と。詞というものはちょっと意味不明なところが良かったりするじゃないですか。世界がふっと広がったり、何だろうこれはって。何だかよく分からないけどいいな、ノルウェーの木は。わけわからない歌詞だけど前から何でこんか歌詞なんだろうと思っていたところが、実はそういうことだったと知りました。語呂合わせで何とか”knowing she would”を分からせようとした、そういうことみたいです」。うーむ、深い。告井英文学教授の話は実に深い。こんな授業ばかりだったらオレは間違いなくオール優で卒業したはずだが、現実は言語学の岡田妙教授の単位が全く取れず、しかも英作文の、いやいやそんな話ではなかった。



 次の曲はジョージの大傑作である「サムシング」。しかし途中のポールのリード・ベースとも言うべき躍動感をアコギで表現するのは流石告井軍曹である。しかし、教授だったり軍曹だったり忙しいな。情感たっぷりに弾き終えてついに待望の時がやってきた。「ジョージ・ハリソンの名曲ですね。さて、それではこれから何かやってほしい曲があれば、リクエスト・タイムにしたいと思います。何でもやりますよ。出来ない曲も何とか頑張ってやりますから」と懐の広い人だ。会場内は何をリクエストしようかと少しざわついていたその時に一人が声をあげた。「あのー、家族とうちわもめして水曜の朝早く女の子が家出する歌をお願いします。えーと”She’s Leaving Home”」。何だ、回りくどい言い方するやつだな。ん、ちょっと待てよ、「うちわもめ」ってセンチの最初のアルバムの1曲目でシングルになった曲じゃないか。センスのいい奴だな、誰だ。なんだ、オレか(笑)。サージェント・ペパーに入っているこの曲は最初あまりいいと思わなかった。ハープで始まりストリングスもちょっと大げさな感じのバラード。しかし大学の時に輸入盤屋で『第二次世界大戦』というものすごいタイトルのビートルズ・ナンバーのカバーアルバムを購入し、そこでブライアン・フェリーが歌っているのを聴いて、その良さを再認識した思い出がある。アルバム・タイトルは出鱈目だが、当時大人気だったピーター・フランプトンとビージーズが正義の味方のペパー楽団で悪役がエアロ・スミスで「カム・トゥゲザー」なんか歌っていた。この歌は途中の部分で主旋律と取り残される年老いた両親の嘆きのメロディーが重なるのだが告井軍曹は当然完璧に再現してくれる。動画はあの変態的なボーカルが楽しめるブライアン・フェリーを貼っておく。



 「シーズ・リービング・ホーム、しかしなんというステキな曲なんでしょうね。素晴らしい、他、何かありますか?」という投げかけに対して4人組サラリーマンの1人が「アイブ・ガッタ・フィーリング」と叫ぶ。「おー、アイブ・ガッタ・フィーリング。出来るかな、あんまり覚えてないんだ」といいながらも、あのブルース・フィーリングあふれる曲を弾き始めた。この曲でのポールのボーカルが黒っぽくていいんだよね。告井軍曹、快適にぶっ飛ばしていくのだが、曲の後半で「ここから先を覚えてないんだ。すいませんね」なんてエクスキューズしたが、いえいえ、リクエストした彼も満足そうでした。次のリクエストは「ロング・アンド・ワインディング・ロード」。女性の声だったので多分I上さんのリクエストだったか。アルバム『レット・イット・ビー』つながりである。この曲を初めて聴いたときは「ロング・アンド・ワイディング・ロード」と聞き間違えて「長くて広い道」と思っていたが、なんのワインディングだから「長くてくねくね曲がっている道」だと知ったのは高校生の時にカメちゃんのオールナイト・ニッポンで教えてもらった。カメちゃんにはゼップのアルバム『聖なる館』も発売直後に全て聴かせてもらった。その時のタイトルの説明が「せいなる、ってこれはセックスのことではなく『ひじり』のほうのせいです」と教わった。流石にその後ニッポン放送の社長になるだけある。あ、ロンガンワインディングの話だった。歌われている道とはモナリザの背景に描かれている道と関係があるんじゃないかみたいなことを何かの本で読んだ記憶があるが自信がない。

 「えー、次は」の声に答えてリクエストに上がったのは「ゲット・バック」。おいおい『レット・イット・ビー』しばりが続くのかよ。もちろんこのロックンロールの名曲を告井軍曹はジョンのリズム・ギターの癖まで完全に再現してくれる。最後の裏声のところまでそっくりやってくれて「もう少し行きますか」の声に反応してリクエストはまたしても『レット・イット・ビー』からの曲で「アイ・ミー・マイン」。映画の中で突然、ジョンとヨーコがワルツを踊り出すシーンが印象的だった。そうそう、中3の時の担任の先生の家に大学合格の報告を兼ねて同級生と一緒にウィスキーを持って遊びに行ったことがあった。その時にたまたま『レット・イット・ビー』のアルバムを持っていて、そこの家のステレオで流した、この曲を聴いた先生は英語の教師だったが思わず「なんでアイ・マイ・ミー・マインじゃないんだ」とつぶやいていたのが可笑しかった。「アイ・ミー・マイン、忘れちゃったな」とこちらは告井軍曹のつぶやき。すかさず僕が最初のフレーズを歌ったら思いだしてもらったのか演奏を始め、あのアイ・ミミー・マインの前のところで「こんな感じだったよね」と終わった。「もういい?」と聞く告井軍曹に「アンド・ユア・バード・キャン・シング」と無茶なリクエストしたのはオレだ。「アンド・ユア・バード・キャン・シング?また凄いのが出てきたな」と苦笑交じりに弾き始めたのは、中期の名盤『リボルバー』の収録曲。そういえば『君の鳥は歌える』というタイトルの小説もあった。

 楽しいリクエスト・タイムも終わるかと思ったら突然Y尾君が「ビートルズで言ったらレイラ」と訳の分からないことを言いだした。「え、ビートルズで言ったらレイラ?それは何、あ、分かったあれですか」「あれです」「これですね」と言って弾き始めたのはご存じ「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」。そうか、あの曲はクラプトンが弾いてるし泣きのメロディーもジョージの作曲ではあるが「レイラ」に共通するものがある。Y尾君もなかなか粋なリクエストするやないか、あ、さてはI上さんに受けようと思ってこのリクエスト・タイムの間ずっと考えていたな、などと邪推してしまう(笑)。「ここでジョージ・ハリスンの曲をもう1曲やってみたいと思います」という紹介で始まったのはイントロが印象的な「タックス・マン」。これ聴くとパブロフの犬的にチープトリックのファースト・アルバムを思いだす。そのアルバムにも”Taxman,Mr. Thief”という曲が入っている、もっともデビューしたころのチープ・トリックは全然売れなくて彼らの名前がようやく知られるのはまるでビートルズそのものといえるヒット曲「甘い罠」をシングルで出したあと、もっと正確にいうと来日してからだ。あ、話が逸れた。



 「このタックスマンは税務署の人のことを歌った歌でですね。税務署のやつがオレにこう言う。5%はお前にやるぞ、あとの95%は俺がもってくと。税金を95%取られていたということを歌にしたんです。あながち嘘じゃないと思います。イギリスは税金高くて有名です。で、この曲が『リボルバー』というアルバムの1曲目に入ってます。大金持ちの歌ですね、この曲。税金を95%取られるなんてめちゃくちゃな金持ちです。この次に入っている「エリナー・リグビー」って歌は今度は最下層の人の歌を歌ってます。エリナー・リグビーって人の歌ですが、それはどういう人かというと教会のウェディングに現れてはですね、最後にライスシャワーって、米をおめでとうって撒くんですが、その米を拾って生活する人なんです。それが2曲目。もう大金持ちの歌から一気に最下層の人の歌まで、そういう人に光を当てるってのがさすがビートルズだと思います。じゃ、その「エリナー・リグビー」をやります」。

 「このエリナー・リグビーって曲がですね、4年前、イギリスにライブしに行ったときに必ずリクエストが来る曲です。この曲が好きだということよりもイギリス人は良くビートルズを知っていてですね、この曲にはビートルズが一切演奏に参加していないということを知っているんです。この曲は全部弦楽四重奏だけで成り立っている曲です。そのクラシカルな曲を、君はギター一本でさっきからいろいろやってるけど、これは出来ないだろうと。それでリクエストが来るわけです」。この時にY尾君が「この曲スタンリー・クラークがやっている」といったところ「いや、スタンリー・クラークは入って無い。全部、弦ですよ」と軍曹。Y尾君はしぶとく「いや、スタンリー・クラークが最近演奏していたんで」と食い下がる。軍曹も「スタンリー・クラークがやってるかもしれないけど、僕は知らないな。僕が好きなのはヴァニラ・ファッジがやってるやつ。原曲の影も形もない、あれもなかなかいいですね。」

 「それでこんなイギリス人の客もいました。何かリクエストをと言ったら, "Eleanor Rigby"って叫んでるオッサンがいました。聞きとりにくかったので、え?と聞きなおしたら、"Eleanor Rigby"とまた叫ぶ。こちらが"Eleanor Rigby?"と聞き返すと”Ok,Ok,Tomorrow”。明日でいいって、要するに出来ないでしょって言ってる。それで”No,Tomorrow,Tonite”と言って演奏しました。沢山拍手をくれましたね。まあ、しかしこれはギター一本でやる曲じゃないですね。大体ビートルズの曲をギター一本でやろうなんて人間はあんまりいない。まあ僕にとっては何でも挑戦です」



 ライブは最高潮に達していたが、もうそろそろ終わりの時間が近づいているのを感じていた。サージェント・ペパーの歌詞ではないが” I don't really want to stop the show”という気持ちでいっぱいだった。こういう時を至福の時間というんだろう。告井軍曹の演奏に解説に目の前にはきれいなおねいさん。ま、Y尾君が邪魔と言えば邪魔だが、今回は彼のおかげで楽しい時間が作れている。さて、このエントリーもあと少しなのだが、週末で月末の夜、こればかりにかかりきりになるわけにもいかないので今日はここまで。続きはアンコール編としてカミング・スーンであることを力強く約束して終わりたい。ああ、疲れた。あいむそーたいぁーど、やっちゅうねん。

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